2015年9月17日10:05
ビザ・ワールドワイドジャパンは、2015年9月16日、インバウンド消費に取り組む関係者のおよびメディアを招待した懇親会を開催。京都市におけるインバウンドの施策やVisaの調査データおよび訪日外国人2,000万人の目標へ向けて残る“決済インフラ”の課題とVisaの取り組みについて紹介した。
世界でも屈指の人気都市の京都
ショッピングの強化が課題に
2013年に訪日外国人観光者が1,000万人を突破し、1,800万人という数字が視野に入った。消費としても現在の2兆円から、東京五輪が開催される2020年には4兆円に伸ばすシナリオを描いているが、Visaとしては、訪日外国人に安心・安全な決済インフラを提供するため、今回の懇親会を開催したと、ビザ・ワールドワイドジャパン 取締役会長 岡本和彦氏は説明する。
プレゼンテーションでは、「京都インバウンド市場の現状と課題解決へ向けたKCVBの取り組み」と題し、 京都文化交流コンベンションビューロー 国際観光コンベンション部 部長 赤星周平氏が講演した。
京都市は、世界的に影響力をもつ旅行雑誌「Travel+Leisure」(トラベル・ アンド・レジャー)誌が行った読者投票「ワールドベストアワード2015」において、世界の人気都市を決める「ワールドベストシティ」ランキングで2年連続の一位を獲得した。
京都文化交流コンベンションビューローは、京都市と協業して、観光戦略に基づいた戦術企画を行うとともに、統計や・市況データなどから、プロモーションを行っている。
京都市では、2014年、外国人宿泊数は2年連続100万台の大台を突破。過去最高となる183万人を達成した。また、訪日外国人のうち約7人に1人が京都に宿泊しているそうだ(宿泊シェア13.6%)。
宿泊客は欧米が多かったが、昨年には中国や台湾からの宿泊客が増加。主要ホテルの宿泊では、40%が外国人になっており、稼働率は90%程となる。ただし、繁閑ギャップがあり、特に1月、2月は宿泊客が落ち込むそうだ。また、一日当たりの販売可能客室数あたりの売上金額は、増加しているが、パリやニューヨークなど海外の主要都市と比べると、低い状況となっているが課題であるという。
京都市がターゲットとするポートフォリオとして、「MICE 団体/修学旅行」「インバウンドレジャー」「国内 レジャー」「インバウンド 出張/ビジネス」「国内 出張/ビジネス」の5つがあり、各々特性を鑑みた戦略が必要であるとしている。また、統計が未整備の日帰り観光客に対するマーケティングも強化していきたいとしている。
京都には全国に類のない「新景観政策」として、建物の高さ規制などがあり、大型のホテルを建設しづらいため、慢性的に客室不足といった課題がある。また、たとえば中国人観光客は東京の家電量販店などで、高額なショッピングを行うケースも珍しくないが、京都は家庭的なお店が多いため、ショッピングのランキングが「Travel+Leisure」の調査でも低くなっている(2014年の調査ではショッピングのスコアは審査項目に含まれておらず)。また、京都における旅行支出は昨年対比で40%向上しているが、国の平均と比べると土産代が低い傾向にあるそうだ。
そのため、京都市では免税品拡大施策を核に、ショッピング環境の整備を図っている。2014年4月1日の市内免税店は178店舗だったが、1年間で715店舗まで拡大。また、免税制度を説明した京都市独自のWebサイトを作成。さらに、免税店向け多言語コールセンター、4カ国語対応の指さし会話ツールの作成など、サポートメニューを強化している。
今後は、店舗での外国人の観光客に対するコミュニケーションレベルの向上が重要であるため、スキル向上をサポートしていきたいとしている。また、免税店での情報発信強化、カードのアクセプタンスマークの掲出促進、海外カードが利用できるATMの設置などを行っていく方針だ。さらに、京都および他の地域の成功事例を共有し、消費活性に結び付けていきたいそうだ。そのほか、京都の情報を発信するメディアとの関係性を強化し、民間企業広報とのタイアップ施策を加速度的に推進していきたいとしている。
外国人観光客はアクセプタンスマークのあるお店を好む?
国内3都市のアクセプタンスマークを掲示率は8%と少ない
赤星氏の後を受け、ビザ・ワールドワイド・ジャパンクロスボーダーマーケティング&ビジネス 龍武史氏が、「“決済インフラ”の課題とVisaの取り組み」について講演した。
東京をほかの国際都市と比較した結果、「交通アクセス」や「雰囲気」は良い状態であるものの、「ショッピング」や「支払い&現金取り扱い」は悪い状態となっている。ロンリープラネットでは、「日本ではクレジットカードに頼らないことが得策であり、現金を持って歩くのが基本原則」と紹介されたように、クレジットカードが利用できない加盟店も多い。
Visaが札幌で行った調査では、8割以上の観光客がアクセプタンスマークのあるお店を好む結果となった。また、ショッピングに際してアクセプタンスマークを探す頻度は、「頻繁に」が40%、「毎回」が14%となった。さらに、店でカードがつけない場合の利用金額について慎重になるかを尋ねたところ、「ほぼ同意」が44%、完全に合意が20%となっている。Visaが表参道で実施した調査では、加盟店においても、アクセプタンスマークがあることにより、平均単価がアップする結果となったそうだ。
カード使用を制限しないことにより、1人当り17%の売り上げ機会増加が見込めるため、売り上げ損失は3,300億円にも及ぶという。
Visaが東京・京都・那覇の750店舗の飲食店で実施した調査では、①カードを受け付けている店舗が65%、②そのうちアクセプタンスマークを貼っている店舗が27%、③そのうち店頭にアクセプタンスマークを貼っている店舗が44%となり、最終的には8%程度しか、すべて満たしている加盟店はないという調査結果となったそうだ。
Visaでは、店舗においてカードが使えることを示し、店舗での経験をSNSなどでシェアしてもらうことで、より多くのインバウンド消費を取り込んでもらいたいとしている。