成長続く通販・ECの市場規模は初の14兆円台に 生成AIや完全キャッシュレス、 置き配などに注目集まる

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2026年3月27日8:00

通販・EC市場は物価高による消費低迷で苦戦する企業も目立ったものの、全体では伸長し初の14兆円超えとなった。別格のアマゾンをはじめ、例年上位に位置するBtoB企業や家電量販店、実店舗を活用する有店舗企業が市場をけん引した。生成AIの「ChatGPT」や完全キャッシュレス、置き配などが注目され、不当な表示類型「ダークパターン」による消費者被害やサイバー攻撃といった難題や脅威も顕在化している。

通販研究所 渡辺友絵

伸び率は7.3%、BtoBや家電、
有店舗企業が伸張

JADMA(日本通信販売協会)が2025年8月に発表した2024年度(2024年4月~2025年3月)の通販市場規模は、前年度比7.3%増の14兆5,500億円と初の14兆円超えとなった。26年連続の成長で、金額は23年から9,900億円増加し、伸び率は前年を0.6ポイント上回った。コロナ禍による特需が収束したことで、消費者行動はリアル店舗への回帰が目立つ。そのため、通販・EC全体の市場規模は拡大する反面、減収となる企業も増えている。

2024年度通販・EC市場売上高調査(出典:日本通信販売協会)

毎年12月に業界紙2紙が発表する直近の市場規模は、いずれもプラス成長となった。日本流通産業新聞の「通販・通教・EC 2025年度売上高ランキング」調査では、売上高が前年比5.6%増の13兆4,262億円(売上高は上位569社合計・増減率は比較可能な198社での算出数値)と伸張。通販新聞の「第 85回通販・通教ランキング」調査では、売上高が前年比9.8%増の13兆2,191億円(上位300社合計)となった。前年12月調査と比較した伸び率は前者が3.7ポイント縮小し、後者が2.8ポイント拡大している。

2024年12月から「ふるさと納税」に参入したアマゾンの売上高は4兆円を超え、市場全体をけん引する動きが続く。アスクルや MonotaRO、大塚商会など毎年上位に入る BtoB 企業は、法人へのアプローチ強化や、仕入原価高騰による商品価格の値上げなどが貢献。ヨドバシカメラやヤマダデンキ、ビックカメラといった家電量販店も送料無料や当日・翌日配送、店舗とネットを連動させたOMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合)展開などの施策が奏功したとみられる。ユニクロやニトリも有店舗企業という優位性を生かし、2桁に達する伸び率で成長している。その一方でベルーナをはじめ、千趣会、dinos、スクロール、ニッセン、フェリシモなどの総合カタログ系通販企業は軒並み減収となり、主力マーケットがECに移っていることが分かる。

通販・通教・EC 2025年度売上高ランキング(出典:日本流通産業新聞2026年1月1日号)※は同紙推定値

急速に進む「ChatGPT」など生成AIの活用

EC業界では、「ChatGPT」といった生成AIの導入や活用が急速に進んだ。データ分析や受注予測、作業の自動化・最適化などの従来機能に加え、企画や文章・画像・音声作成など高度で創造的な生成業務を短時間でこなせるようになったため、AIを活用した働き方改革が始まった。

LINEヤフーは2025年7月、全従業員を対象に“生成AI活用の義務化”を前提とした働き方に着手すると発表。生成AIの100%活用を実現させ、今後3年間で業務生産性を2倍に高めていく。2025年度の経営方針として、ユーザー向けに複数のタスクをこなすAIエージェントの開発を発表しており、「Yahoo!ショッピング」などの自社サービスで各ユーザーのさまざまな要求に応える「パーソナルエージェント」の実現を目指す。

楽天グループも7月から、ショッピング、金融、旅行、エンターテインメントなど「楽天エコシステム」内の各種サービスとシームレスに連携するエージェント型AIツール「Rakuten AI」の本格提供を始めた。楽天モバイル契約者の専用アプリ「Rakuten Link」から導入を開始し、2026年1月には「楽天市場」のスマートフォンアプリに搭載。AIコンシェルジュを通じてユーザーごとにパーソナルな顧客体験を提供できるようになった。社内では「Rakuten AI」を活用できる環境を整備し、さまざまな部門で業務効率化を推進。楽天グループ全体で「Rakuten AI」を業務に利用する社員は3万人を超えている。

