2023年6月5日9:15
多様できめ細かなサービス提供を可能にする情報基盤を整備
JR東日本は改札機を順次、センターサーバー方式のSuica改札システムに置き換える。処理速度をキープしつつ、共通の情報基盤を活用することによって、より多様なニーズにタイムリーに応えられる体制の整備を急ぐ。
運賃計算などの処理をすべてセンターサーバーで実施
2026年度中に全エリアへの導入を完了予定
JR東日本は、Suica改札システムをセンターサーバー方式に切り替える。2023年5月27日に青森・盛岡・秋田の北東北3エリアの45駅に導入したのを皮切りに、順次、首都圏、仙台、新潟エリアの改札機の置き換えを進め、2026年度中に全エリアへの導入を完了する予定だ。「現行の改札機は2015年ごろに導入を完了した機種です。われわれはその翌年には次の更新を見据えた検討を始め、センターサーバー方式も選択肢のひとつとして検討を進めてきました」(JR東日本 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 マネージャー 中庭剛氏)。いよいよその計画が実行のフェーズを迎えることになった。
これまでのシステムでは、運賃計算を含めたすべての処理を各改札機で実施していた。新システムでは、運賃計算などはセンターサーバーで実施し、改札機では情報の読み込み・書き込みを行う。利用者側の改札機の利用方法は従来と変わらない。新システムでは改札機とセンターサーバー間の往復のネットワーク通信が必要になるが、情報処理を高速で行えるため、利用者が改札機を通過する時間に体感的に変化はないという。
技術開発に当たっては、処理スピードに最もこだわった。中庭氏は「たとえば定期券を持っている利用者が区間外の駅から乗り降りするとき、定期券を使う場合と使わない場合を比較して適切な運賃を割り出したり、入場する駅と出場する駅の間に民鉄を含めて複数の利用経路がある場合、最も安価な経路を選定したりする必要があります。こういった複雑なケースについても、センターサーバーは非常に短時間で処理を行うことができます」とメリットについて説明する。
センターサーバーは「株式会社ICカード相互利用センター」が所有しているものを使用。システム稼働状況については、24時間365日の監視体制を敷いている。障害時のBCP対策としてサーバーを複数台で構成し、万一の場合には自動的に切り替わるシステムとし、通信ネットワークについても冗長化対策をとる。
Suicaとチケットの情報を連携させることによって
利用状況に応じたフレキシブルなサービスの提供を目指す
JR東日本には、将来的に、センターサーバーと、チケット情報などをサーバー上で管理する「鉄道チケットシステム」を連携させてサービス展開を行う構想がある。「鉄道チケットシステム」は、現行の新幹線eチケットの仕組みのようなイメージだ。Webやスマホとの親和性も高く、この活用によって記憶容量の課題も解消できるため、Suicaとチケット情報を組み合わせたサービス開発の可能性が大きく広がる。
「センターサーバーに機能を移すことで、ほかのサーバーとの連携がスムーズになり、機能の拡張性が増します。これまで行ってきた、すべての利用者に対する一律のサービス提供から、個々の利用者に対するフレキシブルなサービス提供へと、転換を図ることができると考えています」(中庭氏)。
ソフトウェア更新作業のコストを大幅削減
2001年から交通インフラのSuicaの柔軟性が高まる
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