アラームボックス、AIとオンラインデータを活用した企業間取引リスク管理とは?

2024年6月3日9:35

アラームボックスは、取引先のコンプライアンス違反や不祥事など、現代社会の取引リスクや取引リスク管理の重要性を解説する勉強会を開催した。同社では、AIを活用した与信管理クラウドサービス「アラームボックス」の大型アップデートを2024年7月上旬に行うそうだ。

アラームボックス 代表取締役CEO 武田浩和氏

取引先の倒産で連鎖倒産リスクも
リアルタイムな取引先の状況把握がカギに

アラームボックスは2016年に設立されたスタートアップだ。現在はさまざまな銀行や事業会社が採用している。同社では取引に発生するリスクの課題に取り組んでおり、テクノロジを活用した情報提供ツールや保証サービスを提供することで、与信管理のDXを提供している。与信管理クラウドサービス「アラームボックス」では、クラウドサービスでパソコンやスマートフォンからの情報収集ができ、掲示板やSNSを活用した与信管理が可能だ。与信のプロが情報やリスクのレベルを判断してユーザーに送るため、与信管理の専門知識がなくても取引先のリスク管理を行うことが可能だという。また、決算書の情報に加え、定性情報を活用できるそうだ。すでに金融機関など、5,000社以上が採用している。

現代社会の取引リスクとして、取引先の倒産による連鎖倒産リスク、取引先のコンプライアンス違反による信頼低下リスクが挙げられる。

リーマンショック以降、長らく倒産リスクは落ち着いていたというが、ゼロゼロ融資返済の本格化、昨年より続く物価高騰、慢性的な人手不足など、さまざまな社会背景によって多くの企業の体力が低下し、倒産リスクが高まっている。最近では、急激な円安や金利引き上げなども起きており、その影響を受ける企業も多い。

例えば、ゼロゼロ融資の返済開始時期の最後のピークは2024年4月となっている。融資返済が始まることによって、事業を立て直せなかった企業は資金繰りが悪化し、倒産することが予想されている。

実際に、東京商工リサーチの調べでは、2024年4月の企業倒産は4年ぶり700件台、増加率は今年最高の28.3%となった。倒産件数は2022年4月から25カ月連続で前年同月を上回った。取引先が倒産した場合、代金の未回収が発生するため、コロナ禍で資金繰りが悪化している企業にとっては影響が大きく、連鎖倒産が起こる可能性が高まるそうだ。これまでの取引では、取引先の与信管理は取引が始まった時、決算時などに限られていたが、リアルタイムに取引先の情報を把握することが重要となる。

現代社会の取引リスクとして、取引先のコンプライアンス違反による信頼低下リスクが挙げられる。SNSや掲示板などのネット上で、誰でも情報が発信・拡散が可能になったことで、企業がコンプライアンス違反をしているという情報が、爆発的に広まることもある。最近の事例として、大手のタレント事務所や中古車販売業者のコンプライアンス違反が報じられ、企業体制の一新にまで発展した。また、これらの事業者はコンプライアンス違反をした企業にとどまらず、取引先にもネット上での炎上や行政処分が発生し、社会から信用低下を招く事態となってしまう。こうした中、コンプライアンス違反をした企業とかかわりを持つ企業に対して、正しさが求められる時代になっている。信用力に加え、反社会的勢力とのかかわり、不祥事、働き方、法令遵守など、コンプライアンス違反に対する社会的視線はさらに厳しくなっているそうだ。これらの社会背景から、取引先の財務面だけではなく、コンプライアンスなども踏まえて多角的に情報を収集し、かかわりを持つ企業の信頼性を総合的に判断することが自社の信用を守るために必要だとした。

 

海外大手が次世代の取引リスク管理に取り組む
AI活用でオンライン情報の活用も可能に 

アラームボックス 代表取締役CEO 武田浩和氏は、企業の信用を守る、次世代の取引リスク管理「ネクスト与信管理」とは、AIやオンラインを活用した次世代の取引リスク管理だとした。米国や欧州では、与信管理の市場が非常に発展しており、BtoB取引の例として、ダン&ブラッドストリート(D&B)、 エクイファックス(Equifax) 、エクスペリアン(Experian)などが次世代の与信管理を行っているという。すでに3社ともAIに関する取り組みを開始。特にD&Bは、D&B.AI ラボを立ち上げ、大規模かつユニークなデータ資産を人工知能と連携して活用していく。

日本国内でもAIを与信管理に活用する必要性が求められるという。AIによる情報収集の自動化や解析の効率化を可能にすることで、収集が難しかったオンライン情報を与信管理に活用することが可能だ。オンライン情報にはコンプライアンス情報や支払いに関する情報が含まれているため、財務情報に比べ速報に優れており、リスク判断に活用することができれば、これまでよりもさらに正確にリスク判断ができるとした。このAIとオンライン情報を活用したリスク管理を同社では「ネクスト与信管理」と呼んでいる。

同社の「アラームボックス」は、WEBの定性情報を活用した与信管理サービスとなり、AIを活用した高精度な与信管理を低コストで導入できるのが強みだという。情報の収集を効率化できることに加え、鮮度の高いネット情報を中心としている。さらに、収集した情報は専門知識がなくても使用可能だ。

ネクスト与信管理は、アラームボックスが企業の信頼性を知りたいニーズに応え、企業の信頼性を総合的に評価し、データの提供や取引の保証を行う取り組みとなる。ゼロゼロ融資の返済やコロナ禍でダメージを受けた企業の現状、企業不祥事や働き方の実態、法令遵守や反社チェックなど、さまざまな観点から企業のリスクとポテンシャルを分析する。また、消費者や企業が関係を持つ相手の企業に対して、安心と信頼を感じることができるように、AIを用いて企業の真価を可視化するそうだ。

具体的なエンジンとして、AI、ソーシャル・ビッグデータ、リアルタイム情報提供の3つの要素を重要視している。まずAIによって時間のかかっていた処理を加速化させるとした。これまでは企業の決算書などで評価を行ってきたが、オンライン情報、ネットの発達によってSNSや掲示板、裁判所や登記情報などから多角的な評価を行うことを目指している。従来の与信管理は、取引開始前/決算時点で調査するのみだったというが、リアルタイムで常時モニタリングしていく。同社では、与信管理のニューノーマル、自動化、民主化というビジョンを実現させていくことを目指す。

取引先のコンプライアンス違反を未然検知
売掛金保証サービスに自動審査機能を実装へ

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