2018年4月2日7:55
PayPal Pte.Ltd.東京は、2018年3月30日、東京、青山学院内のIVY HALLにて、「電子決済時代のセキュリティ」をテーマとしたメディア向けセミナーを開催した。同セミナーでは、電子決済のコンサルタント、メルカリ、PayPalが本格的なキャッシュレス社会に向けたセキュリティ確保の要件について紹介した。
銀行、カード会社に代わる決済の新しいプレーヤー
スマホ、クラウドの活用によって高いセキュリティ要件をクリア
「電子決済時代のセキュリティ」をテーマとしたPayPal Pte.Ltd.東京主催のセミナーで、最初に登壇したのは、コンサルタントの立場から電子決済のセキュリティに関する啓蒙活動を行っている、山本国際コンサルタンツの山本正行氏。「電子決済(キャッシュレス)の潮流」と題して、キャッシュレス化の現状と課題について解説した。
山本氏はまず、グローバル(世界共通)からリージョナル(地域・商域ごと)、BtoCからPtoP(点から点)、スマホ依存という、決済サービスの3つの大きな潮流を提示。重厚長大なシステムを構築してきた銀行、カード会社に代わって、この潮流をけん引していくプレーヤーは、PayPal、Amazon.com、Google、Apple、Alipay、Wechat Payなどだろうと述べた。現にPayPalはすでに、決済総額と決済件数でJCBを、株式時価総額でアメックスを凌駕している。これら、新たなプレーヤーたちは、インターネット、クラウド、スマホの活用によって、高いセキュリティ要件を軽々とクリアしているという。
いまや日本国内のスマホ保有率は52.2%。山本氏が教鞭をとる関東学院大学経済学部の学生に限れば、スマホ保有率はほぼ100%。その学生たちの、スマホでの有料コンテンツ/サービス利用時の決済手段で最も多いのはiTunesギフトカード、Google Playギフトカードだという実態も紹介された。
今、若年層が主導して、日本の決済のあり方は大きく変わろうとしている。セキュリティが確保されることによって、キャッシュレス化はさらに加速することが期待される。
世界的なマーケットプレイス構築に取り組むメルカリ
不正の未然防止、迅速な対応、再発防止に尽力
山本氏の次に登壇したのは、メルカリ CSグループマネージャー 中野健太朗氏。「メルカリ 安心安全の取り組み」と題し、好調に業績を伸長させ続けているメルカリが、セキュリティ確保のために実行している取り組みを紹介した。
メルカリのミッションは、「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」ことだ。そのミッション達成のために、健全なプラットフォーム運営が最重要課題だととらえている。
2013年にローンチしたメルカリのアプリは、2017年末で1億ダウンロードを超えた。利用者の拡大とともに、規約違反や意図しない利用も増加。メルカリでは、安心安全対策に終わりはないとの考えのもと、環境の変化、テクノロジーの進化に合わせ、常に対策をアップデートしている。対策は、未然防止、迅速な把握・対応、再発防止の3つの側面から実施されている。
1つ目の未然防止に関しては、エスクロー決済を実施。購入者が支払った商品代金をメルカリがいったん預かり、出品者が発送した商品を購入者が確認して受取評価を行った後に、メルカリから出品者に代金を支払う。この仕組みによって、出品者は代金の未払いを防止することができ、購入者は商品に問題があれば取引をキャンセルし、支払った代金を全額取り戻すことができる。また、出品者に対し、初回出品時に本人情報(住所、氏名、生年月日)の登録を求めることによって、不正出品の防止や、不正利用が起きた場合のスムーズなモニタリングや警察などへの情報提供を可能にしている。
2つ目の迅速な把握・対応に関しては、「商品」「コメント」「決済」「渉外」の4つの軸から監視。これまでの経験に基づいて構築された異常値を検出する仕組みや、ブランド権利者、警察、各省庁との連携により、適切な対応につなげている。
メルカリのアプリの画面には、怪しい商品を見つけた時、すぐにカスタマーサポートに連絡できる通報ボタンが付いている。またメルカリでは、トラブルに巻き込まれそうになった時にも、速やかにカスタマーサポートに連絡するよう、ユーザーに呼び掛けている。
メルカリでは東京、仙台、福岡の3拠点、総勢400名体制でカスタマーサポートを行っている。ここでは、365日9時~23時の問い合わせ対応のほかに、365日24時間の規約違反対応を担う。ガイドライン違反に関するユーザーからの報告などをもとに、問題のある商品や出品者を検出し、削除、利用停止を実施。さらに現在、試験的に、AIを活用した違反商品の自動検知を実施している。今後は学習データを増やし、活用範囲を拡大したい考えという。
ユーザーに偽造品や不備・破損のある商品が届けられた場合には、補償対応を行っている。ブランド権利者・権利団体との連携においては、権利者保護プログラムを提供。連携先は1,000社以上を数えている。
3つ目の再発防止に関しては、全国の消費生活センターとのホットラインを開設。消費生活センターに寄せられた相談について、相談員と連携して問題を解決できる体制を整備。国民生活センターとは、定期的にトラブル再発防止策を協議している。全国の警察とも緊密に連携し、照会のあった事件性のある取引については積極的に情報を提供。発生経路を分析して再発防止に努めている。
技術・運用両面でのセキュリティ対策に取り組むPayPal
日本におけるPayPalのアクティブユーザー数の目標は?
セミナーの最後には、PayPal Pte.Ltd.東京 ディレクター 瓶子昌泰氏が登壇。「PayPalのグローバルビジネスとセキュリティ」と題して、PayPalのサービスの特徴や現状、今後の取り組みについて説明した。
PayPalが誕生したのは1999年。2010年に日本オフィスが開設。2011年には、過去1年以内に1度以上利用したアクティブユーザー数が全世界で1億人を突破。2014年には、PayPalを使える国・地域が200を超えた。
2017年の全世界の流通総額は、日本円にして約45兆円。そのうち3分の1がモバイル経由である。アクティブユーザー数は2億2,700万人に上り、そのうち日本のユーザーは200万人超となった。
PayPalは、デジタル財布のサービス。あらかじめクレジットカードを登録しておけば、クレジットカード情報不要、PayPal のIDとパスワードのみで、スピーディーに決済を完了できる。加盟店にカード情報を伝えることなく、PCI DSS準拠のPayPalのサイトで決済を行うことで、セキュリティを確保する。
さらに、「商品が届かない」「説明と違うものが届いた」といったトラブル発生時にも、一定の条件を満たせば返金される「買い手保護制度」を設置。未承認の支払いや取り消しがあった場合や、発送したのに商品がユーザーに届かなかったという場合に、適用条件を満たせば代金が保証される「売り手保護制度」も整備。ユーザーにとっても、加盟店にとっても、安心安全なサービスとなっている。
PayPalではこれらのメリットをユーザー並びに加盟店に一層アピールしていくことで利用を加速し、早い段階でアクティブユーザー数を500万人レベルに引き上げたい考えだ。