2019年9月30日8:00
モバイル決済サービス「Origami Pay」を提供するOrigamiは、2019年9月27日に「Origami Conference 2019」を開催し、金融プラットフォーム「Origami Network(オリガミネットワーク)」の始動、データ活用を行う「Origami Technologies(オリガミテクノロジーズ)」のスタート、融資・投資・保険などを提供する「Origami Financial Services」の設立など、新戦略を発表した。
金融プラットフォーム「Origami Network」で決済機能をパッケージ化
当日は、まずOrigami 代表取締役社長 康井義貴氏が登壇。Origamiでは、決済データの提供に加え、ビッグデータの活用に力を入れていくとした。新たに発表した「Origami Network」は、パートナーに対して決済機能の提供、決済データの還元に加え、今後は企業の独自ポイントを利用できる機能や、顧客管理(CRM)機能をオープン化するものだ。
「Origami Network」を採用する企業は、自社の顧客基盤を維持・拡大しながら、消費者データの把握、企業のCRMの活用など、デジタルトランスフォーメーションを推進するためのデータの利活用や、必要に応じた企業間のデータの連携を戦略的に進めることができるとしている。データは提供先の企業とOrigamiで共有する。
企業にとっては、自社で展開する〇〇カードを、〇〇Payに無償でアップデート可能だ。決済テクノロジー、加盟店インフラ、セキュリティ、金融機関の口座接続など、決済機能をパッケージで提供することにより、面倒なカスタマイズを削減でき、従来よりも短期間でサービスの提供が可能となる。
まずはエスパルス、大分フットボールクラブ、大垣共立銀行、カフェ・カンパニー、すかいらーくホールディングス、第一生命保険、東京証券取引所、公益財団法人浜松・浜名湖ツーリズムビューロー、Peach Aviation、FiNC Technologies、フジテレビジョン、ペイミー、マネーフォワード、吉野家などの賛同を得て、企業のデータ利活用を行う。
消費者にとっては、Origamiのサービスと各企業のサービスを統合した形で利用することができるようになり、普段使い慣れた各企業のアプリで、そのまま決済を行うことやお得なクーポンを受け取ることができるようになる。
「Origami Technologies」でDX推進
また、新規事業「Origami Technologies(オリガミテクノロジーズ)」を開始する。AI・IoT・ビックデータなどのデジタル技術やデータ活用することで、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」を目指した取り組みを推進していく。「Origami Network」のパートナー企業との提携に向けた検討等を通じ、データの蓄積・処理・分析など、データの効果的な活用を進めていくことが目的だ。具体的なサービス内容の詳細等は、今後、順次発表する。
消費者目線で付加価値の高いサービスの提供を目指す
Origamiでは、金融機関や加盟店に、消費者目線で付加価値の高いサービス提供を目指しているそうだ。Origami Payの現状として、ヴァリューズによるキャッシュレスサービスのアクティブ率の調査においてOrigami Payのアクティブ率は80%となった。
Origamiでは全国の銀行と連携した取り組みを行っており、中でも信用金庫との連携に力を入れている。信金中央金庫 専務理事 須藤浩氏によると、信用金庫によるOrigami Payの導入加盟店は右肩上がりで、1年で日本のコンビニエンスストアの店舗数6万店舗を上回る7万店舗を獲得している。信用金庫では、自治体との連携や地域イベントなども実施。さらに、口座と直結した「しんきんPay」により、日常に溶け込むキャッシュレス化を目指すとした。
また、地域の金融機関や観光協会と協力し、「地域活性化型キャッシュレス」を進めている。たとえば、Peach Aviation、鹿児島県と協力し、奄美群島を盛り上げる「奄美群島応援団」を発足した。Peachでは、奄美群島のみで使えるOrigami Payのクーポンを客室乗務員などから直接配布。取得したクーポンは、奄美群島でのみ使用可能だ。
消費者へのサービスとして、Origami Payの通常割引3%(クレジットカード連携は1%)に加え、10月からのキャッシュレス・消費者還元事業の5%により、最大8%還元の提供となる。また、加盟店についても、キャッシュレス・消費者還元事業により、10月1日以降の新規加盟店は、決済手数料が0%となるキャンペーンを実施。さらに、キャッシュレス推進協議会が策定した統一QRコードの「JPQR」にもいち早く対応した。
Origami Payでは、クーポンを活用した店舗支援も積極的に展開している。Origami 事業開発ディレクター 伏見槙剛氏は、日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)と2019年2月に実施したキャンペーンの取り組みを紹介。KFC直営の導入店では、キャンペーン期間中、来店客が10%増加し、Origami Payの決済件数も40倍に増加したとした。
不正使用対策としては、2段階認証と端末認証をすることで、消費者側の不正を抑止している。また、Origami自身も24時間365日の不正監視を実施。仮に不正が発生した際、消費者のOrigami Payを全額保証する支払い金額上限を、制度としてより明確化した。
「Origami Wallet」「Origami Card」「Origami Credit」「Origami Insurance」など総合金融サービスプラットフォームが形に・・・
新たな取り組みとして、資金移動業への登録を完了。2019年11月上旬から「Origami Wallet」の提供を開始する。伏見氏は、「Origamiのアプリだけではなく、実用のアプリの中にウォレットや機能を搭載していきます」と話す。
また、新カードとして「Origami Card」の発行の準備にも着手。個人間送金、銀行の入出金に加え、支払いの出口を強化する。
そして、新たにOrigami Financial Servicesを設立。同社では、融資(借りる)、投資(殖やす)、保険(備える)などの新たな金融サービスを、Origami Walletの残高で利用できるようにする。具体的には、後払いを可能にする「Origami Credit」の提供を予定している。同サービスは、消費者が決済した金額を事後に支払うことができる後払いサービスだ。導入に向けては、消費者に安心感をもって利用してもらうことを目指している。また、後払いの与信金額は、Origami Financial Servicesが個別の利用者をスコアリングし、個別に設定する予定だ。まずは、保険の申し込みが可能な「Origami Insurance」をあいおいニッセイ同和損保、第一生命と連携して提供する予定だ。
Origamiでは、2018年9月に開催した「Origami Conference 2018」において、金融サービスプラットフォームをオープン化すると発表し、各種金融サービスの構想を打ち出したが、「Origami Conference 2019」ではその取り組みが具現化し、スタートのフェーズに入ったと言えるだろう。