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2025年6月19日8:00

 

和田 文明

プロフィール

キャッシュレス、電子マネー関連のジャーナリスト/ライター、主に欧米、アジアのセキュリティを含むキャッシュレス情報、カスタマーロイヤルティプログラム情報を取材

アセアン唯一のBRICS参加国で、急速に経済が発展する新興国であるインドネシアの金融包摂について、インドネシアの統一QRコード決済のQRIS(Quick Response Code Indonesian Standard)やオープンAPI、オルタナティブ信用スコアリングなどの動向を交えて紹介してみたい。

金融包摂(きんゆうほうせつ、Financial Inclusion)とは、今年の4月に刊行された『金融包摂とは何か―すべての人々のアクセスをどう保障するか』(明石書店)によると、著者ラジブ・ブラバカールは、“ひとびとや集団が金融システムにアクセスすること”を指し、“金融システムに個人の参加を即する政策のことである”としている。

ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の頭文字をとったBRICSは、今後大きな経済成長が期待されている新興国の代表国とされており、当初の5カ国に加え、現在、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦、エチオピア、それにインドネシアを加えた10カ国で構成されている。

インドネシアの国土面積は約192万平方キロメートルで、大小1万7,000もの島々からなり、日本のおよそ5倍、人口はアセアン第2位のベトナム(約9,800万人)のおよそ3倍の約2.79億人で、インド、中国、アメリカに次ぐ世界第4位である。インドネシアのGDP(名目)はアセアンでは2位のタイの2倍の1万1,790億ドル(2023年度、約177兆円)である。2023年における一人当たりのGDP(名目) は4,784ドル(2022年度、71.8万円)で、アセアンではシンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイに次ぐ5位である。なお、インドネシアの経済成長率は5.05%(2023年)と高い。通貨インドネシア・ルピアは、これまでのインフレを反映して10,000ルピアは約90円、10,000ルピーは約0.60ドルである。宗教はイスラム教が、国民のおよそ9割近くを占めている。

インドネシアの金融包摂 <Index
1)インドネシアの金融包摂
2)インドネシアのオープンAPI
3)インドネシアのQRコード決済
4)インドネシアの統一QRコード“QRIS
5)インドネシアのオルタナティブ(代替)信用スコアリング

<参考文献・資料・その他>
・Indonesia Payment System Blueprint 2025、Bank Indonesia
・Indonesia Payment System Blueprint 2025プレゼンテーション資料、Bank Indonesia
・Indonesia Payment System Blueprint 2030、Bank Indonesia
・ASEAN JAPAN CENTER WEBINAR; The Future of THE INDONESIA Cross Border Digital Payment Systems、Bank Indonesia
・Bank IndonesiaのHP
・GoTo(PT GoTo Gojek Tokopedia)グループのHP
・GoPayのHP
・OVO(PT Visionet Internasional)のHP
・DANA (PT Espay Debit Indonesia Koe) のHP
・LinkAja (PT Fintek Karya Nusantara)のHP
・ShopeePay (PT AirPay International Indonesia)のHP
・シンガポール金融管理局(MAS)のHP
・Pay NowのHP
・タイ銀行(Bank of Thailand)のHP
・DuitNow QRのHP
・VietQRのHP
・外務省(日本)のHP
・世界の貧困に挑む―マイクロファイナンスの可能性 岩波書店
・金融包摂とは何か―すべての人々のアクセスをどう保障するか 明石書店
・20億人の未来銀行、日経BP
・中堅・中小企業のASEAN進出2025年版 日本経済新聞出版
・CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃 新潮社
・図解ポケット 中央銀行デジタル通貨(CBDC)がよくわかる本、秀和システム
・中央銀行のデジタル通貨 秀和システム
・ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ、日経BP
・デジタル人民元 ワニブックス
・アリペイショック 新潮社
・中国デジタル金融イノベーション 日本経済新聞出版
・ルポデジタルチナ体験記 PHPビジネス新書
・テンセント プレジデント社
・アントファイナンシャル みすず書房
・アリババ世界最強のスマートビジネス 文芸春秋
・国際機関 日本アセアンセンター(AJC)https://www.asean.or.jp/event-report/20240202/
・JETRO(日本貿易振興機構)、インドネシア中銀、NFC活用の「QRIS Tap」導入開始(インドネシア)
・“ペイメントナビ” (TIプランニング)、“QRISで金融包摂が進むインドネシア今後の国際間連携のロードマップは?”

1)インドネシアの金融包摂

連載の第1回目は、インドネシアの金融包摂(きんゆうほうせつ、Financial Inclusion)の取り組みついて紹介してみたい。金融包摂とは、貧困や社会的排除などによって、これまで金融サービスへのアクセスが困難であった人々に対して、適切な金融サービスを利用できるようにする取り組みである。世界銀行(World Bank)は、金融包摂について、“多くの人々が、経済活動の機会を捉え、経済的な脆弱性を軽減するために必要とする、有用で低コストの金融商品とサービスへのアクセスと利用”と定義している。

インドネシアにおける金融包摂(きんゆうほうせつ、Financial Inclusion)は、同国における経済成長と貧困撲滅を目指すための重要な課題の1つで、貯蓄、融資、保険、決済などの国民が必要とする金融サービスを安価なコストで容易に利用できる状態を指すものである。インドネシアのような大きな国土と多くの人口を有し、宗教的、民族的に多様な人々を多く抱えている国では、公平な経済発展のために金融包摂が不可欠である。

インドネシア政府や中央銀行であるインドネシア銀行(Bank Indonesia)並びに金融業界の規制と監督を行う金融サービス庁(OJK、Otoritas Jasa Keuangan)は、インドネシアにおける金融包摂の実現を目指して次のような取り組みを行っている。

・国家金融包摂戦略(National Financial Inclusion Strategy)の立案と推進
国家金融包摂戦略は2016年に策定され、2024年までに75%の金融包摂率を目指している
・デジタル金融サービスの促進
電子財布やQRコードなどのモバイル決済の普及により、地方や農村部における金融サービスへのアクセスを拡大させる
・中小企業(MSMEs)向けの融資プログラムやマイクロファイナンスを通じて、金融リテラシー向上を図る

2014年に設立されたインドネシアの金融サービス庁であるOJK(Otoritas Jasa Keuangan)は、金融業界の規制と監督を行う政府機関で、銀行、証券、保険、その他の金融機関を含む金融セクター全体を監督する役割を担っている。OJK(金融サービス庁)は、インドネシアの金融システムを安定させ、経済成長を支えると共に、金融サービスの透明性を確保し、金融サービス利用者の権利を守る消費者保護、国民全体が金融サービスにアクセスできるようにする金融包摂の促進を図っている。また、OJK(金融サービス庁)は金融テクノロジーの革新やデジタル資産、暗号資産の規制にも力を入れており、インドネシアの経済発展を支える重要な機関となっている。

インドネシアにおける金融包摂の促進を図る上での課題として、大小1万7,000もの島々からなるインドネシアでは離島地域では金融サービスが届きにくいという地理的な障壁のほか、インターネット環境や銀行の物理的な拠点の不足などの金融インフラ不足、多くの人々が金融商品やその利点を理解していないというインドネシアにおける金融リテラシーの低さが挙げられる。

こうした中、インドネシアにおける金融包摂の促進を主導する主要な機関として位置付けられているインドネシア中央銀行のインドネシア銀行(Bank Indonesia)は、SNKI(National Strategy for Financial Inclusion、国家金融包摂戦略)という金融包摂のロードマップを通じて、次のような施策により、全てのインドネシア国民が銀行サービスや金融サービスにアクセスできることを目指している。

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