ZOZOはグループに所属する全エンジニアを対象に、有料AI開発ツールを導入すると2025年7月に発表。業務自動化の取り組みを加速させ、スキル向上による価値創出を目指す。グループの全社員が「ChatGPT」などの生成AIを利用できる環境を整備し、独自研修を行っている。

AIがパーソナルな顧客体験を案内する(出典:楽天)

決済に直結する「インタラクティブ動画広告」も広がる

テクノロジーの進化は、ECの動画広告などにも反映されるようになった。視聴者が動画コンテンツに双方向参加できる「インタラクティブ動画広告」が広がり、アマゾンやTikTokがこの手法を導入。画面上のボタン操作などに基づき情報収集やコミュニケーション、ECでは商品の購入から決済までをシームレスで行える仕組みで、ECへの新たな導線として注目を集めている。

アマゾンジャパンは2025年9月、「アマゾンプライム」会員向けの映像ストリーミングサービス「プライムビデオ」にインタラクティブ動画広告を導入すると発表した。視聴者にアクションを促す双方向の取り組みで、2026年上半期の導入を予定する。動画の視聴中に表示される「インタラクティブ動画広告」と、動画の一時停止中に表示される「インタラクティブポーズ広告」の2種類で、いずれも動画の画面表示をクリックするとそのままアマゾンカートに遷移して決済することが可能だ。

TikTok は2025年6月、アプリ内でEC展開する「TikTok Shop」をオープンし話題となった。「TikTok Shop」には、ショート動画やライブ配信を通じて紹介される商品を外部サイトに遷移せず購入・決済できる仕組みを取り入れ、ユーザーは視聴中でもそのまま決済画面まで進める。11月には日本におけるTikTokの月間アクティブユーザー数が4,200万を突破しており、「TikTok Shop」ではコスメやアパレル、家電など、動画との親和性が高いカテゴリで成果が上がっているという。

アプリ内でEC展開しそのまま購入・決済できる(出典:TikTok)

M&Aによるスーパー再編や有力中堅EC企業の相次ぐ破綻も

スーパーマーケットやドラッグストア業界では、M&Aによる再編が進んだ。

トライアルホールディングスは2025年7月、スーパー「西友」の全株式を取得し完全子会社化を発表した。九州が拠点のトライアルは関東・中部・関西エリアにある首都圏西友店舗網を獲得し、全国的な事業基盤確立を目指す。強みとするデジタル技術を活用し、セルフレジ機能付き「スキップカート」や顔認証決済機能付きのセルフレジなどを導入、店舗DXを強化し西友の事業立て直しを図る。「トライアル西友」として11月に都内で新装開店しており、2026年春には神奈川県にオープンする。

さらに西友と「Uber Eats」が協業している食品・日用品のデリバリーサービスを2026年1月から本格化し、4月までに西友の206店舗へと拡大する。親会社のトライアルや西友のプライベートブランドなど、最大約1万9,000品目を扱う予定だ。全国13都府県に展開する「西友ネットスーパー」の配達エリア外への配送も可能となる。

イオンは2026年1月、ドラッグストア大手のツルハホールディングスへの株式公開買い付け(TOB)の成立と連結子会社化を発表した。ツルハは2025年12月にイオン子会社のウエルシアホールディングスと経営統合し、国内最大のドラッグストアチェーンとなっていた。西友やイオンはネットスーパーを手がけており、M&A後の展開が注目される。

セルフレジ機能付きレジカートで自動精算(出典:トライアルホールディングス)

靴とファッションのECを手がけ2024年にマガシークを子会社化したジェイドグループは、2025年3月にベネッセコーポレーションの生活情報メディア「サンキュ!」事業を買収した。20~40代の女性ユーザーが中心の「サンキュ!」は、紙媒体が月刊9万部、デジタル媒体のPV数は約5,604万件。同社は自社事業との親和性を活用し、これらメディアを通じて広告、配信などによる収益化を図っていく。

