Visaのセキュリティの取り組み~決済とセキュリティの方向性について~(上)

2014年5月8日8:00

Visaのセキュリティの取り組み
~決済とセキュリティの方向性について~

ビザ・ワールドワイド

東京オリンピック誘致決定によって、国内のカード決済もさらなる取り扱いの増加が期待されます。決済ネットワークを提供する事業者であるビザ・ワールドワイド(Visa)では、「Visa payWave」といった決済ソリューションの普及、さらに、EMV化をはじめとしたセキュリティの強化に取り組んでいます。

ロンドンオリンピック会場で非接触決済「Visa payWave」導入
日本国内でも2013年から展開スタート、世界で普及進む

Visaのカード決済プロダクトは基本的に、後払いのクレジット、即時払いのデビット、前払いのプリペイドの3つです。かつ、弊社も2013年より「Visa payWave」という、非接触ソリューションを日本で展開し始めました。従来のカード型やモバイル型、キーホルダー型のほか、今後はシール型のものなど、多彩なアプリケーションに応じて展開してまいります。

オリンピックにおける事例(ソチオリンピック)
オリンピックにおける事例(ソチオリンピック)

弊社はオリンピック公式スポンサーを1986年より務めておりまして、2020年の東京オリンピックでも決済の公式スポンサーとなります。具体的に何をやるかはこれから6年かけて準備を進めていくことになります。ここ数回のオリンピックでは、会場内で使える決済カードは基本的にVisaのみという権利を有しています。2012年のロンドンオリンピックからはVisa payWaveによる非接触決済も加わり、会場内の3,000店舗に端末が導入されました。イギリスではVisa payWave対応カードの普及が進んでいるため、非接触決済での利用も多かったと聞いています。

ロンドンオリンピック閉幕から2013年7月までの1年間の、イギリスでのVisa payWave普及状況を調べたところ、カード発行枚数は2,470万枚から 2,980万枚に21%上昇し、加盟店の端末数は12.2万台から 28.8万台へと倍以上に増加しています。ヨーロッパはセキュリティに対する概念が非常に強く、もともとEMVの接触チップの普及がかなり進んでいるのにあわせ、利便性の追求ということでVisa payWaveも速いスピードで浸透してきています。

ご参考までに、2013年7月現在のヨーロッパ地域でのVisa payWave対応カード普及状況は、発行枚数が6,900万枚、端末数は100万台以上です。過去12カ月(2012年8月~2013年7月)の総取引件数は2億1,100万件、月間の取扱金額も2億8,500万ユーロで、過去1年で約6倍の増加です。ヨーロッパでは磁気取引が徐々に減少し、不正取引をどう低減するかという取り組みのなかで接触と非接触のEMVが採用され普及していると考えられます。

2014年のソチオリンピックでも利便性とセキュリティの観点からVisa payWaveが採用され、交通系にも用いられました。FeliCaを使ったソリューションの海外版といったものですが、FeliCaはカード自体にバリューをストアするのに対し、NFCはサーバ側でバリューを管理します。利用客がゲートを通る時点でオーソリをとるのではなく、乗車中などのタイミングで照会し、ゲートを出るときに判断するというような形のソリューションです。

偽造被害の一位は米国、二位は日本
非対面環境での犯罪が徐々に増加

次に、昨今のカード決済における不正利用の傾向ですが、世界的にEC環境における不正が少しずつ増えてきています。偽造被害は毎年わずかながら増えており、被害が飛び抜けて多い国はアメリカで、実は2番目が日本です。ヨーロッパではEMVの普及が進み、偽造被害が減少傾向にある反面、アメリカのEMV化は非常に時間がかかっています。日本も加盟店視点で考えるとEMV化は望むような形で進んでいないのが現状です。

日本のイシュア発行カードによる不正の割合は世界平均に較べて非常に低く、各イシュアによる不正予防対策がきわめて高い水準にあるといえます。ところが最近1年間の動向をみますと、全世界でのトレンドと同様、非対面環境での犯罪が徐々に増えつつあります。不正に遭いやすいタイプの商品やコンテンツを扱う加盟店で3-Dセキュア等の対策がとられつつある一方、通常の物販型加盟店での普及状況が未だ芳しくなく、Visaのみならず業界をあげて取り組むべき課題と考えています。日本国内のアクワイアリング側における不正トレンドも昨今急増しており、EC環境における不正も徐々に増えています。ただやはり、日本のイシュアはモニタリング、不正検知の部分で優秀で、全世界ベースの数値に較べると不正発生率は低いといえます。

次に、アクワイアリング側のクロスボーダー取引にフォーカスした話になりますが、ATMの偽造被害が激増する時期がランダムにあらわれるのは、犯罪集団が一気に狙ってアタックしているためです。ATM被害のほとんどが偽造されやすい磁気テープによるものです。アメリカに次いで被害が多い日本でも、2020年の東京オリンピックなど今後を踏まえ、なるべく早い時期にEMV化をしていくことが喫緊の課題と思われます。

※本記事は2014年3月25日に開催された「ペイメントカード・セキュリティフォーラム2014」のビザ・ワールドワイド・ジャパン 新技術推進部 シニアディレクター 鈴木章五氏の講演をベースに加筆を加え、紹介しています。

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