2011年2月16日7:00
アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(7)
Eco-sumer
(エコフレンドリー)
消費者は、環境問題と倫理的な課題を身近な問題として位置付けることで世界の不況に対応している。企業と小売業界も、そのような行動を後押ししている。
「エコへの関心が高いという姿勢が、文化の一部になりつつある」とケファール氏は述べている。「新しい『グリーンワールド』ができたかのようです。女性のファッションではまずボヘミアンスタイルに人気が集まり、それから森ガールが登場した。日本人は消費を通じてさらにエコロジカルになっている」
日本はますます環境に配慮した消費者市場になってきており、これからの10年間、グリーン改革は国内だけでなく世界中で大きなインパクトを持つことになるだろう。この変化は非常に速いスピードで起きている。日本の消費者の35%が1年前と比べて環境への意識が高くなったと考えており、34%がこの1年で自分たちが環境に与える影響をより意識するようになったと答えている。
企業・ブランドに対しても、「正しい振る舞い」を期待する人が増えている。3分の2(66%)が企業・ブランドに信頼性を期待し、責任を求める人は52%、環境に優しくあってほしいと望む人は26%であった。これは「ニューノーマル」であり、これらの要素はもはや付加価値とはみなされず、提供する商品には元々備わってなければいけない時代が来たということである。「小売業者は店舗やショッピング体験そのものをエコフレンドリーにすることについて、製造業者任せにしておくのではなく、自分たちで真剣に考えなければならなくなる」とマッキンゼーのブライアン・ソーズバーグ氏は述べている。「このような問題で一歩先を行き、そこで得たものを利用して顧客の体験を差別化できる小売業者が勝者になるだろう」
コカ・コーラのミネラル・ウォーター「い・ろ・は・す」は、環境面での活動を部分的に利用している商品の例である。この商品の容器は12gのリサイクルペットボトル(プラスチック)から作られており、これは従来の容器よりも40%少ない量である。また、地元での容器詰めにより輸送にかかるエネルギーも削減している。同様の改革により、日本にある240万台の自動販売機の一部にも変化をもたらしている。LED ライトやソーラーパネル、コケを用いた緑化作用まで利用し、エネルギー消費量を40%削減している。エコ意識が進んでいる日本では、他国に先駆けてチャリティー自動販売機を導入し、環境あるいは社会的なプロジェクトにおつりを寄付することができる。プロジェクトの内容は、コウノトリを自然に帰す地域活動から、発展途上国の母親を支援するプログラムまで多岐に渡る。
日本政府が消費者支出を活性化するために投じた9,200億円の一環として、環境活動を奨励する制度を導入したことは間違いなく功を奏している。エコポイント制度は、古い家電製品をより環境に優しく、エネルギー効率の良いものに取り替えることを促した。東京に拠点を持つNGO が行ったMottainai(もったいない)キャンペーンも、学校、法人、個人を問わず全国的に成功を収めている。
エコに対して特典制度を設ける文化の高まりは、すでに消費パターンに組み込まれている。対象者の38%は、環境に優しい行動に対する特典制度ができたことで、買物行動、環境や倫理的な側面に影響があったと答えている。
3R運動(Reduce・Reuse・Recycle)といった高まりつつある文化は「マイ箸」を持つ傾向に火をつけ、年間2,500億本捨てられている割り箸の利用の削減を目指している。
さらに進んで、各企業は、ビジネスにおける透明性を高め、倫理的であること、環境に配慮していること、グリーンであることを当然なものとしている姿勢を消費者に理解してもらう必要がある。そして、競合から抜きん出るためには、さらに先をいく必要があるだろう。環境に優しい行動に基づいたポイント・特典制度に魅力を感じる消費者は多い。従って、各企業および小売業者は、買い物や支出の中で慈善団体への寄付や、二酸化炭素排出量との相殺といった、倫理的な活動に消費者が参加できるシンプルで分かりやすい方法を導入するべきであろう。
トップ5:企業・ブランドに期待すること
・信用できる (70%)
・責任感がある (53%)
・環境に優しい (35%)
・倫理的である (34%)
・親しみやすい (25%)
消費者ケーススタディー: Eco-sumer
カワノミエは34歳の主婦で、夫と3歳になる息子とともに、東京の上目黒に住んでいる。この地域には小さな専門店やビンテージショップ、一風変わったレストランが密集している。ミエはこれまでも常に、エコとその他のトレンド両方に関心を示してきたが、最近のメディアによるグリーンキャンペーンに触発され、買物をする際には、以前にも増して倫理的に振舞うようになった。「私たちが資源を使えば使うほど、緑が少なくなることが心配です。リサイクルや再利用などで限りある資源を守るよう心がけています。誰もが少しでも環境に配慮するように努力していると思います」とミエは言う。
ミエの家族はエコバッグや繰り返し使える「マイ箸」と「マイカップ」を利用している。ミエは、そのような行動が彼女の近所でも浸透しており、それは小物に留まらなくなっていると言う。「ソーラーパネルを自宅の屋根に取付ける人が増えています。私たちの家も取付けを検討しています」
環境問題や倫理的課題に関心を抱くことで、ミエは以前より、よく考えて買物をするようになった。毎日インターネットを使って、自分が買いたい商品の情報を探している。「その商品について他の人たちはどんなことを言っているのかが分かるので、レビューを読むのも好きです」とミエは言う。彼女は、暖房器具やエアコンから排出される二酸化炭素量の削減を求める「クールビズ」や「ウォームビズ」キャンペーンを実施している企業に好意的だ。政府は環境に優しい行いを継続して奨励すべきだ、とミエは考えている。
「政府は個人の環境に配慮した行動に対しても、報酬となるようなものを与え、それをより広く告知するべきです。そうすれば自分の努力が報われることをもっと嬉しく思うでしょう」