2019年4月26日8:00
本格的なデジタル戦略を推進しているJ.フロントリテイリンググループの大丸松坂屋百貨店・大丸東京店では、「お弁当WEB予約決済サービス」を導入している。大丸東京店地階「ほっぺタウン」の27ブランドで、スマートフォンで弁当の事前注文・決済が可能だ。
1日1万食を超える弁当需要
事前注文で行列をなくし、便利に
「お弁当WEB予約決済サービス」は、最近の中食需要の拡大や、周辺企業からの弁当宅配ニーズの高まりなどに対応し、オンライン上で事前に弁当を注文しておけば、当日・翌日の希望の日時に店頭で受け取ることができる仕組みだ。
大丸東京店 営業推進部 販売企画担当 スタッフ 平墳浩之氏は、「大丸東京店は東京駅に近く、オフィス街も隣接しているので、ランチ需要が高く、弁当販売が強い店です」と話す。地下の食品売り場は、規模の広さと店舗数の多さから「日本一のデパ地下」と言われ、売り場でも、「お肉の細道」や「お弁当ストリート」などにより、「来店したくなるお店作り」を進めている。
大丸東京店の弁当は一日1万食以上販売。年間の弁当の種類は1,000を超える。平日のランチタイムともなると、弁当や総菜を求めて大勢の買い物客が列を作るという風景が見られた。
平墳氏は、「お客様の利便性の向上と店舗業務の効率化を図るため、注文しておくと、並ばずに弁当をピックアップできる仕組みの導入が課題でした」と説明する。ファックスや電話を使って、事前に注文を受け付けるサービスは経験があったが、決済機能はなかった。「支払いの必要もなく、待たずに弁当が受け取れるサービスは需要がありますし、駅に隣接している店舗としては、時短につながるサービスはブランディングにもなるはずです」と確信したそうだ。
海外で進むBOPISを東京でも
買い物時間を短くしたい要望に対応
今回のシステムは、デジタルサービスの開発を手掛けるShowcase Gig と連携して開発した。2018年6月に大丸東京店に合わせた注文サービス「O:der(オーダー)」を開発し、サービスを展開している。
同サービスは、パソコンもしくはスマートフォンでサイトへアクセスし、ブランド選択や商品選択、当日もしくは翌日の受取日時を指定する。クレジットカード情報の登録をすることで事前決済が完了できる仕組みで、当日は大丸東京店地階食品ほっぺタウンの「お弁当ご予約承り所」で即座に商品を受け取ることが可能だ。
米国などでは、スマートフォンの普及により実店舗における購買の起点が「オンライン」にシフトしており、事前にネットで注文し店頭で受け取る「Buy Online,Pick up In-store(BOPIS)」サービスが浸透している。日本の中心地である東京駅に店を構える大丸東京店でも、「買い物時間を短くしたい」という忙しいビジネスマンユーザーのニーズに応えようと、いち早くサービスを導入した。
各店舗に注文が来たことを分かるようにするには、パソコンを設置するなどのコストや、注文を見逃さないようにしなければならないなど現場の負担が予想されたため、大丸東京店で一括して注文をまとめ、各店に調理を依頼する仕組みを採用した。平墳氏は「最初は注文を受けてから商品をお渡しするまでの時間が十分かどうかで、各ブランドに説明したり、意見を聞きながら進めました」としている。
スタート時は注文から弁当の手渡しまでの時間を2時間でみていたが、今では最短1時間で渡せるオペレーションになっている。一度に多くの注文が集まると大変なため、個数に上限を設置。また、年末年始やクリスマスなどの繁忙期には、弁当注文を一時的に休む店もあるなど店舗ごとに対応できる仕組みだ。
アプリによる決済やポイント連動が課題
一日100個の注文受付を目指す
2018年11月に200円割引キャンペーンを実施し、認知度が向上。平墳氏は「ビジネスパーソンが多く、自分のランチ用で低単価の注文を予想していましたが、意外に、企業内での会議や接待用などに高単価の弁当の注文も多いです」と話す。さらなる認知度の向上を図り、「一日100個の注文受付を目指したいです」と平墳氏は意気込む。
今後は、アプリによる決済サービスの導入やポイントカードとの連動など消費者の利便性の向上を図ることで、利用者のすそ野の拡大を目指す。さらに、弁当だけでなく、他の商品についても事前予約・決済の仕組みの導入を検討するほか、大丸東京店でのケースを検証したうえで、サービスを他店へも広げていきたいとしている。