2014年6月24日8:00
韓国の電子マネー「モバイルcashbee」で日本人旅行者に利便性提供
日本のスマホでNFCによる決済が可能に
日本の「おサイフケータイ」で利用できる電子マネーのように、韓国に旅行する日本人が便利に利用できる電子マネーがあることをご存じだろうか? 韓国・eB Card Corporation(イービーカード)の「cashbee」は、韓国のコンビニエンスストアやスーパーなどで便利に利用できる電子マネーとなっており、日本のNTTドコモ、KDDIのスマートフォン利用者は、アプリを利用することで便利に利用可能となっている。今回は、「cashbee」を発行するeB Card社にその魅力について説明してもらった。
特別な手続きなく日本のスマホで決済やチャージが可能
NTTドコモは2014年夏、KDDIは2014年秋から鉄道やバスの利用を開始
「cashbee」は、ロッテグループのデパート、コンビニエンスストア、ユニクロ、タクシー、地下鉄、バスなど、約7万店舗で利用できる電子マネー。携帯電話やスマートフォンで利用可能な「モバイルcashbee」は、韓国の大手キャリアのKTで2011年にサービスを開始し、2012年にSK Planet、2013年にLG U+に対応。現在は、韓国3キャリアすべてで利用可能だ。
日本でのサービスについては、2013年にNTTドコモとサービスの協議を開始し、2013年12月18日からサービスをスタート。KDDIでも、2014年3月28日から利用可能となった。
日本向けサービスの特長としては、「特別な手続きなく、日本人の方が普段利用しているスマートフォンで、韓国に訪問して簡単に決済が可能です。また、オンラインでチャージが行えます」とeB Card Corporation モバイルビジネスチーム マーケティングDiv. マネージャー ジャック・リー氏は説明する。さらに、付加サービスとして韓国の交通案内やクーポンなどを提供している。モバイルクーポンについては、日本人の利用者のみに提供するサービスとなっているそうだ。
金額のチャージは、VisaおよびMasterCardのクレジットカード、銀行振込・ATM決済に対応している。10,000ウォンから500,000ウォンまでの入金が可能で、チャージする際に日本円の目安も表示される。
韓国で「cashbee」が利用できる加盟店は、交通、流通、オンライン加盟店の大きく3つに分けられる。そのうち日本の「モバイルcashbee」は交通と流通で利用可能だ。加盟店の店舗数は、セブン-イレブン、CU、GS25、ミニストップといった主要チェーンで利用できるコンビニエンスストアが最も多い。次いでロッテグループの加盟店となり、これが韓国の交通ICカード「T-Money」との差別化となっているそうだ。
現状、国内で提供する「モバイルcashbee」は、流通加盟店のみで利用でき、地下鉄やバスには非対応となっている。NTTドコモでは2014年夏、KDDIでは2014年秋に発売予定の端末から対応する予定だ。
携帯キャリア、SBI AXESと協力して国内向けシステムを構築
韓国に関連した媒体を通じてプロモーションを展開
今回の国内サービス提供に向けては、携帯キャリア、eB Card、SBI AXESと協力してシステムを構築。各社の役割として、まずキャリアはUSIMおよび「モバイルcashbee」のOTA(Over the Air)発行のためのTSM(Trusted Service Manage )構築と運営を行う。eB Cardは、韓国国内での「cashbee」の加盟店開拓、精算業務、モバイルシステム及び運営とマーケティングを実施。SBI AXESは日本の「モバイルcashbee」の提携発行者であり、センターの運営、日本向けのカスタマーサポートやマーケティング活動を行っている。また、オンラインチャージの処理においては、株式会社ゼウスが担っている。今回、eB Cardでは、韓国内で事業を展開するSBI AXESと提携することで、円滑に事業を展開できるメリットもあったそうだ。
夏以降は、利用者への告知等のプロモーションを強化していきたいという。eB Card Corporation モバイルビジネスチーム マーケティングDiv. シニアマネージャー パク・イェスル氏は、「すでに利用活性化のため、Webサイトの『ソウルナビ』など、韓国に関連した媒体を通じて告知を開始しています。SBI AXES様には日本向けの媒体などを通じてプロモーションを行っていただいています」と説明する。