さらにジェイドグループは10月、靴などを扱うECサイト「ゼットクラフト」を手がける民事再生手続き中のロイヤルと、再生支援へのスポンサー契約を締結した。ロイヤルの仕入れルートや販売網の獲得により、自社ECの成長につなげられると判断したという。ロイヤルはショッピングモール内店舗や路面店を展開するほか、ECサイトも運営。若者を中心に知名度を広げ売上高は100億円弱に達していたが、円安による仕入れコストの増加や、積極的な設備投資による借入金負担増などが経営を圧迫した。

2025年はロイヤルだけでなく、順調に事業を続けてきた有力な中堅EC企業の破綻が目立つ年となった。20代~40代前半の女性向けにファッションや雑貨などを扱うECサイト「イーザッカマニアストアーズ」を運営するズーティーは4月、破産手続きを開始。2002年の設立で「楽天市場」では古参の有力ショップとして知られ、「楽天ショップ・オブ・ザイヤー」などでさまざまな受賞歴を誇っていた。ただ、その後10月には、老舗アパレルメーカーのフジスター傘下で事業を再スタートすると公表している。

海外高級ブランド香水のECを手がけるミルズインターナショナルも、2月に事業を停止して破産手続きを開始。価格競争やサイトへの出店手数料などで利益が減少し、資金繰りが悪化した。1997年に設立し、複数のECモールアワードで多数の受賞歴があった。長引く円安や物価高による消費控えにより、今後も有力中堅ショップの破綻が増える可能性もある。

「BNPL」「ダークパターン」などへの法規制が本格化

通販・ECの関連法施行や、新たな法規制についてのさまざまな検討も進められた。

ドライバー不足などが懸念される「2024年問題」の解決に向け、2025年4月から「改正物流法」が段階的に施行された。業界を挙げて配送効率化を実践していくことが目的で、配送業者はもちろん、EC企業など配送元である発荷主や納品先である着荷主にも荷役時間の短縮や積載率向上などが求められるようになる。年間で一定規模の荷物を取り扱う荷主・物流事業者を「特定事業者」として指定し、2026年度からはさまざまな取り組みが義務化される。国が策定する数値目標に不十分な場合には、罰則規定も盛り込まれた。

EC決済に関する問題点や課題への議論も進んだ。内閣府の消費者委員会が2025年3月に設置した「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」が8月に出した中間報告では、割賦販売法の規制対象外となる「後払い決済(BNPL)」や「キャリア決済」、クレジットカードの「マンスリークリア」などについて、消費者トラブルの増加が懸念されると指摘。規制法が存在しない現状を看過せず、後払い決済業者にもクレジットカード番号等取扱契約締結事業者として登録制を導入し、加盟店調査義務や不正利用防止対策を講じるように割賦販売法を改正すべきとした。

その後も続いている検討会では、「後払い決済」や「キャリア決済」が関連する消費生活相談事例を紹介。今後議論すべき論点として、多様な決済自体を統一的に規制するルール策定の必要性や「後払い決済」への国による規制、「キャリア決済」の通信料金と商品代金の一括支払い分離などを提案。さらに後払い決済について、「日本後払い決済サービス協会(BNPL協会)」の自主ルール確認や、BNPLを手がける企業へのヒアリングなどを行っている。

宅配便などの再配達率削減を目指す国土交通省が2025年11月に公表した「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」のとりまとめでは、「置き配」強化への提言がなされた。「標準宅配便運送約款」を改正して「置き配」を追記することをはじめ、盗難などトラブル防止へのガイドライン策定や宅配ボックスの設置推進、オートロック式集合住宅におけるエントランス解錠などが盛り込まれた。中でも注目されたのが、配送員が荷物の伝票番号などを入力することで集合住宅のオートロックを解錠できるシステムだ。提言によれば、伝票番号の付け方やデータ形式などを配送業者間で共通化する解錠システム開発費用を国が補助し、早ければ2026年度に共通システムの導入を予定する。

オートロック解錠による「置き配」について提言(出典:国土交通省)

