伊豆の観光型MaaS「Izuko」のエリアが拡大、交通や観光の予約・決済・利用がスマホ1台で可能

2020年11月30日8:48

東急、JR東日本、伊豆急行は、伊豆半島で2019年4月から実施している観光型MaaS「Izuko」の実証実験「Phase3」を2020年11月16日~2021年3月31日まで行っている。11月27日には、同実証実験をメディアに公開し、記者が体験した。

東急 交通インフラ担当 戦略企画グループ MaaS戦略担当 主事 古西伸崇氏

スマホで事前に交通・飲食・観光施設チケットが購入可能

Izukoは、鉄道、バス、AI オンデマンド乗合交通、レンタカー、レンタサイクルといった交通機関を、スマートフォンで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動することを目指した2次交通統合型サービス「観光型MaaS」の実証実験だ。

Phase3のIzuko実証実験では、Phase2まで対象エリアだった東伊豆、中伊豆エリアに加え、西伊豆も対象となった。また、伊豆だけではなく、静岡県中部地方の静岡市エリア、富士山静岡空港まで拡大している。メディア体験会の取材対象エリアは、下田エリア、伊豆高原エリア、中伊豆エリアを選べたが、記者はオンデマンド交通を体験できる下田エリアを選択した。

Izukoは、会員登録が必要となるが、スマートフォンのWebブラウザで利用できる。また、交通チケット、観光体験チケット、飲食チケット、観光施設チケットは事前に購入可能だ。Phase2までは当日購入に限られていたが、Phase3からは期間中に購入したチケットを好きなタイミングで使えるようにしている。記者は、東急から渡されたモデルルートを参考に、交通チケット、飲食チケット、観光施設チケットを購入した。

Phase3から楽天ペイ、Suicaの決済を追加

購入方法は、Izukoのサイトから会員情報を登録して、各アクティビティチケットをそれぞれ予約する。支払い手段は、クレジットカード、楽天ペイ(オンライン決済)、モバイルSuicaネット決済を選択できる。Phase2まではクレジットカード決済のみだったが、「利用者が使いたい支払い手段の上位となった楽天ペイとモバイルSuicaを加えました。PayPayも利用したい手段の上位に挙がりましたが、今回はシステムの関係で見送りました」と、東急 交通インフラ担当 戦略企画グループ MaaS戦略担当 主事 古西伸崇氏は説明する。なお、オンライン決済サービスは、ソニーペイメントサービスの「e-SCOTT」を使用している。

Izukoは、JR東日本企画の電子チケットサービス「wallabee」をカスタマイズして使用している。Phase2では、利用者のスマートフォンのブラウザに、施設などが電子スタンプを押印して電子チケットを認証する仕組みを採用していたが、今回は利用者が購入後、利用施設で画面を自らスライドさせて有効化することで利用できる仕組みとなっている。

熱海駅・来宮駅・伊東駅ではQRコードをかざしての入出場が可能に

当日はまず交通チケット「ひがしIzuko」で熱海駅から伊豆急下田駅まで移動した。通常、同区間は往復3,960円(片道1980円)だが、2日間利用できて3,800円とお得に乗車できる。Izukoは、改札で駅員に画面を見せることで利用できるが、Phase3では、熱海駅・来宮駅・伊東駅において、JR東日本で初めてQRコードでの改札入出場ができる仕組みを導入している。3駅では、乗車のピークタイムに改札が混雑する可能性があるためQRコードの入場を実施しているが、従来通り駅員に見せる形での改札通過も可能だ。

オンデマンド交通「Izuko くろふね号」を予約して目的スポットへ

伊豆急下田駅についてからは、オンデマンド交通「Izuko くろふね号」で移動が可能だ。17カ所ある各停留所には「ひがしIzuko」を購入していれば、2日間繰り返し乗車できる。利用者は、乗る場所、降りる場所を指定して予約すると、車が到着する目安の時間が表示される。短距離の移動にも対応しており、ほかの乗客との乗り合いとなる。

伊豆を楽しめる独自の観光、飲食チケットを提供

記者は、まず予約していた「豆州庵で静岡の地酒3種を飲み比べ」に向かった。豆州庵では、静岡県の地酒をはじめとした、日本酒・焼酎・和リキュールなどを取り揃えている。その中から、勧められた3つのお酒を飲み比べた。利用者は、30分単位で飲み比べを予約・利用することが可能だ。東急によると、豆州庵で普段は提供していない飲み比べが700円で楽しめる、Izukoオリジナルメニューであるそうだ。

次いで、「下田漁港見学&開国厨房なみなみ『金目鯛のしゃぶしゃぶ』」(2,500円)を体験した。利用者は、一般の人が通常入ることができない下田港を見学し、金目鯛についてレクチャーを受けることができる。また、水揚げされた中から自身が調理してもらう金目鯛を一匹選ぶことができる。記者は開国厨房なみなみで「金目鯛のしゃぶしゃぶ」を味わったが、ほかには「金目鯛の煮付け・金目丼」、「金目鯛の煮付け・お刺身」があり、計3つのメニューから好きな料理を選択可能だ。

飲食メニューでは、道の駅「開国下田みなと」にあるカフェ&ハンバーガー ラーマルの「下田バーガー」のチケットを購入した。金目鯛のフライを挟んだバーガーだが、かなりのボリュームだったため、持ち帰りを選択した。

Izukoでは、下田ロープウェイ往復乗車チケット、下田港内巡り・遊覧船乗船チケット、下田開国博物館入館チケット、下田海中水族館 ドルフィンビーチ体験などの観光チケットも購入できる。

観光商品のメニュー数が125種類に拡大

Izukoの実証実験は、2019年4月1日~6月30日まで「Phase1」、2019年12月1日~2020年3月10日まで「Phase2」として実施してきた。Phase2では、Phase1の約5倍となる、5,121枚のデジタルチケットを販売した。両実証実験を通じて、定量目標「ダウンロード2万件、デジタルパス類販売1万枚」を掲げたが、ダウンロード2万件はPhase1で達成し、販売枚数は合計6,166枚となった。現在、全国各地でMaaSの実証実験が展開されているが、圧倒的な利用規模だとしている。UI(ユーザーインターフェース)の課題もフェーズを重ねるごとに改善されているそうだ。

IzukoのPhase3では、観光商品のメニュー数を125種類に増やし、うち35メニューでは伊豆ならではの体験を用意している。また、施設などでクーポンを取得すると、割引コードが適用される。古西氏は「今回もデジタルチケットの販売数1万枚を目指しています」と話す。特に20代、30代の若い女性に使用してもらいたいとしており、東京・代官山でのプロモーション、雑誌での告知などを行っている。

今回は、日本語に加え、英語対応を実施。現状は新型コロナウィルス感染拡大の中、国内利用者が圧倒的に多いが、富士山静岡空港や静岡市エリアへの対応もPhase3から行っているため、繁体字に対応することで、富士山静岡空港から訪れる中国人観光客の利用も見込めると、東急では期待する。なお、Phase3で実証実験は終了し、実験後は商用化のフェーズに入る予定だ。

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