今後の計画としては、ユーザーの利便性向上のため、コンビニ決済、キャリア決済などへの対応を検討している。また、日本国内のポイントサービスとの提携を予定している。さらに、将来的には、オンライン決済も行えるようにする方針だ。ジャック・リー氏は、「例えば、韓国に旅行した人で、『モバイルcashbee』の残高が残った場合、日本の『cashbee』のオンライン加盟店で利用できるサービスを考えています」と構想を述べる。
「モバイルは普段お持ちのスマートフォンをかざすだけで決済ができるメリットがあります。また、これからはO2O(Online to Offline)の展開も考えられます。韓国でクレジットカード決済する場合、複雑な認証等が必要になりますが、USIMだけで処理が完了しますので、オンラインで簡単・安全にモバイル決済できるメリットがあります」(ジャック・リー氏)
現在は韓国の交通利用者の約5%が「モバイルCashbee」を利用
ヨーロッパ、中国、シンガポールへの展開も検討
なお、eB Cardでは、1997年に韓国初となるソウル市内の交通ICカードシステムを整え、精算まで可能なシステムを開発している。ジャック・リー氏は、「2004年に韓国スマートカード(Korea Smart Card)が参入し、ソウルの交通カードシステムを改編しましたが、その際にシステムや技術を提供したのも弊社です」と自信を見せる。「cashbee」は2010年まで別の名前でサービスを展開していたが、2010年にロッテグループが買収し、現在の名称でサービスを提供することとなった。
現在、「cashbee」では、「T-Money」と相互利用が行われている。バス、地下鉄、タクシーについては、「T-Money」はソウルを中心にインフラを構築。「cashbee」については仁川(インチョン)、京畿道(キョンギド)等で強く、相互に利用可能なサービスを約10年前から行っている(タクシーについて一部利用できない地域もあるそうだ)。
eB Cardの大きなビジネススキームとしては、交通機関へのインフラ整備、「cashbee」の発行・精算業務の2つとなる。交通インフラについては、プリペイドカードやクレジットカードで利用できるシステムを提供。バスや地下鉄でクレジットカードを使う場合はVAN(Value Added Network)社の承認なしに利用可能となっている。
ビジネスモデルとしては、利用者が「cashbee」加盟店でチャージを行った場合、同社から加盟店にチャージ手数料を支払い、利用された場合に決済手数料が入るモデルとなっている(チャージ機によるチャージの場合は手数料無料)。
eB Cardでは、韓国においても「モバイルcashbee」利用者の拡大に力を入れている。ジャック・リー氏は、「プリペイドカード機能の活性化のために考えたのがモバイル決済です。モバイルを利用して交通乗車できるのは、『cashbee』と『T-Money』しかありません。現在はモバイルの利用者を増やしていくことに力を入れています」と意気込みを見せる。
韓国でもNFC対応の端末が増えているため、「便利な体験をしていただければ、モバイル利用者が増え、1~2年後には成果が出てくると思います」とジャック・リー氏は期待する。なお、現在は交通利用者の約5%がモバイルを利用しているそうだ。
eB Cardの今後の取り組みとしては、ロッテグループが進出しているヨーロッパ、中国、シンガポールなどへの展開も予定している。例えば、技術的な提携としては中国のChina Mobile(チャイナモバイル)、シンガポールのSingtel(シングテル)との話し合いが進んでいるそうだ。
~SBI AXES
傘下に決済処理事業者を有するSBI AXESは、国内3キャリア向けの「モバイルCashbee」の提携発行者であり、国内利用者へのプロモーションに力を入れている。国内におけるプロモーションとしては、「『モバイルCashbee』の紹介ページやFacebookページ(https://ja-jp.facebook.com/cashbeejapan)を開設し、プロモーションを行っています」とSBI AXES グローバル営業部 営業推進課 主任 金大兼氏は説明する。