2022年3月1日8:05
アララとバリューデザインは6月に経営統合し、年間決済取扱高約1兆円、導入店舗数約10 万店舗の国内最大のハウス電子マネーシステム提供企業が誕生する。キャッシュレス決済が加速度的に普及していく中で、小売店舗のデジタルトランスフォーメーション(DX)は大きな課題となっている。両社の持つ技術とリソースを融合し、キャッシュレスを軸とした店舗に経営革新を促す新たなソリューションの提供を目指す。統合協議を担当するアララキャッシュレス事業部 事業部長 楠木康弘氏と、バリューデザイン常務取締役 林秀治氏が、経営統合で仕掛ける新戦略について語った。(カード決済&リテールサービスの強化書2022【PR】)
経営統合で生まれる3 つの効果
国内のプリペイド決済市場が2025 年には約20 兆円まで成長するとの予測がある中、多様なキャッシュレスサービスが台頭し、業界の垣根を超えた競争が激化しつつある。そのような中、2022 年1月14 日、ハウス電子マネーを展開するアララとバリューデザインの両社が経営統合に踏み切ると発表した。
「ハウス電子マネーや地域通貨は今よりもっと生活者に寄り添った独自のポジションを得ることになる」
ほぼすべての決済がキャッシュレスになる未来の世界を見据え、アララ 代表取締役社長 岩井陽介氏と、バリューデザイン代表取締役社長 尾上徹氏が描く理想像は一致している。この独自のポジションを確立し、両社が掲げるビジョンを実現するための第一歩が今回の経営統合だ。
経営統合による効果は大きく3 つある。1つ目は、「ハウス電子マネーシステム提供ナンバーワンプレイヤーの誕生」だ。統合の実現により、まず、両社で決済額約1 兆円、導入店舗数約10万店という、ハウス電子マネーにおいて圧倒的なシェアを持つナンバーワンプレイヤーになり、巨大な顧客基盤を活かしたサービスの展開が可能となる。楠木氏は「キャッシュレス決済自体を普及させ、電子ギフトや地域通貨へつなげていくことができます」と構想を述べた。
2 つ目は、「スケールメリットを活かした連携」だ。例えば、携帯電話の大手通信事業者グループが展開する汎用QR コード決済サービスの昨年度の決済額は約3兆円。統合会社の持つ決済額約1 兆円のスケールは、他の汎用的なキャッシュレス決済サービスと比較しても遜色のない規模だ。両社の顧客基盤を活かし、他のキャッシュレス決済サービスとの連携を模索していく。
3 つ目は、「リソース、ノウハウの共有」だ。両社のリソースを共有し、効率化を図ることで、統合効果はより膨らむ。例えば、ハウス電子マネーのシステム共同センター化で、運用効率の向上やサーバ費用などのコストダウンが可能になる。両社のそれぞれのノウハウを活かし、ハウス電子マネーの収益力の強化や顧客店舗のDX 化支援も単体でやるよりも良いサービス提供ができる。例えば、バリューデザインで注力している、さまざまな業態・規模の企業に対して顧客の会員獲得や利用率向上などのカスタマーサクセスをアララの顧客にも展開することで、より手厚いサポートが実現でき、ハウス電子マネーの収益力の底上げを図ることができる。
低い手数料率だけではない!
更なるメリット「キャッシュフロー改善」
両社が扱うハウス電子マネーの特長は、導入企業が発行主体となり、外部の複数のシステムを経由しないため、決済手数料を1%以下に抑えられるなどコストダウンが可能なことだ。アララの楠木氏は「クレジットカードや汎用QR コード決済のサービスは、さまざまな事業者を経由し、広告・ポイント費用を負担しているため、クレジットで2.7% ~ 3.25%、汎用QR コード決済で1.6% ~ 2.5% と決済手数料が高額になりがちで、利益率が低い店舗経営には負担が重すぎます。コストを抑えてキャッシュレス決済手段の導入を検討する店舗からは、その店舗でのみ利用可能な決済手段であるハウス電子マネーの導入に関する相談が増えています」と話す。
さらに、導入店舗にとっては、キャッシュフローの改善効果が期待できる。クレジットカードや汎用QR コード決済は、売上金が後払いなので、店舗のキャッシュレス化が進み、クレジットやQR コードによる決済が多くなれば、キャッシュフローが悪化してしまうというデメリットがある。これに対し、ハウス電子マネーはプリペイド(前払い)形式で、チャージ金は発行体となる店舗の前受金として会計処理されるので、キャッシュフローは現金支払いよりも改善する。バリューデザインの林氏は「ハウス電子マネーを導入している経営者層には、決済手数料の削減という損益計算書(PL)に対するインパクトよりも、キャッシュフロー改善というバランスシート(BS)へのインパクトのほうがより好まれています」と説明する。
また、再来店を促す自由で効率的なキャンペーンを展開できることも魅力だ。クレジットカードや汎用QR コード決済のキャンペーンは、決済事業者が主導で、付与したポイントは大手チェーン店で使われることも多く、インセンティブが外部に流出しやすい。一方、ハウス電子マネーは、決済事業者に依存することなく店舗が自由にキャンペーンを企画することができる。付与したインセンティブは全て、後日の自店舗の売上高として還流する。ある地方スーパーマーケットでは売り上げの半数以上がハウス電子マネーになるなど好評だ。
