2019年11月28日8:00
ネットプロテクションズは、後払い決済サービス「NP後払い」のシステム・サービスのアップデートを順次開始すると発表した。これにより、 即時与信、請求・支払いの個別最適化、与信通過率向上、システムの無停止化といったメリットがあるという。
ディープラーニングを含む複数の機械学習技術を導入
1.8億件超の取引情報を与信に活用へ
後払い市場は2018年5,720億円のマーケットから、2023年は2兆円になるというデータもある。国内では2014年以降にPaidy、ZOZO、メルペイなど新たなプレイヤーが増えており、海外でもKlarna、zipといったプレイヤーが登場している。
ネットプロテクションズの「NP後払い」の2018年度年間ユニークユーザー数は日本人の約10人に1人に当たる1,350万人、年間総流通額も2,500億円を突破しており、「社会インフラまで成長しています」と、ネットプロテクションズ マーケティンググループ シニア・プロデューサー 長谷川 智之氏は話す。後払いは、従来のクレジットヒストリーに結び付かず、事業者独自の与信判断でユーザーに信用を付与しているため、クレジットカードを持たない・利用したくない層も利用可能な金融サービスだとした。そのため、他の金融サービスにも応用できるサービスであると同社では考えている。
現在、後払いを取り巻く課題として、ユーザーによる不正利用、加盟店による不正販売が挙げられる。長谷川氏は、「 高精度の与信モデルを構築することにより、不正利用をこれまで以上に精度高く排除しつつ、より多くの利用者・加盟店に対して利便性高く後払い決済を提供していくことを目的 とした取り組みです」と強調した。
今回新たに実現するサービスについて長谷川氏は、①「即時与信実装」、②「請求・支払いの個別最適化」、③「与信通過率向上」、④「システムの無停止化」の4つを挙げた。テクノロジーとデータ活用のアップデートにより、システム処理のみでこれまで以上に正確にデータを捉えられるようになったそうだ。AI活用の強化では、従来の決定木方式はもちろん、ディープラーニングを含む複数の最先端の機械学習技術を導入する。また、データベースをマイクロサービス化し、柔軟な規模対応が可能となった。
データベースの活用では、1.8億件超の取引に含まれる情報のうち、 例えば商品明細情報など、従来は与信に活用できていなかった情報についても活用できる。また、空室情報など、与信時に手動で参照していた外部データについてシステム処理で参照でき、活用する外部情報の量・種類を継続的に増強できる。たとえば、メールアドレス、外部サイトでの利用状況なども参考にできるとしている。
即時与信の対応で即時出荷等に対応
後払い決済初、請求・支払いの個別最適化
4つの機能強化をみると、まずリアルタイムオーソリゼーションの即時与信を実装する。これにより、即時出荷に対応、運用負荷軽減、売上既存リスクの低減といったメリットがある。これまで同社では、「なるべく多くの人に利用してもらう」という与信ポリシーを優先し、「NP後払い」では競合他社が行っているリアルタイム与信を採用してこなかったという。即時与信を採用すると、目視の詳細審査で通過していた取引がNGになる可能性もある。具体的には、95%の取引を5~10分、5%の取引を2時間以内で処理していた。そのため、より即時性が求められるファッションの領域などは他社に流れるケースもあった。アップデートでは、大量のデータを活用し、従来からの与信ポリシーを優先したままシステム処理のみで与信判断を行うことが可能になったため、即時与信の実装を可能とした。
2つめの請求・支払いフローをシステム処理で自動的に個別最適化する取り組みは、 後払い決済では初の試みとなるそうだ。これまでは、一元的な請求・支払いフローだったが、今後は支払い期限や支払い手段などを取引ごとに個別に対応する。同機能は、2020年度以降に順次開始する予定だ。
3つめの、与信通過率向上では、従来NG判断していた取引のなかでもOK判断にできる取引が増えるという。また、ロイヤルカスタマー、予約注文、金額可変といった与信緩和オプションも提供可能だ。
4つめのシステム無停止化では、AWSへのサーバー移行、マイクロサービス化により、99.99%の稼働を目指すとしている。
新システムは、2019年11月からシステム対応加盟店に順次導入する。2020年度には、与信緩和オプション、ロイヤルカスタマーオプション、金額可変オプション、SMS/着信認証を順次標準装備予定だ。さらに、予約注文オプションや請求・支払いの個別最適化などもその後実装していく。
利用には加盟店の実装、ECサイト構築サービス等の開発が必要
次世代与信は今できる最高形と自信を見せる
なお、今回のシステムは、従来のNP後払い加盟店がそのまま利用できるわけではく、システムのアップデートが求められる。現在、一部加盟店が来春に実装予定となっており、EC構築ベンダーやショッピングカートにおいてアップデート版の後払いが利用できるように開発中だ。
今後は、BtoB決済の「NP掛け払い」、会員制のカードレス決済「atone(アトネ)」といったサービスも含め、共通データベースの活用を視野に入れている。
取締役CTO 鈴木 史朗氏は、今回のシステムについて、「18年間のノウハウやナレッジが集まっています」と説明した。即時与信の実施により、短期的には未回収率が増えるという指摘に対し、「実際に、何のガードもなく利用いただく場合には、0.数パーセント程度増えていくというのはありますが、ヘッジできるだろうと見込んでいます」とビジネスアーキテクトグループ シニア・データサイエンティスト 磯部 裕樹氏は話す。
また、代表取締役社長(CEO) 柴田 紳氏は、「何もないところからNP後払いを生み出してきました。次世代与信も、今できる最高形にしたつもりです」と自信を見せた。