コロナ禍におけるトランザクションレンディングのニーズは?(住信SBIネット銀行)

2020年10月13日8:00

住信SBIネット銀行は、2020年10月7日、トランザクションレンディングに関する記者向けのオンライン勉強会を開催した。当日は、住信SBIネット銀行 ファイナンス事業部長 柴田直良氏が同社の取り組みとコロナ禍におけるニーズについて紹介した。

データで見るWithコロナ禍の中小企業の状況

住信SBIネット銀行は、2016年10月から、トランザクション・レンディング事業に参入した。2018年8月には、トランザクションレンディンサービス「レンディング・ワン」(現商品名:dayta)を、法人口座の利用状況に応じて借入条件(借入可能額および借入利率)を毎月通知するサービスとして取り扱っている。

住信SBIネット銀行 ファイナンス事業部長 柴田直良氏

住信SBIネット銀行では、2016年10月のレンディング事業開始と同時に、クレジットカードの加盟店管理業務(アクワイアリング事業)にも参入している。飲食店のクレジットカードの売上高の推移を、2019年10月を100にした場合、状況がどうなっているのかを集計したが、緊急事態宣言が出た時には、20%近くまで売上高が落ちており、6月~8月の直近の3カ月は60%にとどまっており、厳しい状況が続いている。ただ、コロナの感染者が少ない岩手県に関しては100%以上に回復しているそうだ。

クレジットカードの決済はBtoBの商取引でも使われているが、東京、愛知・名古屋、阪神、福岡、北海道といった大都市を中心に集計したとき、2019年10月からの推移をみるとほぼ落ち込んでいない状況だ。

 

一方で、IT系の企業は追い風になっており、情報通信業の法人口座を同様に見てみると基本的には右肩上がりのトレンドが見て取れる。

 

AIの与信モデルが入出金状況を判断、申込から最短1時間で着金実績も

トランザクションレンディンサービス「dayta」の特徴として、AIの与信モデルが入出金状況を判断し、借入額や貸出利率を判断している。インターネットネットバンキング画面上で借入条件を毎月通知しており、すでに借り入れ条件を通知している企業は融資のお申し込みに関して、書類の提出、面談は不要になる。インターネットで申し込みが完結するため、最短でその日に融資金の着金を受けられる。融資の商品体系として、期間は最大1年までの短期の運転資金の貸し付けとなる。

「dayta」の商品性(住信SBIネット銀行)

借り入れ条件は毎月知らせており、①メール、②ログイン後ホーム画面、③ログイン後メッセージボックスの重要なお知らせ、の3つとなる。利用者は、ログインすると、借入条件を確認することができる。借入れを希望する企業は、「返済回数」「借入希望額」「借入希望日」を入力し、「借入申込へ」ボタンを押下する。押下してから最短当日の融資が可能だが、過去の実績として、押下してから1時間で融資した実績もあるそうだ。

コロナ禍の状況として、日本政策金融公庫や信用保証協会の融資実績を踏まえると、借りられない状況にいる中小企業はかなり少ないという。ただし、数十社の税理士法人にヒアリングすると、既存の借り入れで対応できないニーズがあることが分かったそうだ。たとえば、創業期の借り入れではかなりの確率で融資を受けることができる。一方で2回目の借り入れの条件でつまずくケースが多く、そこにトランザクションレンディングがマッチすると考えた。法人によっては、事業計画よりも速いペースで成長すれば設備資金等のニーズがある。過去の事例などをみても創業期から成長期への融資で成功した例もあるが、そこを超えて、安定期、成長期に入ると、大手や地方銀行等の融資に切り替えた例もある。

つなぎ資金、成長に向けた資金のニーズも

住信SBIネット銀行の顧客基盤をみると約5割が創業期法人だ。創業期法人を中心に想定したdaytaのプロダクトポジションは変わらないが、新型コロナウィルスが発生したことにより、新たな資金需要が発生している。政府系金融機関は融資実行までの時間がかかるため、つなぎ資金として需要に加え、IT産業など、成長の追い風になった業種からのニーズもあったという。

今後は、売り上げ回復に伴う資金ニーズがあるとした。政府系金融機関からの融資額にも限りがあるため、追加の資金として一定の需要がある。また、売り上げが上向いてくると一時的に仕入れの増強をしていく必要がある。さらに、固定費削減のために店舗閉鎖(解約)するための原状回復費としての利用もニーズとしてあるとした。

柴田氏は、トランザクションレンディングのニーズは当面継続的に発生するとみている。法人の設立は景気動向に左右されず、年間12万社の新しい法人が出ているため、そこのニーズは変わらない。また、今回のコロナ禍のような事態が今後また起こる可能性もあるため、トランザクションレンディングで急場をしのいだり、売り上げ回復のための資金ニーズ、固定費削減のためのニーズが考えられるとした。

クレジットカード加盟店データ活用のレンディングについての見解は?

なお、現状は銀行口座の利用状況をベースにトランザクションレンディングをベースに事業を展開しているが、クレジットカードの利用状況をベースにした展開については課題があると考えているそうだ。例えば、クレジットカード決済代行サービスを展開するゼウス加盟店向けに、日々の決済データ(トランザクションデータ)から融資審査を行うトランザクションレンディング「レンディング・ワン」を展開していたが、すでにサービスを終了している。

住信SBIネット銀行でもクレジットカードのアクワイアリングを展開しているが、現状、クレジットカード売上の一部分のみを見ての与信判断が難しく、「事業規模が見えないので最適な運転資金の提示はできない」と柴田氏は見解を述べる。クレジットカード決済は毎年成長しているとは言いつつも、国内の民間最終消費支出は現金が7割を占め、QRコード決済が新たに加わる状況の中、クレジットカード決済の売り上げ状況だけで与信を判断することはまだ難しいとした。

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