2020年12月3日7:20
アクルは、オンラインでのクレジットカード不正利用対策の各種ソリューションを展開している。同社サービスの各種統計から、クレジットカードを主とするオンライン決済・キャッシュレス決済におけるセキュリティソリューションに対するニーズの拡大の実態と、不正な決済取引に対し新型コロナウイルスの感染拡大が与えた影響について、分析と考察を公表した。
経済産業省は、2020年に向け、国際水準のクレジットカード取引のセキュリティ環境の実現を目標に掲げ、クレジットカード取引に関わる幅広い事業者及び行政が参画した「クレジット取引セキュリティ対策協議会」を2015 年 3 月に設立し、毎年ごとに実行計画を策定し取り組みを推進してきた。しかし、電子商取引の拡大、キャッシュレス決済の推進などの情勢を背景に、クレジットカード取引における不正利用、およびその被害は拡大傾向にある。中でも、オンライン決済におけるクレジットカード不正利用の被害は2012年以降、継続的に増加傾向にある。
日本クレジット協会の発表によると、2019年被害金額を示す番号盗用、およびその他の被害による金額は約256億円にのぼる。2020年も同様に高い水準のまま推移しており、被害金額は第1、第2四半期ともに50億円前後の被害金額となっている。
アクルではECサイト運営事業者向けに、クレジットカード決済における不正対策ソリューションを提供している。調査の1点目は、同社WEBサイトへの問い合わせによる相談案件の件数推移を紹介。提携先パートナー企業数が増加したことも要因の1つではあるものの、ECサイトを運営する事業者から同社への相談案件が増加傾向であることから、年々、ECにおけるセキュリティ対策(チャージバック)に課題を抱えるケースが増加傾向にあるとした。
2019年の第3四半期における問い合わせ件数を1とした時の問い合わせ件数比率の推移を示している。2020年の第3四半期における問い合わせ件数は、昨年同時期と比較し、355%となった。この推移から、クレジットカード不正利用対策を検討するEC事業者が増加していることがわかる。
同社は、EC事業者を対象にクレジットカード決済における不正対策ソリューションASUKAを提供している。このASUKAが導入されているECサイトにおける、取引のスクリーニング処理件数を集計した。
2020年の4月以降、同社サービスを利用するECサイト数が増加し、スクリーニングされた決済取引件数が急激に増加している。2019年9月と、翌年同時期にあたる2020年9月とを比較すると、昨年同時期対比で500%を超える件数の決済取引が同社システムによるスクリーニング処理が実施されている。
カード決済におけるセキュリティツール利用のニーズが増加傾向にあること、その背景として、2020年を迎えてから、クレジットカード不正利用対策ツールの利用サイト数の増加スピードも加速していることが伺えるとした。
アクルでは、前段の同社への不正対策ソリューション問い合わせ案件をさらに詳細分析した。同社に対してカード不正対策の相談を行った事業者の業種、加えて、ECサイト運営の場合は取り扱い商材を調査しカテゴリ分けを行った。特に目立つのは、ファッション・コスメを取り扱うEC運営事業者からの問い合わせ件数の増加だ。2020年の第3四半期には件数が大きく増加していることがわかった。
同社で提供するカード不正対策ソリューションのうち、不正を低減するASUKAを利用するECサイトの業種ごとの比率調査を実施している。
下記のグラフは同社のクレジットカード不正対策ソリューションASUKAの利用加盟店、取扱商材の推移だ。大きく、物販(一般商材とファッション・コスメに分別)、旅行商材、その他(WEBサービスや無形商材、CtoCプラットフォームなど)のカテゴリに分類しています。ECサイト数の累計を四半期ごとに集計した数値となる。
2019年第3四半期におけるファッション・コスメ取扱のECサイト数を1とした場合の比較ですが、翌年同時期にあたる2020年第3四半期のECサイト数は1000%以上の増加が見られる。2020年に入り、ファッションやコスメといった物販ECサイトでのASUKA利用が増加し、一方の旅行商材取り扱いのサイト数の増加は、他の業種と比べて横這いであることがわかった。
また、月次の推移より、ECサイト運営各社が同社サービスを導入したタイミングと、新型コロナウイルスに関連する各種ニュースを時系列で比較した図が以下になる。
下記は、取扱商材ごとのASUKA利用ECサイト数の月次の推移と、新型コロナウイルス感染症に関する主なニュースとの関連を時系列にまとめている。新型コロナウイルスの存在が広く認知されたクルーズ船内での新型ウイルスの感染拡大は大きなニュースとなりました。この頃から、海外渡航のキャンセル増加が相次ぎ、日本へのインバウンド観光客数も大幅に減少する。こうした背景の中、同社ASUKAは従前より旅行商材を取り扱うECサイト向けをメインとして提供をしてきたものの、ファッション・アパレルを取り扱うEC事業者からの相談件数も増加し、利用開始される件数も非常に増加した。
新型コロナウイルスの拡大により、これまで旅行商材をターゲットに不正購入を繰り返していた犯罪集団のターゲットが、ファッションやコスメの領域にシフトした可能性が伺えるグラフだ。
これらの調査より、①クレジットカード不正対策ツールを導入するECサイトが増加傾向にある、②中でも、複数あるECのカテゴリのうち、2020年4月以降、ファッション・アパレル商材を扱うECサイトの不正対策ツール導入の増加が顕著、③同社への問合せ件数の増加から、EC業界におけるセキュリティサービスへの関心の高まり、という事実が挙げられるとした。
また、これらの事実関係の背景として、新型コロナウイルスの拡大が社会に与えた影響として、①新型コロナウイルスの拡大を受け経済的不安が蔓延したことによる軽犯罪の増加、②クレジットカード不正利用を通じ旅行商材の転売により利益を得ていた犯罪者が、転売機会の減少を受け、ファッション・コスメを扱うECサイトへとターゲットを変遷させた、としている。