定期購入などユーザーの意図に反した不利益な契約を結ばせるECサイト上の表示「ダークパターン」についても、消費者庁を中心に総務省や公正取引委員会などの官庁とIT系民間団体が一体となり規制強化に着手した。国内被害額が1兆円を超えたと推定されるが、その類型は多岐にわたるため日本には包括的に規制する法律が存在しない。そのため、官民共創でのシンポジウム開催や消費者調査、ガイドライン作成などを通じて撲滅に本腰を入れ始めた。民間のダークパターン対策協会は2025年10月、ダークパターンを用いないECサイトを認定する「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」を開始。合格サイトには認定マークを付与し、安心・安全なサイトであると消費者が認識できるようにする。

さらに消費者庁は2025年11月、消費者契約法と特定商取引法の各検討会を立ち上げると発表した。11月に「消費者契約法検討会」を、2026年1月に「デジタル取引・特定商取引法等検討会」をスタート。前者はダークパターンといった消費者の脆弱性への対応が必要な契約類型や、解約料の実態を踏まえた取り組み、広告や契約など新たな課題が目立つデジタル取引について議論。抜本的な法改正も念頭に置き検討を進める。後者については具体的な論点は今後検討に入るが、特定商取引法を軸にデジタル取引の悪質商法への規制などを検討する。必要に応じて合同検討会の開催も視野に入れ、2026年夏を目途に両検討会とも中間取りまとめを行う。

決済場面で進む完全キャッシュレス

前年に続き、EC・リアルとも決済の完全キャッシュレス化が進んだ。「完全キャッシュレス」をうたった「2025大阪・関西万博」は、当初不安視されたにもかかわらず利用者満足度は90%を超え、店舗決済業務の大幅な効率化やセキュリティ向上につながった。政府はキャッシュレス決済比率を2025年までに40%、将来的には80%を目指しているが、経済産業省の統計によると2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%と目標を達成。今後も万博効果がさらなる追い風になりそうだ。

2025年4月には、JR東日本がJR秋葉原駅改札内にオープンしたエキナカ商業施設「エキュート秋葉原」と駅型イマーシブメディア「AKIBA WARP」を完全キャッシュレス化。一部店舗ではモバイル経由の注文・受け取りサービス「JRE MALLオーダー」にも着手し、レジ待ち時間の短縮につなげた。

深刻な運転士不足に悩むバス業界も、運転士負担軽減などに向けて運賃の「完全キャッシュレス化」を推進する。京王電鉄バスと京王バスは2025年10月、国土交通省が進める完全キャッシュレスバスの実現を目指し本格的な取り組みに着手すると発表。国土交通省が取り組む「完全キャッシュレスバスの実証運行」に参画して実証運行を実施しており、全営業所での実証運行を経たうえで現金取り扱いを終了させる予定だ。国土交通省は2025年6月から高速バスを含む全路線バスを対象に実証運行の公募を始めており、計28事業者44路線を選定。さまざまなキャッシュレス決済手段を導入して利用促進を図っている。

サイバー攻撃など新たな重大課題も

物価高とそれにまつわる個人消費低迷に振り回された2025年のEC業界だが、新たな脅威となっているのが企業を狙ったサイバー攻撃だ。

9月以降にアサヒグループホールディングスやアスクルなどの大手企業が相次いでランサムウエアに感染し、大規模なシステム障害によって出荷停止などを余儀なくされた。サイバー攻撃は今後も増加するとみられており、各社ともセキュリティ対策が最優先課題となっている。

終わりが見えない「2024年問題」の影響で物流関係の話題が尽きない年でもあったが、物流に絡む大きな事案となったのが不祥事による日本郵便の運送事業許可取り消しだ。郵便局配達員の不適切点呼問題により安全の軽視が常態化していたとされ、国土交通省は2025年6月に日本郵便に対し、トラックなど約2,500台の貨物運送事業許可を取り消す行政処分を科した。5年間はトラックによる運送事業許可の再取得ができないため、軽貨物車両の利用や外部企業への業務委託などへの切り替えを進めるものの、EC 業界ではドライバー不足に拍車がかかることになった。

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