2019年7月19日8:00
TISインテックグループは、2019年7月11日にグループのビジネスイベント「TIS INTEC GROUP BUSINESS SUMMIT 2019」を開催した。当日は決済関連の講演も複数行われたが、「キャッシュレス社会の新インフラ「デジタル口座」の台頭~お金のインターネット化、その先へ~」と題し、TIS デジタルトランスフォーメーション営業企画ユニット エグゼクティブフェロー 舘 康二氏が登壇した内容を紹介する。
ニューマーケットとしてデジタル口座が台頭、給与支払いでも注目に
決済のデジタル化は、2010年のSquareリーダーとアプリケーションの登場後、大きく進展した。中国でも近年、アリババグループが展開するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマー)」やコーヒーチェーンの「瑞幸珈琲(ラッキン・コーヒー)」など、オンラインとオフラインをまたがる顧客体験を提供する企業が登場している。顧客体験そのものが商品・サービスとなり、支払いプロセスもその一部に組み込まれている。情報社会から次の新しい社会に移ろうとする中、現金では支払いの手間がかかるため、「キャッシュレスはデジタル社会の前提条件である」と舘氏は話す。
キャッシュレス市場の動向をみると、富士キメラ総研の調べで、2015年のキャッシュレス比率は18.4%、57兆円の市場となっている。また、企業から個人に支払われる給与が200兆円ある。さらに、個人の銀行口座には1,000兆円あり、家計消費が290兆円となっている。
舘氏は、2025年は130兆円の市場になると予測。銀行口座を起点としたお金の流れからデジタル口座が台頭するとした。レガシー口座の使い勝手を改善しながら、総合的な生活・金融サービスの起点となるという。2025年もネットワークが確立されているクレジットカードが95兆円の市場を占めるが、ニューマーケットとしてデジタル口座も30兆円と台頭する。さらに、デジタル口座の給与払いが解禁されれば、200兆円の市場も大きく動く。
生活サービスをIDとして紐づけ可能に
舘氏は、デジタル口座のメリットとして、①使いたいときにすぐに口座開設できる、②いろいろな口座をIDにして仮想的に使える、③いろいろなデジタルサービスで利用できる、点を挙げた。また、サービス事業者からすると、ローコストであり、接続しやすいメリットがあるそうだ。
デジタル口座は、移動ナビサービス、飲食予約サービス、コンテンツサービス、コミュニケーションサービスなど、さまざまなサービスを紐づけることができる。近年は、中国でプラットフォーマーといわれるプレイヤーが登場し、さまざまな生活サービスをIDとして紐づけている。外部サービス群をデジタル口座と紐づけることで、 ユーザー エクスペリエンスを向上させている。
さらに、ウォレットIDに各サービス事業者のIDやデジタル口座サービスを紐づけることで、誰が、何時、どのサービス、どの口座で、いくら利用したのかといった情報も取得でき、サービスの改善に役立てられる。
Open ID Connect、API連携で接続しやすい環境を整備
TISでは、デジタル決済プラットフォーム「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を提供しており、デジタル口座サービス、ペイメントUX、デジタルリスクマネジメントといったサービスを提供している。また、TISのデータセンター内にプライベートクラウド環境を有しており、国際セキュリティ基準の「PCI DSS」に準拠した環境でサービスを構築している。すでにレガシーな仕組みとは接続されているのが特徴だ。
そのうえで、Open ID Connect、API連携により、FinTechベンチャー、交通事業者、流通事業者、銀行、ノンバンクなどとデジタルで接続しやすい仕組みを整えている。例えば、提携先アプリ内にウォレット機能を組み込むことが可能だ。プラットフォーマー、デジタルサービス事業者、デジタルバンキング、口座提供者/デジタル出店者に対し、APIによりサービスを接続し、デジタル社会にあったサービスを提供できるとした。
舘氏は、“2025年の崖”として、「2025年は社会が大きく変わりますが、ここを乗り越えた方がデジタル社会でも重要なポジションを確立されます」と語り、講演を締めくくった。
デジタル化を支援するQR決済サービス「QR×DRIVE」などを展示
なお、当日は、キャッシュレス決済に関する講演も複数行われた。TISによる講演に加え、ビザ・ワールドワイドや琉球銀行も登壇した。
また、決済関連の展示では、QR決済サービス「QR×DRIVE」を紹介。同社の特徴として、単純な決済端末を提供するサービスに加え、Okage社のテーブルオーダー、自動販売機/ロッカー、交通事業者などと連携でき、企業のデジタル化を支援している。