2016年2月10日8:00
大手美容サロンのブランシェにモバイルプリペイドサービス、MasterPassを導入へ
ユーシーカード(UCカード)は、スマートフォン用アプリ「My Wallet」を公開し、2015年11月16日より、ブランシェへWalletサービスの提供を開始した。ブランシェはUCカードのWalletサービス活用により、第一弾としてモバイルプリペイドカード機能を実装し、顧客サービスの向上を図る。「My Wallet」採用により、ブランシェグループの美容室や飲食店42店舗で利用できるプラスチックカード型プリペイドカード「ブランシェプレミアムカード」をモバイルアプリ上で発行したり、クレジットカードでチャージすることを実現可能とした。UCカードでは、MasterCardのチェックアウトサービス「MasterPass(マスターパス)」のサービス提供にも力を入れる。
導入に向け1,600項目を検証
モバイルからプラスチックカードにチャージする機能を提供
UCカードは、2014年7月にMasterCardとDNPの協力のもと、MasterPassおよびモバイルプリペイドを共同で提供することに合意。品質・機能面で競争力のあるモバイルプラットフォーム構築にこだわり、両社と十分に協議を重ね、「My Wallet」のサービスリリースに至った。
「決済にかかわるアプリのため、品質の重要性を鑑み、エラーケースも含め、iOSとAndroidの各800項目の検証を行いました。サービスをリリースするにあたり、スマホ上にクレジットカードの情報を登録しますが、その情報管理をどのように行うか等顧客への安心・安全なサービス提供にこだわり、時間をかけました。それだけに、新たなUCカードのプラットフォーム事業として、幅広いターゲットに『My Wallet』を提供していきたいです」(ユーシーカード 事業開発部モバイルサービス事業室 課長代理 湊屋 匡章氏)
My Walletの開発に向け、プラットフォーム基盤を構築するための基礎部分は想像以上に労力がかかった。プラットフォーマーとしてイシュアにOEM提供する場合、各社独自のウォレットサービスを提供することが可能だが、基盤はできているため、1からイシュアが構築するのに比べ、コストを抑えられるという。
ブランシェでは、バリューデザインが提供する「バリューカードASPサービス」を利用してプリペイドカードを発行しているが、UCカードのWalletサービス活用により、「My Wallet」でのローンチ時には、モバイルからプラスチックカードにチャージする機能を提供した。これまで、ブランシェの利用者は、銀行で現金を下ろして、来店するケースが多かったが、24時365日モバイルからクレジットカードによりチャージしてもらうことが可能だ。
ブランシェではグループ店舗での回遊を図る
モバイルからのチャージの利用者は単価が2.5倍に
サービス導入にあたり、120人の従業員に対し、UCカードでは説明会を実施。ブランシェでは従業員教育を徹底したこともあり、開始後の登録者も順調に伸びているそうだ。また、店頭ではパンフレットを配布して告知している。湊屋氏は、「ブランシェ様からは、スマートフォン上で金額を選択するだけで、簡単にチャージできることをご評価いただいています」と説明する。モバイルプリペイドカードでは、ポイントをチャージの際に付与しており、チャージ金額によって還元率を変更している。
「ブランシェ様では、現金と比べ、クレジットカードによるオンラインチャージの場合、単価が2.5倍にアップしています。また、美容室に加え、グループで飲食店やネイルサロンを運営していますので、お客様の回遊を図る手段として『My Wallet』をご採用いただきました。グループでの跨った利用が進めば、さらにチャージ金額が高まると期待されています」(同事業開発部長 中野征治氏)
ブランシェでは、現金時の平均チャージ単価は8,000円だが、モバイルからのチャージの利用者は2万円超まで高まっている。現状は、既存のプラスチックカードにモバイルからチャージする機能のみを提供しているが、今後はモバイル上にバーチャルなカードを発行することで、プラスチックカードのコストを削減させていきたいとしている。
「Salon de Wallet」のブランシェ専用ECサイトでMasterPassを導入へ
ブランシェはモバイルプリペイドサービスとMasterPassの2機能を搭載
また、ブランシェは、美容サロン情報スマートフォンアプリ「Salon de Wallet」を導入し、同アプリ内でブランシェ専用ECサイトを展開しているが、その決済手段の1つとしてMasterPassを導入する予定だ。
MasterPassには、①MasterCardブランドで展開、②MasterCardがホストを行うがパートナーブランドで展開するサービス(ホワイトラベル)、③ホスティングやブランディングも導入サイトが行い、共通で利用できるAPIを提供するサービス――の3つがあるが、UCカードでは③の自由度や汎用性が高いサービス提供を事業コンセプトとした。ブランシェでは、UCカードがオーナーを務める「My Wallet」のプラットフォームの中に、モバイルプリペイドサービスおよびMasterPassの2機能を搭載する予定だ。
また、My Walletにはオプションとしてクーポン配信、アプリでのプッシュ配信などを付加することが技術的に可能なため、今後は導入企業のニーズに合ったサービスを提供していきたいとしている。
さまざまな汎用モバイルサービスを導入できるサービスを提供へ
2016年は日本におけるモバイルウォレット元年に
UCカードは、今回のブランシェでの展開をベースに、My Walletの導入を加速させていきたいとしている。「単純な決済としての提供だけにとらわれず、送客やCRM等、決済の前後の動きをサポートするサービスとして、ご活用いただくことを展望しております。決済ビジネスの世界ではFinTechが注目されていますが、UCカードが保有するプラットフォームに新興企業の個々のソリューションが搭載されることも今後十分あり得るでしょう。海外での導入事例等も参考にし、優れたユーザーエクスペリエンスを提供することに知恵を絞っていきたいです」と中野氏は説明する。また、加盟店に対しても、さまざまな汎用モバイルサービスを簡易に導入し、利用できるサービスを提供していく方針だ。
中野氏は、「実質2016年が日本におけるモバイルウォレットの元年になると思われますが、「My Wallet」の採用加盟店とユーザーを両輪で増やすことで、新たなマーケティングが展開でき、企業ブランディングにも貢献できる。モバイルウォレットの分野ではUCがリーディングカンパニーと呼ばれる存在を目指します」と意気込みを語った。