2019年12月23日8:00
決済サービスを提供する Paidyは、商品やサービスを購入し、料金の支払いは後にする「BNPL(Buy now, Pay later)」の新しい金融サービスの提供を加速する方針を明らかにした。Paidyは2014年10月にリリースしてから5周年を迎えた。累計177億円の資金調達を実施し、企業価値は605億円に拡大している。同社は、グローバル市場にも挑戦し、代引きをはじめとする社会課題の解決に取り組む方針だ。(ライター 小島清利)
メルアドと携帯電話番号で認証、情報漏れリスク低減
決済サービスPaidyの強みは、使い勝手の良さだという。Paidy契約しているECサイトなどで支払いをする際に、「翌月払い」の支払い方法を選び、メールアドレスと携帯電話番号を入力。スマートフォンのショートメッセージに送られてきた4桁の認証コードを入力するだけで決済ができる。
メールなどに届いた月ごとに合算した買い物金額について、「コンビニ支払い」「銀行振込」「口座振替」のいずれかを選択して支払う。分割払いでも支払い可能。同社によると、ECサイトなどでの買い物をためらう人の多くが、セキュリティ面への懸念を理由に挙げている。クレジットカード情報などの個人情報を必要としないPaidyが必要とされる理由は、セキュリティ情報への配慮にある。
Paidy 代表取締役社長兼CEOの杉江陸氏は「ECでショッピングした際、商品配達の『代引き』は、ユーザーにとっては、荷物受取のために在宅の必要があるうえ、荷物受取り時に⼿持ちのお⾦が必要になる。一方、加盟店にとっても、代引きの受け取り拒否や受取人不在などによる商品キャンセルのリスクがある」と話し、「代引き」に変わる決済として、Paidyをアピールする。
少子高齢化に伴う労働人口の減少と、ECの台頭による消費者の買い物行動の変化に伴い、宅配ドライバー不足は深刻化している。「代引き」については、配達人が荷物を届けたにもかかわらず、受取人が不在だったりすると、再配達を余儀なくされるなど社会的なロスが問題になっている。それにもかかわらず、オンラインショッピングで初回購入者が選択する決済方法は代引きが半数に上るというデータもある。
国内のBNPL決済市場のパイオニア
加盟店にとっては、Paidy導入によって、売上アップやエンゲージメントの向上、効率化のメリットが期待できるという。クレジットカードを持っていない買い物客などの潜在的な新規顧客層を開拓したり、既存顧客のリピート率向上に寄与するなどの効果が期待できるからだ。返品率の低下などの業務改善も期待できる。
また、Amazonの支払い方法の1つとして、「Paidy翌月払い」の利用が可能となった。Amazonでは、Paidyの導入効果で、オペレーションの改善を目指しているという。
その1 つが、「代引き」の問題だ。「代引き」は、買い物客側や運送側の非効率性の問題だけでなく、Amazonにとっても、在庫管理や返金対応などの業務負担が大きい。もう1つは「Amazonギフト券」が抱える非効率性の問題だ。カード型のギフト券を発行してコンビニで販売するという流通方法がコスト高になる。
Paidyは、国内のBNPL決済市場のパイオニアであり、今のところ、国内市場には有力な競争相手はいないという。BNPLの国内市場はまだ、立ち上がったばかりだが、海外ではさまざまな新サービスがひしめく競争市場に成長している。
台湾を足掛かりにグローバル市場見据える
杉江氏は、「GDP第3位の日本だからこそ、グローバルなBNPL市場でも勝っちあがっていく必要がある」とさらなる成長へ向けた戦略を描く。現在は、Paidyオンライン決済の提供により数百万以上の顧客基盤を形成するなど、規模の大きさを追求している段階だ。
今後は、オフライン決済手段のPaidyに乗り出し。買い物客の中には、店頭での決済にまだ現金を使うケースは多い。Paidyのオフライン決済を使ってもらうことで、買い物シーンで身近な存在を目指す。
さらに、さまざまな新しい形でのBNPL決済サービスをリリースしたり、新しい金融・決済サービスを提供することで、他サービスとの差別化を強める。続いて、グローバル市場への本格進出を目指す。すでに、6月に台湾の後払い決済サービスの運営会社を買収しており、台湾を足掛かりに、アジアやその他地域でのサービス展開を目指す。