2016年5月26日8:45
年々拡大が続くeコマース市場。クレジットカードをはじめ、さまざまな決済手段が用いられてるが、注目を集めている支払方法の1つが「後払い」である。このほどTIプランニングから発行された「カードビジネス年鑑」では、各種決済サービスの市場予測を掲載しているが、後払い決済についての成長も予測した。
参入企業が一気に増加し、認知度も向上
近年、利便性の高い後払い決済を導入するEC加盟店が増加していると言われる。「後払い決済」は、ショッピングモールや通販サイト等において、消費者から商品の注文があった際、まずは商品を発送し、購入者は商品到着後に代金をコンビニエンスストアや銀行で支払うサービスだ。
消費者にとっては、これまで利用したことがない通販サイトで購入した商品については少なからず不安があり、購入をためらうケースもあると思われるが、後払いは、商品を確認してから支払いができるため、その不安を解決できる。
また、クレジットカード情報を通販サイトで入力せずに商品の購入が可能だ。大手通販サイトなどから相次ぐ顧客情報漏えい事件を受け、クレジットカード番号を通販サイトで入力をためらう人もいると想定されるが、後払いにより、消費者にとっては安心感が得られるという。
さらに、商品の支払いは商品発送後に、全国のコンビニエンスストアで24時間、好きなタイミングで行える。また、提供するサービスによっては銀行・郵便局で支払いが可能となっている。
国内では、ネットプロテクションズ、キャッチボール、ニッセン、GMOペイメントサービス、ジャックス・ペイメント・ソリューションズ、ヤマトクレジットファイナンスとヤマトフィナンシャル、佐川急便と佐川フィナンシャルがサービスを提供している。参入企業の増加により、認知度もアップした。また、今後は日本郵便の参入も期待される。
※掲載当初、ジャックス・ペイメント・ソリューションズ様のお名前に誤りがございました。お詫びして修正させていただきます。
BtoCマーケットにおける後払いの適用範囲は限られる
今回は日本のECマーケットにおける後払いの潜在市場と売り上げを予測したい。国内のEC市場は成長を続けており、BtoCのマーケットは2015年で約15兆円だ。ただ、その約半分を占めるデジタルコンテンツ、サービス系は後払いとしてそれほど利用されていないので、対象は7.5兆ほどとなる。
また、未回収リスクの面から、家電やブランド品など、比較的高額な商品は後払いの対象から外れることとなる。実際、後払いを提供する多くの企業が5万円までの取り引きに制限している。さらに、一部適用外の商材もある。そのため、2015年時点での後払いの対象は、約3~3.5兆円であると想定される。
2015年の後払いの市場規模と2020年までの成長率は?
後払い提供の大手企業の半数が独自に後払いサービスを作りこむ
2015年時点での後払いの市場規模は約4,000億円弱。国内でトップのネットプロテクションズは、2015年の累計ユーザーは7,000万人(ユニークユーザーは2,700万人)、導入企業数は1万6,000社を超えており、2002年3月のサービス提供開始から14年弱で、年間流通額1,000億円の大台を突破した。それを追うキャッチボールは8,000店舗の導入実績となっている。ネットプロテクションズと、2位以降との差は相当な開きがあると思われ、後払いサービスを提供する全企業の取扱高を合わせても2,000億円には達していないはずだ。
残りの2,000億円は、大手企業が独自にサービスを作りこむケースとなっている。大手の通販サイトなどは自社で後払いのサービスを提供しており、比較的古くからサービスを展開している。実際、国内のECサイトの上位で後払いを提供する企業の約半数が自社でサービスを構築している。
後払いは、クレジットカード決済に比べて未開拓の加盟店は多いため、今後も後払いの成長が続くことは間違いない。ただし、未回収リスクの高い加盟店の選別、与信ノウハウの向上などが求められるため、サービスを提供する各社とも慎重に導入企業を獲得している状態だ。実際、あるアパレル系の企業は若年層のユーザーが多く、サービスを提供したある企業は未回収に悩まされたと聞く。
そのため、ECの成長率は上回るが、50%や2倍といった成長は難しいと考えている。今後は、毎年120%の成長が続き、2020年には7,000億円を超える市場規模になると予想した。後払い以外の決済手段も含め、実際の予想数値は「カードビジネス年鑑」で紹介している。