2014年12月2日8:30金融ベンチャーへ投資しようInvest in Fintech Ventures
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
世界中のベンチャーが金融ビジネスへ続々と参入している。従来にない革新的なコンセプトをたずさえて。あるいは旧来からあるビジネスモデルを新しい技術に置きかえて。単純に先行するベンチャーに追随してひと儲けしようというものもいる。
金融ビジネスでの起業が多いのは、先端技術で金融ビジネスを変革できる環境が整ってきたからである。夢をかなえるためには資金がいる。その調達先が多く、潤沢な資金が集まることも、金融セクターが活況を呈している理由のひとつであろう。
NCBレポート12月号は、恒例のベンチャー特集である。ながく金融ビジネスに携わっていると、慣習に染まって固定概念から抜けだせない。放っておくと陳腐化して顧客が離反する。年末はそんなススを払い落とし、新たな年に迎えるにあたって、頭の整理をするのにちょうどいい機会である。
世界のベンチャーはなにを考え、どんなコンセプトで金融ビジネスを変革しようとしているのだろうか。新鮮なアイデアや、技術活用のヒント、あるいは市場のニーズを読みとることにしよう。
■1社1回の平均調達額は約30億円
2014年1月から9月までの間、1回に100万ドル(約1億円)以上の資金を調達したミリオンダラーベンチャーは151社あった(日本をのぞく)。9カ月間に複数回調達したところは1社としてカウントした。1億円未満や未公表を含めると、この倍以上になるだろう。151社が集めた資金総額は38億9,400万ドル、約4,300億円になる。金融セクターへの投資は、年々増加している。
ベンチャーの資金調達方法は多様で、スタートアップから数回に分けて調達するシリーズファンディングや市場公開(IPO)、あるいは株式を発行するエクイティ投資、社債などの債権をベースにしたデットファイナンシングなどがある。
国別でみると、トップは米国で94社。他国を大きく引きはなし、全体の62%をしめた。米国はベンチャーを育てる土壌が整っている。ベンチャーへの投資方法と、そのエグジット手段は多様だ。市場公開だけでなく、成長戦略のひとつとして、企業買収意欲は強い。
2位は英国で18社。欧州のベンチャー投資拠点として活気づいている。ついで3位はイスラエルだ。6社のうち4社がセキュリティ関連。昔からイスラエルはセキュリティに強い。以下、カナダ5社、インド4社、ドイツ3社とつづく。ロシア、中国、スウェーデン、シンガポール、韓国、オーストラリアはそれぞれ2社。ルクセンブルク、メキシコ、香港、フランス、フィリピン、ノルウェイ、トルコ、オーストリア、ニュージーランドが1社づつ調達している。
では、これらのベンチャーは、どんなジャンルでビジネスモデルを構築しようとしているのだろうか。主力とするジャンルで151社を分類すると上図のようになった。