2014年12月15日9:00「楽天スマートペイIC・磁気対応カードリーダー」を販売開始8,000円を切る価格で販売し、3万円以上の利用で実質無料に
楽天とビザ・ワールドワイド・ジャパンは2014年12月15日に記者会見を行い、楽天が運営するスマホ決済サービス「楽天スマートペイ」において、「楽天スマートペイIC・磁気対応カードリーダー」の販売を同日から開始したと発表した。国内のスマートフォン決済サービスにおいて、ICカード取引の国際標準規格であるEMVレベル1、レベル2に準拠し、PIN入力装置の標準規格である「PCI PTS」認定を取得してサービスを提供する国内初の事例となる。同端末は7,980円で販売するが、キャンペーンとして、一定の条件を満たせば端末代と同等のキャッシュバックが行われるため、実質無料で導入することも可能だ。
他社に先駆け国内でEMV対応のスマホ端末を販売
EMVレベル1,2、PCI PTSに準拠
12月15日から申込受付を開始した「IC・磁気対応カードリーダー」は、Visaのルールに則り、暗証番号を入力するPINパッドを備え、ICチップの付いたクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードで決済する際に、認証をサインではなく、4桁の暗証番号を打ち込むことで完了する仕組みとなる。
特長としては、国際標準のセキュリティ認定に準拠している点が挙げられる。国内でもEMV対応のリーダーを発表している企業もあるが、ICカードの国際標準規格であるEMV対応、PIN入力装置の国際規格となる「PCI PTS」といった高度なセキュリティ基準を満たさなければならない。そのため、ICカード対応は準備中のケースが多く、実際に商用化に至ったケースは今回の楽天が初となる。また、「楽天スマートペイ」に関わる決済システムについてもペイメントカードの国際セキュリティ基準「PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)の準拠認定を取得し、「楽天スマートペイ」に関わるすべての情報セキュリティ強化に向けた安全対策を講じているそうだ。
楽天 代表取締役副社長 穂坂雅之氏によると、2020年は東京五輪が開催され、多くの外国人が日本を訪れることが予想される。また、国内において「楽天スマートペイ」事業は拡大しており、「さらに安全なデバイスを提供したい」という思いがあったそうだ。ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役 岡本和彦氏も「さらに安心で安全、なおかつ安価な決済環境を整えていただきました」と歓迎する。
不正被害のターゲット国・米国でもIC化が加速
日本はIC化において最後進国に?
現在、ICチップ搭載カードについては国内のイシュア発行のカードでも6割強に搭載されている。しかし、取引件数でみると、わずか17%にとどまっているそうだ。これまでクレジットカードの偽造被害は米国に一極集中してきたが、米国では2015年末には加盟店側でも47%がICカードに対応すると予想されており、「日本はIC化において最後進国になる」と、ビザ・ワールドワイド リスクマネジメント/カントリーリスクダイレクター 井原亮二氏は懸念する。犯罪者にとって、日本が不正利用の最大のターゲットとなる可能性も考えられるそうだ。
Visaは、IC化対応を行っていない会社に対しては、ライアビリティー(債務責任)を課すルール、「グローバルEMVライアビリテイシフトルール」の運用を2015年10月よりスタートする。Visaでは国内において、原則新規に設置されるEMV端末にPINパッドを具備することを必須としているそうだ。楽天カードでは今後、既存のイヤフォンジャックタイプの販売を終了し、「IC・磁気対応カードリーダー」中心に移行する予定だ。
日本瓦斯の営業全社員が活用
キャンペーンの展開により実質無料で端末の導入が可能に
すでに同端末は日本瓦斯の営業全社員が使用する業務用スマートフォン端末として採用され、現場での決済に利用されるそうだ。
今回、15日以降に「IC・磁気対応カードリーダー」を新規申込した加盟店のうち、審査通過月を含む4カ月以内に、合計3万円以上、同端末での取引があった店舗に対し、端末代と同等の7,980円をキャッシュバックするキャンペーンを展開する。そのため、実質無料で端末を導入できる。
楽天 スマートペイ事業長 小林重信氏は、スマートフォンと低コストなIC・磁気カードリーダーを活用することで、中小企業が安全なおかつ簡単に、IC取引に対応したカード決済端末を導入できるとしている。また、同事業により、クレジットカードが利用できるシーンが拡大することで、現金からカード決済へのシフトが加速すると見ている。
「楽天スマートペイ」の加盟店は順調に増加
楽天カードの発行枚数増加も導入を後押し?
楽天が「楽天スマートペイ」事業を開始してから約24カ月が経過したが、導入企業は順調に増えているそうだ。その理由として、「楽天トラベル」「楽天デリバリー」「楽天サロン」をはじめ、楽天グループは多くのリアルの店舗と接点がある。また、楽天ID、楽天銀行の口座をビジネスで開設している人もいるため、効率的にサービスの魅力を案内できているという。
また、国際ペイメントブランド6ブランドへの対応、一律3.24%の決済手数料なども強みとなっているそうだ。さらに、365日翌日入金については、「世界最速」であることを小林氏は強調した。
今後の展開として、FeliCa対応の電子マネーや国際ブランド準拠の非接触決済については、市場の動向を見据えながら検討していきたいということだ。また、当面は国内の加盟店中心に端末を提供する方針だ。
さらに、クレジットカードの発行におけるセキュリティ向上施策としては、楽天グループのクレジットカード「楽天カード」においても、2007年7月からICチップが搭載され、高度なセキュリティ対策に取り組んでいるという。テレビCMの影響もあり、楽天カードのユーザー数は現在も伸びているというが、「楽天カードが提示されるケースが多いため、店舗が『楽天スマートペイ』を導入するきっかけとなっている」と穂坂氏は話す。
「楽天スマートペイ」は将来的に100万加盟店への導入を目指しているが、「すそ野はかなり広がっている」(穂坂氏)という。