1台のNFCスマートフォンで世界の公共交通で使える時代がやってくる?

2016年7月19日13:18

公共交通分野でのRFアナログ規格の統一を実現へ

NFC Forum Japan Task Forceは、2016年7月14日に、第11回 ジャパン・ミーティングを大日本印刷(DNP市ヶ谷左内町ビル)で開催した。同ミーティングでは、公共交通に向けてRFアナログ規格の統一が実現されたことについて、NFC Forum チェアマン 田川晃一氏、JR東日本 IT・Suica事業本部 担当部長(技術戦略)山田肇氏から紹介された。

NFC Forumチェアマン 田川晃一氏
NFC Forumチェアマン 田川晃一氏
JR東日本 IT・Suica事業本部 担当部長(技術戦略)山田肇氏
JR東日本 IT・Suica事業本部 担当部長(技術戦略)山田肇氏

JR東日本がNFCフォーラムに加盟

NFC Forum(NFCフォーラム)は、NFCの技術仕様とテスト仕様の策定、普及啓蒙活動を行う業界団体。冒頭であいさつしたNFC Forumチェアマン 田川晃一氏は、JR東日本がNFC Forumのメンバーに加盟したこと、モバイルSuicaが2016 年1月28日に10周年を迎えたことを歓迎した。NFCフォーラムには、従来はサービスや機器のサプライヤーの参画が多かったが、鉄道などのオペレーター自身がNFCフォーラムに加盟するのは初めてとなった。

また、モバイルサービスが古くから行われてきた日本では目立たないものの、NFCのマーケットは継続して成長しており、「NFC業界は2020年までに$24.0Bの収益を記録する」「2015-20年の間、40.4%のCAGR(年間成長率)を記録する」といったマーケットリサーチのデータを紹介した。ただし、個別のサービスに関しては課題も多く、アプリケーションによっては時間がかかっている部分もあるが、「NFCフォーラムとしてもできるだけの努力を行っています」と田川氏は話す。

欧州のGCFがNFCフォーラム規格を参照

NFCフォーラムでは、決済や交通等、アプリケーションごとの標準化への取り組みに協力している。田川氏自身、過去には家電業界の標準化にも携わったが、非接触の世界ではNFCフォーラムがベースとする規格はISO/IEC18092となる。また、非接触ICカードの国際標準規格はISO/IEC 14443(ISO JTC1 SC17 WG8)、その周辺に決済系のEMVCo、鉄道の規格であるCENのTS16794(CEN TC278 WG3 SG5)、ISO TC204 WG8などがあり、これらの基準が微妙に異なる要素があり、ハーモナイズされて実装されなければ意味がない。そのため、NFCフォーラムでは、モバイルの標準化団体であるGSMA(GSM Association)、欧州の鉄道団体「CEN」、「STA(スマート・チケッティング・アライアンス)」、日本のJR東日本などともに、アナログ規格の統一に向けて、話し合いを進めてきた。

直近のトピックとして、公共交通のためのRFアナログのハーモナイゼーション、GSMAおよび欧州の携帯のグローバルな相互接続性の認定をつかさどるGCF(Global Certification Forum)が端末上に搭載されるNFCの試験規格についてNFCフォーラム規格を参照することが決定。これにより、すべてのモバイルOSがNFCフォーラム規格を採用しやすくなる環境の整備に一歩近づいたという。

「5月3日にリリースが出されましたが、GSMAの規格に基づいてGCFが必須要件としてNFC搭載の携帯の認定を行うことが合意され、GSMAとNFCフォーラムと契約を結んで、認定のスキームが世界的に動き出しています」(田川氏)

北米ではPTCRBとの話し合いが進められる
欧州や北米の動きを日本にどう取り込むかが課題

田川氏は、究極の形は、世界各国でNFCが搭載されたモバイル一台で、世界中で利用できる環境が理想であるとした。そのためには、「すべてのモバイルOSがNFCフォーラムの規格を採用して、世界互換を達成しないと世の中のためにはなりません。その信念を具現化するためには、GSMAの合意に見られるように、各産業の方々がNFCフォーラムの規格を採用しやすい環境を整備していくのが我々の使命です」とした。

また、欧州だけではなく、北米の通信事業者が認証試験項目を定めるPTCRB(Personal Communications Service Type Certification Review Boardと話し合いも進められているが、欧州同様のスキームを立ち上げることを挙げた。さらに、アナログだけではなくセキュリティやアプリケーション面も含め、デジタル・アナログの高い互換をさらに実現させることを挙げた。

ただし、この流れをどう日本に取り込んでいくのかについては課題となっており、検討を進めていく方針だ。

田川氏は今後の発展として、「決済・交通以外でのユースケースの開発」「すべてのモバイルOSによるNFC機能の実装」「PtoP(Peer to Peer)モードの普及」の3つを挙げ、NFC先進国の日本からさらなる発信と貢献を期待しているとした。

モバイルSuicaで海外の公共交通機関を利用するための、実現の第一歩

続いてJR東日本 IT・Suica事業本部 担当部長 山田肇氏が「公共交通におけるNFC規格のハーモナイゼーション」について講演。同議論については、当時、決済分野でのハーモナイゼーションによって、MasterCard Contactless、Visa payWave、JCB J/Speedyといった国際ブランドの非接触決済の分野で先行して完了した。ただし、その過程の中で、NFC TypeA/B方式のみが想定され、NFC TypeF(FeliCa)はスコープ外だったという。JR東日本では、2014年から開催された「Public Transport Workshop(公共交通ワークショップ)」の2回目から議論に参加している。

ワークショップで焦点となったのが、JR東日本のSuicaの処理速度だ。Suicaは1分間に60人が改札を通過できる処理速度があり、しかもICカードとリーダライタの通信距離が85ミリ以内、処理時間200ミリ秒以内が絶対条件だ。一方、欧州の鉄道事業者は、1分間におよそ30人の通過を想定しており、処理時間は500ミリ秒以内で、改札からカードまでの距離も20ミリ以内となっている。JR東日本では、ワークショップでJR東日本・池袋駅のラッシュ時の映像を流して、その必要性を説明したという。

ワークショップの中では、85ミリ以内は現実的ではないという意見もあったが、欧州のリーダライタのアンテナサイズは日本よりも小さいため、「土俵を揃えれば、それほど大きな違いはない」という説得もあり、公共分野におけるGSMAのNFC規格については、NFCフォーラム規格を参照することとなった。これにより、2017年4月以降、公共交通で利用されるGSMAに対応するグローバルモデルのNFC携帯端末にNFC TypeFも実装される可能性は高まった。

今回の合意により、モバイルSuica利用者が自身のモバイルNFC端末で海外の公共交通機関を利用するための、実現の第一歩となることは間違いない。また、訪日外国人やNFCスマートフォンのグローバルモデルによりモバイルSuicaが利用できるようになることが、将来の目標であるとした。

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