汎用的な決済は利便性が特徴で、一見客や不定期に利用する買い物客など新しい顧客の獲得に効果的だ。これに対し、ハウス電子マネーはライトユーザー、ヘビーユーザー、ロイヤルカスタマーと顧客のステイタスに応じたロイヤリティプログラムを提供し、顧客の囲い込みや育成による利用の拡大を実現することができる。林氏は「キャッシュレスと連携し、効果的なロイヤリティプログラムを構築すれば、ポイントやクーポン運用コストを削減することが可能です」とメリットを述べる。
また、アララは全国158 万カ所で利用できるNTT ドコモが運営する決済プラットフォーム「iD」と連携し、チャージしたハウス電子マネーをiD 加盟店でも使えるサービスを展開する予定だ。ロイヤルカスタマーを獲得し、囲い込めるというハウス電子マネーの強みに加え、店外・大手チェーンでも使えるという買い物客へのメリットを提供するのが狙いだ。楠木氏は「顧客店舗にとっては、店外でキャッシュレスを使ってもらうことによって手数料の一部が収入として入るメリットもあります。得意客がiD 加盟店でどういう買い物行動をとったかという情報をもとに、効果的なキャンペーンを企画するなどマーケティング戦略にも活用できるでしょう」と導入効果を説明する。
店舗DXをはじめ、カスタマーサクセスの
実現に向けお客様に寄り添う
バリューデザインは、ハウス電子マネー事業と、国際ブランドによる汎用プリペイドを展開するブランドプリペイド事業を持つ。国内のハウス電子マネーの黎明期から市場を開拓・拡大してきた業界のパイオニアだ。全国各地で豊富な導入実績を持ち、販促施策成功へ向けたサポートを専門のコンサルティング部門が実施し、改善・追加施策の提案などにより、アップセルへと導くことも可能だ。
林氏は「カスタマーサクセスの実現を大事にしています。システムを提供するのは当社であり、どのようなサービスを届けるかを考えるのはお客様という役割分担ですが、どのようなシステムを使うかよりも、どういうサービスを提供するのか、の方が成否を分けます。ベンダーとクライアントのような線引きをせず、お客様に寄り添って、一緒に考えて、提案します。キャンペーンの実績を分析し、次のキャンペーンの内容を提案するなど、PDCAにも参加させていただきます」と話す。同社のハウス電子マネー「Value Card(バリューカードASP サービス)」は、プロントコーポレーションのプロント公式アプリや、キャメル珈琲の「カルディカード」、コーナン商事の「コーナンPay」、神田明神アプリ『EDOCCO倶楽部』など導入事例が800 を超える。
バリューデザインは、ハウス電子マネーに加え、その決済データや会員基盤を活用したデジタルマーケティング・販促DX 支援を提唱し、ハウス電子マネー機能を搭載した店舗オリジナルアプリ「Value Wallet」、主要なQR等のコード決済サービスへの接続に対応する「Value Gateway」、メールやSNS などを通じてデジタル残高をギフトとして贈ることができる「Value Gift」、ハウス電子マネーの利用状況の分析と導入効果を高めることに特化した、SaaS 型の顧客分析ツール「Value Insight」を展開している。
中でも、「Value Gateway」は、アララにはないサービスであり、統合効果を最も発揮するサービスのひとつと見られている。統合会社が目指す姿の一つに「キャッシュレスハブ」がある。例えば「Value Gateway」を一本化された接続先とすることで、顧客は導入コストを抑えながら様々な販促・決済・その他金融サービス、業務改善サービスなどの店舗のDX・経営改革を促すサービスを「キャッシュレスハブ」を通じて導入することができる。
一方で、アララの強みはキャッシュレスとそれ以外のテクノロジーを持っていることだ。高速配信でリアルタイムなコミュニケーションが可能な「メッセージング」やデータ管理で安心・安全な世界の実現を目指す「データセキュリティサービス」のほか、AR サービスやブロックチェーン、QR コード関連サービスなど最新のテクノロジーを活かしたマーケティングを支援することができる。林氏は「経営統合後は、バリューデザインがキャッシュレスサービスを担当しますが、バリューデザインの顧客企業にとっても、アララのキャッシュレス以外のソリューションは魅力的であることは間違いないでしょう」と話す。
楠木氏は「ハウス電子マネーは、少額・日常生活での利用がメインであり、スーパー、ドラッグストア、飲食店などを中心に広がってきています。しかし、日本国内のキャッシュレス比率はまだ3割に過ぎず、日常生活において現金を使うのが当たり前だと思っている市場は7割も残っています。アララとバリューデザインのシナジーを足し算ではなく、掛け算で生み出していくことで、統合会社は市場の成長率を上回り、2倍、3倍に事業を拡大させることが可能であると確信しています」と話している。
■お問い合わせ先
アララ株式会社
TEL:03-5414-3611
https://www.pointplus.jp/
https://www.pointplus.jp/contact/
株式会社バリューデザイン
TEL:03-5542-0088
https://www.valuedesign.jp/
https://www.valuedesign.jp/form/contact/