2023年7月18日8:20
三井住友カードは、大企業向けの法人・ビジネスカードに加え、ビジネスオーナー向けの「三井住友カード ビジネスオーナーズ」なども発行しており法人向けビジネスを強化している。また、カード決済に未対応の企業との取引でも、VisaやMastercardブランドによる決済が可能な「請求書支払い代行サービス」を提供しており、銀行系カード会社ならではの安心・安全なサービスの運用を心がけている。
「三井住友カード ビジネスオーナーズ」は副業も利用可能
発行は伸びるも利用は課題に
三井住友カードでは、法人・ビジネスカードの展開を強化している。三井住友カード ビジネスマーケティング統括部 グループ長 池田寿雄氏は「2023年4月からビジネスマーケティング本部を組成し、法人事業を1つの柱として取り組んでいます」と話す。三井住友カードでは、個人向けの「Olive(オリーブ)」、加盟店向けの「stera(ステラ)」などの展開を強化しているが、法人事業も同様に注力していくそうだ。
法人・ビジネス分野は銀行と一体運営をしており、大企業・中堅企業へは「三井住友コーポレートカード」や「三井住友パーチェシングカード」、中小企業・個人事業主へは「三井住友カードビジネスオーナーズ(一般、ゴールド)」、「三井住友ビジネスカード」、「三井住友ビジネスパーチェシングカード」を提案している。
池田氏は「この3カ年で成長率60~70%、単年で20~30%の成長があります。中でもパーチェシングカードは200%超の伸びがあります」と成果を述べる。法人・ビジネスカードの取り扱いとして、クラウドサービス、非対面の物販などがコロナ禍で伸びている。中でも購買専用のパーチェシングカードの成長が著しい。
大企業向けの展開は、三井住友銀行や地銀のネットワークをはじめ、経費精算システムを展開する企業と連携し個社ニーズに応える提案をしている。また、法人代表者、個人事業主に対しては、デジタルを活用して幅広くアプローチしている。
三井住友カードでは、大企業・中堅企業向けのコーポレートカード、パーチェシングカードの展開に力を入れている(関連記事)が、同様に中小企業・個人事業主向けの取組みとして、法人代表者、個人事業主がよりクレジットカードを申込・利用しやすくする取り組みを行っている。中小企業代表者や個人事業主は、ビジネスカードを保有している人がまだまだ少ない。また、入会した人にその理由を尋ねると、「勧められたから」と回答する人が多く、訴求次第で会員数や利用は伸ばせると考える。さらに、ビジネスカードによって業務効率化、キャッシュフローの改善に役立てられるとした。
ビジネス利用を促すため、「三井住友カード ビジネスオーナーズ」では、2021年11月に商品性を改定し、一般カード、ゴールドカード共に年会費無料で持つことを可能とした(ゴールドは100万円以上利用の条件あり)。「大きく変わったのは対象範囲を副業まで広げたことと、ポイントによる利得性の観点を見直しました」(池田氏)。これにより会員のすそ野は広がったが、一方で利用はまだまだ利用は伸ばしていけると考えている。例えば、請求書カード払いの請求書支払い代行サービスの利用を促したり、公金決済の支払いを取り込むなど、ビジネスカードがより便利に利用できるシーンを訴求していく方針だ。
他社も含めたVisa/Mastercardに対象拡大
手数料2.7%にするキャンペーンで認知強化へ
三井住友カードは、2022年6月から、カード決済に未対応の企業との取引においても、クレジットカードによる決済が可能な請求書カード払い「請求書支払い代行サービス」を提供している。「請求書支払い代行サービス」は、売り手企業(サプライヤー)がクレジットカード決済に対応していなくても、買い手(バイヤー)がカード決済できる特徴がある。VisaとMastercard会員でビジネスを展開する人が三井住友カードに対して請求書の支払い申請を行い、同社がカード会員に代わり取引先に金額を振り込むことができる。
サービス開始時点では、Visaブランドの三井住友ビジネスカード会員、三井住友カード ビジネスオーナーズ、三井住友ビジネスカードfor Ownersの法人代表者会員からスタートしたが、2022年8月から三井住友カードのVisa会員、2023年春からは同社以外のVisaとMastercard会員にも対象を広げている。サービスは前四半期から300~400%の成長となっているが、さらに今後は業務効率化に寄与する取り組みにしていきたいそうだ。
請求書支払い代行サービスの普及に向けて、認知度向上にも力を入れている。三井住友カードでは、7月3日~2024年3月31日まで、三井住友カードが発行するカードの利用者に対し、通常3%の手数料を2.7%にするキャンペーンを実施している。また、「4月以降、ブランドが広がりましたが、例えば弊社のサービスを他社が発行したカードで使えることを知らない人も多いです。まだ当社のカード会員が多く、Visaが95%ほど占めています」と同部 部長代理 井上祐也氏が語るように、他社カードでもご利用が可能な事も含めて今後はWeb広告などで告知をさらに強化する方針だ。
リスクを踏まえ個人事業主宛の振り込みはNGに
参入が増える請求書カード払いの今後の見解は?
国内では複数の企業が請求書カード払いを展開しているが、三井住友カードでは事業の安定的な運営の観点から、個人事業主(個人含む)宛の振り込みは行っていない。井上氏は「他の請求書カード払いでは個人事業主への振り込みが可能なサービスもありますが、適正なBtoB取引かその判定はすごく難しいと考えている」と話す。当然、振込先を法人に限定することで他のサービスに顧客が流出する可能性はあるが、健全な事業運営を保持するためには不正利用を防ぐための対策は必須としている。
井上氏は「弊社のプラットフォームではありませんが、弊社の会員が弊社以外のBPSPを利用して延滞につながるケースもあります。現金化につながりやすい仕組みは慎重に対応しなければならないと考えている」と危機感を募らせる。
請求書カード払いを展開する事業者は国内で10社程となっており、今後も増加が見込まれているが、「手数料も現在は3~4%程ですが、グローバルの状況を踏まえると日本でも下がると見ており、SMEマーケットにおける資金繰りを改善するだけではなく、安定的な運営を行うことができるプレイヤーのみが生き残ると思います」と井上氏は話す。
バイヤーの交渉材料としても活用可能?
3年後取扱高(累積)900億円は早期に達成可能
このコンテンツは会員限定(有料)となっております。
詳細はこちらのページからご覧下さい。
すでにユーザー登録をされている方はログインをしてください。