2015年11月6日8:30
PayPal Pte. Ltd.(ペイパル)は、2015年11月5日、ヤマダ電機が運営するECサイト「ヤマダウェブコム」にペイパルをデジタルウォレット(ID決済)として導入と発表した。デジタルウォレット(ID決済)としてのペイパルの導入は、大手家電量販店においては国内初となる。
ゲスト購入では3ステップで購入まで完了
ヤマダ電機では、会員登録を不要とする「ゲスト購入ボタン」と、そのゲスト購入をカンタンにする「ペイパルボタン」を各アイテムページにも配置。情報入力を1ページにまとめて会員登録をする・しないを同ページで選べるようにした。これにより、ペイパルのアカウント利用者は、従来の「会員登録してから購入」に加え、「会員登録せず、ゲストとして購入」「ペイパルでログインして購入」という2つから選択可能となった。
「ゲスト購入」では、名前・住所・カード番号といった情報を再入力することなく支払いが可能だ。PayPal Pte.Ltd東京支店 コミュニケーションズ 部長 杉江知彦氏は、「ゲスト購入はショッピングカートも飛ばすことができ、3ステップで購入が可能なため、『かご落ち』を減らすことができる」と説明した。
国内の51%がモバイル取引、ID決済はモバイル決済との親和性が高い
「かご落ち」とは、ユーザーがネットショッピング時に、カゴには商品を入れるものの、購入を完了しないことを指す。「BI Intelligence“Shopping Cart Abandonment Study – March 2015」によると、2006年に60%だったカゴ落ち率は、2013年には71%へと増加しているそうだ。また、「Visual Web Optimizer」によると、かご落ちの原因として、全体の48%が安全性や購入フローなど、決済に原因があると回答している。
通販新聞「通販・通教売上高ランキング」12年10月-13年9月期によると、国内ではトップ100のeコマースサイトのうち、70%でアカウント登録が必要となっている。また、トップ25の絞ると21サイトで必要となり、2サイトが必要な米国よりもアカウント登録が求められるサイトが多い。
PayPalでは、2015年第一四半期の日本国内の取り引きにおいて、eコマース全体の取引の51%がモバイルで行われるようになり、初めてPCを上回ったという。この傾向は今後も加速していくとみており、モバイルの場合、住所やカード番号を打ち込むのが面倒だと感じる人が多く、離脱につながるため、ID決済のニーズは高いとみている。
また、ヤマダ電機からは、セキュリティ面も高く評価されたという。PayPalでは、決済時にカード情報が店舗にわたらない仕組みを採用している。また、決済時における不正検知のアルゴリズムを有しており、2,000人規模の監視チームが不正対策にあたっている。世界7都市、8,000人がカスタマーサポートに従事しており、さらに、買い手と売り手を保護する「バイヤー&セラープロテクション」などのサービスも行っている。例えば、PayPalの決済サービスを導入した「ホビーリンク・ジャパン」では、導入後、チャージバックの発生が劇的に減ったそうだ。
PayPalでは今後、アプリに4時間程度のコーディングで決済を組み込めるモバイルSDKや、モバイル自動対応のAPI群を提供していきたいとしている。
越境EC、モバイル対応、セキュリティの強みを大手EC加盟店に訴求
なお、PayPalは203の国と地域で展開しており、100以上の通貨に対応している。グローバルでのアカウント数は1.7億、1日当たりの決済件数は1,250万、年間取扱高は29兆円。50%以上が国際取引となり、モバイル決済比率は30%を占める。また、日本のアカウント数は100万を超えているそうだ(利用者、売り手を含む)。
日本では、大手EC加盟店が決済システムを導入する場合、国内の大手ペイメントゲートウェイ(決済代行事業者)に委託するケースが一般的で、これまでPayPalの導入は決して多くはなかった。そのため、国内で大手EC加盟店に導入していくことは簡単ではないが、PayPalの基本的な強みとなる、訪日観光客の利用や越境EC、モバイルへの対応、セキュリティ面での強みを訴求できれば、ウォレット決済は間違いなく利用されるようになるとみている。また、ビットコインやApple Payなど、新しい決済手段が増えたときに即座に対応できるのもPayPalの強みであり、今後採用は加速していくと同社では考えている。