2011年2月10日8:00
アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(2)
消費者支出を促すもの
今後10年間、経済危機から回復する中で、世界経済はかつてないほどの課題と好機に直面するだろう。今後の展開を予測するには、まず今日の消費者行動を形づくる主要素を理解しなければならない。
Turbulent Teens
(問題山積みの2010-2020年)
世界経済が2007-2009年の経済恐慌から回復する中で、2010年代は、ブランド、企業、そして消費者にとって動乱の時代となるだろう。人口統計の変化、資源の不足、都会化の進行が消費者のライフスタイル、考え方や行動を大きく変化させていく。
日本の消費者はラグジュアリー消費を好むことで有名だが、その傾向も変化し、日本の消費者の50%が1年前と比較して価格に敏感になったと答えている。ほぼ同じ割合の消費者(42%)が世界的な不況が自分の支出に影響を及ぼしていると答え、36%は規律のある支出を心がけるようになったと言っている。
「失業率は4.5%だと発表されているが、実際の数字は9%に近い」と有力ファッションブログ『東京ファッションデイリー』の創始
者、ティモシー・シェピス氏は述べている。
「高い失業率と停滞する賃金のため、人々には高級品を購入する余裕はなく、質が良く、価格も手軽なブランドへと向かっている」
トップ5:消費者行動に影響を与える経済要因
・世界同時不況 (42%)
・国内で高まりつつある倹約の傾向 (36%)
・燃料費の値上がり (35%)
・ポイントプログラムや特典プログラム (34%)
・増税(例:固定資産税、所得税、消費税など)(34%)
Digital Planet
(デジタル領域のさらなる進化)
今後10年間で、かつてないほどの技術革新がみられるだろう。2010年3月に、BBCワールドサービスが世界26カ国で実施した調査によると、約5人に4人がインターネットへのアクセスは基本的権利だと考えている。現在、世界中の人々が今や、自分の時間の22%をブログやSNS サイトに費やしている(2010年6月、ニールセン調べ)。例えば、2010年7月にメンバー数が5億人に達したFacebookを1つの国とすると、世界で3番目に人口が多い国となる。この「常にオンライン」状態の社会は、商品や情報へのより早いアクセスなど、新たなつながりを発展させながら、われわれの消費行動や交流に多くの影響を与えている。
長年にわたり技術の分野において世界をリードしてきた日本では、インターネットが必要不可欠なものであるという見方がさらに高まっている。この傾向は調査を実施した他の5カ国と比べても高い。消費者の38%が生活必需品を購入する際にオンラインでできることを求めており、30%はインターネットへのアクセスは生活の質の重要な部分であると言っている。さらに、日本の消費者の40%がオンラインで以前より多くの商品を購入するようになったと答え、45%は場所を問わずにインターネットにアクセスできることで購買習慣が変わったと言っている。オンラインの売上は小売業全体の5%に過ぎないが、携帯電話向けインターネットサービスがeコマースに本格的に参入することで、この数字が今後5年で倍増することは確実だろう、とマッキンゼー・アンド・カンパニーは報告している(2010年3月)。現在、オンラインショッピングの20%以上は携帯電話を利用していると報告されており、今後さらに急増することは間違いないと見られている。
市場動向コンサルタントのシースカウト・ジャパン最高執行責任者、マイケル・ケファール氏は「日本は真の携帯電話社会だ。日本人にとって、インターネットとは携帯電話を意味している」と述べている。
Health Wealth
(健康コンシャスな傾向)
日本は世界一平均寿命が長い国である。CIA によると出生時における平均寿命は82.12歳(2010年)、また総務省によると80歳以上の国民の数は800万人を超えている(2010年9月)。さらには少子化が進み、人口の急速な減少と高齢化を引き起こしている。総務省によると、65歳以上が人口のほぼ4分の1(23%)を占めており(2010年10月)、国連はこの割合は2020年までに28.5%に増加すると2008年の時点で予測している。さらに厚生労働省によると、日本の人口は2009年には7万5,000人減少したと推定され、マイナス幅は前年の1.46倍である(2010年1月)。このような人口構成の変化はすっかり定着し、日本のデフレ、労働力不足や経済停滞の原因として挙げられている。
「今後さらに多くの若者が結婚せずにいると、出生率の低下も改善されない」と中央大学の山田教授は述べる。
「日本の結婚危機は、人口減少の主要因である。2005年では、30-34歳の男性の未婚率は47.1%、女性では32%。対照的に、1975年における未婚率は男性で14.3%、女性で7.7%だった」
高齢化が進む中では意外ではないが、日本の消費者の66%が人生で最も重要なことは健康だと答えている。調査を行った6カ国の中で、健康が最優先だとしたのは、日本だけだった。さらに、日本の消費者の40%が、いま最も関心があるのは健康だと答えている。日本の人口構成が変わりゆく中で、健康関連の産業だけは引き続き恩恵を受けるだろう。
トップ5:65歳以上の人が人生で優先する事
・健康 (85%)
・家族と過ごす時間 (52%)
・パートナーと過ごす時間 (34%)
・文化的な知識 (33%)
・友達と過ごす時間 (25%)
Prohibition Culture
(抑制文化)
各国は、不況や環境の悪化に対処するために、かつては自由な行動またはあたりまえの権利だと考えられていたことを抑制してきた。今後10年間で、政府は厳しく、また論争を巻き起こしそうな決断を迫られることになるだろう。そしてその決断は、必然的に個人の消費傾向にも影響を及ぼすことになる。このような社会的変化に求められるのは、政府、組織、そして個人が同じ目的と社会的意識のもとで協力し合うことだ。
エコポイントなど、環境に配慮した行動に報酬を与え、消費者の支出を促す日本政府の環境政策の評判は上々である。日本の消費者の38%が、エコポイントの導入で支出態度が変わったと言っている。日本で影響力のあるシニア層は特にこの点に敏感で、企業に対して責任ある態度を求める人が57%、環境に優しくあってほしいと期待する人が36%。それに対して安いものがよいと答えた人は31%だった。
トップ3:現代の消費者に影響を与える環境および倫理的要因
・環境に優しい行動に対する特典制度の増加(リサイクルすることでクーポンやポイントを取得できるプログラム、その他、エコポイントなど)(37.6%)
・再生可能な製品や環境に優しい製品が購入できること(34.0%)
・地元で製造された製品や地元が原産の製品が購入できること (30.5%)