新たなマーケティングツールとしてCLOへの注目が高まる

2015年4月24日8:00新たなマーケティングツールとしてCLOへの注目が高まるカード会員に対し、最適なクーポンや特典を提供

国内のクレジットカード会社では近年、カード会員の属性や決済履歴に基づいて、クーポンや特典を提供するCLO(Card Linked Offer)に取り組む企業が増えている。米国では2008年頃から展開されており、数多くの金融機関が提供していると言われているが、クレディセゾン、セディナ、ジェーシービー、三井住友カードといったカード会社が取り組んでいる。

CLOは、クレジットカード会社(イシュア)のカード会員の決済履歴もしくは属性情報などから特典を送る会員を抽出、もしくはカード会員が利用明細やアプリなどから特典を選び、当該加盟店で決済すると割引などの特典が受けられるものだ。

クレディセゾンのカード決済連動型サービス「セゾンCard Linked Offer」のイメージ
クレディセゾンのカード決済連動型サービス「セゾンCard Linked Offer」のイメージ

カード会社では以前からクレジットカードの緩やかな購買情報を活用した分析に取り組んできたが、CLOにより決済まで結び付けることができるため、カード会員の稼働率アップにつなげることができる。また、カード会社が顧客のセグメントに沿って特典提供を行うことができるため、新たな販促活動としても注目されている。さらに、スマートフォンを使ったプッシュ配信などにより、効率よく購買につなげることも可能だ。

当初、日本ではイシュア提供のCLOが話題となったが、最近では、カード決済ネットワークを活用したもの、POS情報との連携により購入した店舗だけではなく商品まで把握することが可能なもの、加盟店の付加サービスとして提供するサービス等が登場している。

ただし、クーポン提供等、キャッシュバックや割引が主になるサービスが多いため、付加価値の高い加盟店が参画しにくいデメリットもある。場合によっては、単純なクーポンのバラマキとなり、CRMとは相反したサービスになる懸念も指摘されている。また、イシュア提供のCLOの場合、加盟店を一社一社開拓する必要があるため、加盟店と接点の弱いカード会社では提供するクーポンが似通ってしまう可能性がある。

実際、米国でもCLOが話題となったが、イシュア提供のCLOについては継続して成功している企業は決して多くはないと言われている。

ただし、国内でCLOに期待するカード会社は多く、例えばクレディセゾンでは、加盟店を1,000社にすることで、カード会員が好きなクーポンを便利に選べる環境を整えていきたいとしている。また、売上目標は3年後に国内最大級のアフィリエイトモール「永久不滅ドットコム」の550億円と肩を並べるようにしていきたいそうだ。

また、セディナでは、2014年8月4日から、野村総合研究所とともに、クレジットカード決済と連動したCLO(Card Linked Offer)として、加盟店キャッシュバッククーポンサービス「セディナキャッシュバッククーポン」の実証実験を行ったが、想定以上の成果が表れたという。

■福岡地所
マリノアシティ福岡で公式アプリとハウスカードの連携に向けた実験実施
福岡地所は、同社が運営する福岡市西区の商業施設「マリノアシティ福岡」において、2014年12月20日からサービスを開始した施設の公式アプリケーションと、同社所有施設の共通ハウスカード「f-JOYカード」との連携に向けた実証実験を実施している。同実証実験は、NTTデータと九州カードの3社協業による取り組みの一環であり、NTTデータが提供する「CAFIS Presh」を用い、将来的な「f-JOYカード」との連携による「CLO(Card Link Offer)サービス」実現に向けた告知ツールとしてアプリの有用性を検証する。

「f-JOYカード」の有効会員数は、クレジットカードと現金ポイントカードを合わせて約27万人いるが、非会員も誘導できないかと考え、カード会員に絞らずにリリースしたそうだ。まずはGPSを搭載した情報配信からスタート。また、館内の約400カ所にBeaconを設置しており、会員がどういった買いまわりをしているのかを検証する。

「実験を進めながら次の施策を検討しますが、お客様の会員情報が登録されれば、どういった買い物をされているのかという属性が分かりますので、将来的に適切な情報配信につなげていきたいです」(福岡地所 商業事業本部 施設運営部長 下田圭一氏)

ダウンロード数は、2015年1月末時点で1万を突破。今後はアプリでの「移動履歴」とハウスカードでの「購入履歴」との突合せにより、施設内買い回り把握をどのように行うかが課題となっている。

商業事業本部 施設運営部 朝川福太郎氏は、「今後は、ECでの購入がさらに増えると言われている中、商業施設としては来館された方の入店や購入を促進するようなリアルタイム性のある情報を提供することが重要です。GPSとBeaconの出し分けについても実験を皮切りにしながらブラッシュアップしていきたいです」と笑顔を見せた。福岡地所では、年内に2~3万人に同アプリを利用してもらいたいとしている。

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