2026年8月3日8:00(JST)
【日本】ラクスルグループは、2026年7月30日、MBO(マネジメント・バイアウト)による株式の非上場化後初めて、同社が向かうべき方向性を示したグループの中長期事業戦略を発表した。日本の中小企業が直面する構造的課題に対し、AI・BPO・金融サービスを有機的に結合した「日本の中小企業を支える経営インフラ」の構築を目指す。また、100%出資子会社のラクスルバンクは、三井住友トラストクラブと提携し、中小企業向けの法人カードを発行するなど金融サービスを強化する。

非上場化によって、制約から解放され、長期の構想を実現
ラクスルグループは2025年12月に公表したMBOにともなう一連の手続きを完了し、株式を非公開化した。その背景について、ラクスル株式会社代表取締役社長グループCEOの永見世央氏は「中小企業の経営課題を解決するプラットフォームの構築は、短期の業績コミットメントと並走しながら実現できるものではありません。長期の構想には長期の意思決定が必要です」と述べ、実績・基盤はそのままに、上場企業特有の制約から解放され、より大きなスケールで次のチャレンジをする方針を明らかにした。
中小企業が成長できない理由としては、個人の努力ではなく構造問題であるとの考えを示した。2026年2月に実施したラクスルの中小企業調査によると、日本企業の約99.7%を占める中小企業は今、営業を仕組み化できていないため「売上をつくれない(89.6%)」、コスト上昇分を価格に転嫁できないため「コストを下げられない(47.6%)」、資金繰りに不安を感じて「資金を回せない(58.3%)」という課題を抱えている。
しかも、AIの普及によって、中小企業と大企業の格差がさらに広がっている。AI導入率は、大企業が64.7%であるのに対し、中小企業は23.7%で、この問題が、中小企業の構造問題の解決をさらに難しくしている。永見氏は「テクノロジーがあれば、解決できるはずなのに、中小企業の手元にはまだ届いていません。だからラクスルが動きます」と述べた。
ラクスルは印刷業界の仕組みをテクノロジーと人の力で変えてきたという自負がある。2026年の売上高は約750億円にのぼり、上場した2018年の売上高に比べると約7倍に成長している。調達領域で築いてきた事業基盤は、印刷に留まらず、カテゴリを拡大しながら進化している。印刷・集客支援で積み上げた360万IDの顧客基盤を起点に、売上拡大やコストカット、ファイナンスなどの経営の仕組みをテクノロジーで届け、経営資源が足りない部分はBPOで支援する。
最長約3か月後の支払いを実現 バックオフィス業務のデジタル化を強力に後押し
続いて、ラクスルバンク株式会社代表取締役CEO兼ラクスル株式会社上級執行役員グループCFOの杉山賢氏が、中小企業向け金融プラットフォームとして、融資・法人カード・請求書発行の3サービスを順次提供開始する方針を明らかにした。資金調達・決済・請求管理を一体で支援し、中小企業の資金繰り改善と、バックオフィス業務の効率化を後押しするのが狙いだ。
杉山氏は「ラクスルバンクは単なる銀行口座サービスではありません。販促・集客に投資する瞬間に、資金繰りの不安で踏み出せない中小企業が半数あります。ラクスルバンクは中小企業がお金の問題で攻めの投資に踏み出せない状態をなくすために作りました。購買データで攻めたいタイミングを把握しているからこそ、最適なタイミングで金融を提供することができます」と話す。
検討を開始する融資サービスは、売掛金・買掛金双方の資金需要に対応した柔軟な融資商品の企画を検討している。対面手続きや多くの書類提出が必要だった従来の法人融資に対し、オンラインで完結する新たな資金調達の選択肢を提供することで、中小企業の円滑な資金調達と機動的な事業投資を支援することを目指す。融資サービスの提供にあたっては、銀行代理業の所属銀行であるGMOあおぞらネット銀行の知見を活用することも視野に入れ、検討を進める。2027年春のスタートを目指す。
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