2012年6月12日8:30
「PayPal Here」をキーにソフトバンクグループ全体でO2Oに取り組む
オンラインから店舗への送客、決済までワンストップで提供へ
ソフトバンクとPayPalは、日本でデジタル決済を推進する合弁会社「PayPal Japan」(仮称)を設立する計画を発表した。また、PayPalが米国、カナダ、香港、オーストラリアに続いて「PayPal Here」の5番目の導入地域となることもリリースした。PayPal Japan のCEOに就任するソフトバンクモバイル取締役常務執行役員 喜多埜 裕明氏に、新会社のビジョンについて話を聞いた。
020ビジネス強化の延長線上にPayPal Hereがある
リーダー1,200円、決済手数料5%のシンプルな価格設定で提供
――まずは、「Paypal Japan」設立の経緯についてお聞かせください。
喜多埜:ソフトバンクグループ全体としての決済サービスおよびモバイルコンテンツを強化するのが目的です。私自身、ヤフーを2012年3月末で退任して、eBay、PayPalと代表取締役の孫が行った交渉にも同席していました。
もともと国内最大級のジオサービスであるヤフーの「Yahoo!ロコ」については、私を中心にスタートした事業でもあり、「O2O(Online to Offline)」のサービスは、ヤフーだけの枠にとどまらずソフトバンクグループ全体として強化していく方針を打ち出しています。その延長線上としてPayPal Hereのサービスがあると考えています。
まずは、数多くの加盟店にサービスを利用していただくこと、使っていただく消費者に認知していただくことが必要となりますが、PayPal Japanだけでなく、ソフトバンクモバイルやヤフーなど、ソフトバンクグループの力を合わせ、取り組んでいきたいです。
――商用前のテスト導入と加盟店に提供する価格についてお聞かせください。
喜多埜:6月の中旬から、ソフトバンクショップなどでの実験を予定しています。携帯電話のアクセサリー類の販売などで利用できるようになれば利便性が高まると思います。
また、加盟店が負担するコストに関しては、海外のようにトランザクションフィーを徴収する形も考えましたが、わかりやすさを考え、カードリーダーは1,200円、決済手数料5%というシンプルな形に落ち着きました。小規模な店舗への導入が中心になると思いますので、既存の事業者に比べて競争力のある価格に設定しました。また、希望される加盟店へのモバイルプリンタの販売もあわせて行います。
アクワイアラは国内の会社との契約を想定
早期のJCBカードの利用を目指す
――国内の場合、モバイル端末のアクワイアリングの基準が若干厳しくなることが考えられます。
喜多埜:基本的には、日本のアクワイアラと契約する形を想定しています。また、アクワイアリングに関してはグループのヤフーでも行うことも可能です。
私自身、ヤフー時代にジェーシービー様やクレディセゾン様との提携に関わった経験があり、日本は海外に比べ、アクワイアリングの基準が若干厳しいことも承知しています。ただ、国内の場合はカードの利用率が海外に比べ低いのも事実であり、カード会社と力を合わせ、便利なサービスを提供することで、カード決済のすそ野を広げていきたいと考えています。
また、不正のリスクに関しては、ヤフー時代にもオークションの対策など、さまざまな取り組みを行ってきました。また、PayPalも、グローバルに展開する強みを生かし、セキュリティや審査のノウハウを有していますので、それも活用しながら進めていきたいです。
――加盟店開拓の方法についてお聞かせください。
喜多埜:ソフトバンクショップでPayPal Hereのリーダーを購入される方もいると思いますが、ソフトバンクモバイルではiPhoneやiPadの法人向けの販売、Wi-Fiの設置を行っていますので、それとクロスした展開も積極的に行っていきたいです。例えば、Wi-Fiを設置いただいている店舗は約25万件あり、その資産を有効活用していく方針です。
――国内でもスマートフォン決済に関するガイドラインの制定が予想されます。また、現状、JCBブランドのカードは利用できませんが、ジェーシービーと話し合いは進めていますか?
喜多埜:国内のスマートフォン決済に関するガイドラインとも整合性を図っていきたいと考えています。また、JCBブランドの利用に向け、ジェーシービー様とも話し合いを進めています。私は、ヤフー時代に「Yahoo! Japanカード」の発行に加え、両社で協力してO2Oの展開を進める提携の話を進めてきました。ジェーシービー様からも「前向きに検討する」というお返事をいただいています。
ジェーシービー様をはじめとするカード会社も中小規模の加盟店の開拓、小額決済の浸透については課題を抱えています。その課題を一緒になって解決できればと考えています。
早期に10万を超える加盟店との契約を目指す
銀聯など決済手段の拡充も検討
――喜多埜様はソフトバンク・ペイメント・サービスの副社長でもありますが、今後は同社がPayPal Hereの営業を行うことはあるのでしょうか?
喜多埜:ソフトバンク・ペイメント・サービスは現状、オンラインの決済代行の位置づけですが、PayPal Hereについても営業協力を行う予定です。また、リアルで開拓した加盟店に対し、オンラインの決済サービスを勧めることも可能です。
第二フェーズとしては、アクワイアリングやプロセッシングで絡むこともあるかと思います。また、ヤフーとソフトバンク・ペイメント・サービスは、Visaの発行権も取得しましたが、最終的には独自のスマートフォンアプリを発行することも考えていきたいです。
――具体的な加盟店の獲得目標はどこに据えているのでしょうか?
喜多埜:まずは十万を超える単位に早く持っていくことです。現状、国内では300万以上の加盟店がクレジット決済を導入していませんが、デリバリーや飲食関係、エステ・ネイルサロン、スポーツ観戦の売子など、幅広い業種・業態に利用していただきたいです。また、地方でクレジットカードが利用できる店舗はまだまだ少ないため、すそ野を広げていきたいと考えています。今後は、クレジットカードやPayPalだけでなく、銀聯決済も検討していきたいですね。ソフトバンクグループ全体として、お客様の動向を見ながら、決済手段は拡充していきたいと考えています。
また、ヤフーとジェーシービー様との提携でも発表したように、将来的には、スマートフォンに挿入するカードリーダーがなくなり、スマートフォンがリーダライタとしてふるまう可能性があります。
「Yahoo!ロコ」との連携などO2O展開も視野に
「B」と「C」をつなぐ役割を果たす
――ソフトバンクグループとしてのシナジーも期待できそうですね。
喜多埜:すでにPayPal Hereでは、「Yahoo!ロコ」との連携も検討しています。例えば、Yahoo!ロコでPayPal Hereの加盟店を紹介し、店舗に送客するなど、いろいろな展開が考えられます。また、ポイントやクーポンなどのウォレットも検討する方針です。
すでにソフトバンクモバイルでは、3,000万人近いお客様を抱えており、純増数は№1が続いています。今後は、こうしたお客様へのPR展開を考えています。
――最後に今後の意気込みについてお聞かせ下さい。
喜多埜:PayPal Hereの発表後、多くの方から反響をいただいていますが、ソフトバンクグループとしては、ただ単純にクレジットカード決済が利用できるだけではなく、加盟店の販促活動につなげていく方針です。PayPal HereをキーにしたO2Oの展開により、オンラインから店舗への送客まで可視化でき、お客様に対して商品の紹介やクーポンの配信までワンストップで展開できます。また、グループのノウハウを活用し、「B(business)」と「C(consumer)」を上手くつなげていきたいと考えています。