2015年10月5日9:13
企業買収と成長戦略 ペイパルにみる買収の軌跡と成果
~Acquisition & Growth~
2015年7月20日はペイパルにとって記念すべき日となった。
それまで親会社だったイーベイから独立し、ナスダックに再上場したのである。
再上場というのは2002年の2月に一度上場していたから。
それを同年10月、イーベイが買収したという経緯がある。
再上場当日の株価は一時42.55ドルと、売出価格の11%アップとなった。
時価総額は520億ドル、日本円に直すと6兆円を超える。
これはみずほファイナンシャルグループやファーストリテーリングとほぼ同等の企業価値だ。
ペイパル成長の要因はふたつ。
ひとつはEコマースの伸び。
もうひとつは環境変化に即応するための企業買収である。
今回は企業買収に焦点をあててみたい。
いつどんな会社を買収したのか。
その目的はなにか。
どんな成果をあげているのか。
ペイパルを下敷きに企業買収と成長戦略について考えてみよう。
■すべての指標で成長し続けるペイパル
ペイパル(PayPal)の創業は1998年12月。現在投資の世界ではペイパルマフィアとして知られるマックス・レブチン氏とピーター・ティール氏がE-mailを使った決済サービスを開発した。実際にサービスをスタートしたのは1999年10月である。
それから3年後、イーベイ(eBay)に買収されて以降、ペイパルの業績は急上昇する。2002年末の稼動口座数は790万口座。取扱高は70億ドルで、収益は2.4億ドルだった。
それが2014年末には、稼動口座数は1億6,200万口座、取扱高は2,280億ドルで、収益は79億ドルに大躍進した。この12年間で稼動口座数は20.5倍。取扱高は32.6倍。収益は32.9倍になったのである。
稼動口座数の伸びよりも取扱高が上回っているのは、口座単価が上がっているから。つまり利用件数が増えている。
取扱高2,280億ドルは、日本円に直すと28兆円を超える。兆円単位になってからも前年対比27%もアップしているのだからすごい。取扱件数は36億件で、これも前年対比23%伸びている。
2014年の1件あたりの利用額は63.3ドル。1口座あたりの年間平均取扱高は1,407ドル、17万円強だ。取扱高収益率は3.46%だった。
ペイパルは2008年から2009年にかけてのリセッション期をもモノともせず、創業以来すべての指標で伸び続けている。環境適応能力の高さは、企業買収によって外部の血をうまく取入れているからではないだろうか。