2011年6月9日7:55
世界最大規模のオンライン決済サービス「PayPal」の国内向けサービス展開は?
スマートフォンやデジタルコンテンツ向けのソリューションを投入
EC決済市場において世界中で圧倒的な地位を確立している「PayPal(ペイパル)」。世界190の国と地域で25の通貨に対応し、約9,800万のアクティブアカウントの利用者を持つ。同社の戦略について話を聞いた。
世界のBtoCのオンライン決済の18%のシェア
全世界でモバイル決済を強化
PayPal は、米国本社を米国カリフォルニア州サンノゼに、国際本部機能をシンガポールに置く、eBayグループのオンライン決済事業会社。190の国と地域および25通貨に対応している(国内は21通貨)。2010年の売上は920億ドルで、前年比28%のアップとなった。現在、世界中で9,800万以上のアクティブユーザーを抱えており、世界のBtoCのオンライン決済の18%のシェアを占めている。PayPalの名を世に広めたのはオンラインオークションの「eBay」だが、2年前にeBay以外のサイトでの利用が逆転。現在、6:4でeBay以外の決済比率が多くなっている。
「PayPalの採用が全世界で加速している要因としては、加盟店で決済が行われた際、最短3~5営業日で銀行口座に振り込まれること、また審査のスパンが短いため、導入の敷居が低い点も挙げられます」(ペイパルジャパン マーチャントサービスマネージャー 水野博商氏)
PayPalでは、PCはもちろん、スマートフォンなどのモバイル決済にも注力しており、eBayがモバイルアプリケーションを発表した2009年夏以降、さまざまなモバイル決済サービスを提供している。海外ではBump技術を利用した送金サービスで注目を集めており、ブリングネーションとの提携によってICタグを利用したリアル店舗での決済サービスも実施している。また、NFC技術を活用したソリューションの開発も行っている。
国内のアカウント数は約150万
中小企業はもちろん大手にも続々採用
PayPalは日本ユーザー向けのサイトを日本語版にローカライズしている。前年比の総取扱額は約50%以上増で、国内間取引額の伸び率は100%以上となっている。これは、PayPal全体の伸び率を上回る成長を見せている。アカウント数については昨年末現在で約150万だが、2011年3月~4月にかけて国内でも急激に増えたという。
決済代行事業者のパートナーとしては、SBIベリトランス、GMOペイメントゲートウェイ、J-Payment、ソフトバンク・ペイメント・サービス、デジタルガレージ イーコンテクストカンパニーなどが名を連ねる。
「オンライン決済代行事業者に関しては順調に提携が進み、国内の7~8割のシェアをカバーすることができました。最近ではショッピングカートなどのサービスを行う企業との連携も進めています」(水野氏)
国内の企業では、フラッシュマーケティングのグルーポンやポンパレ、ニッセン、ANAP、東急ハンズ、ZOZOTOWNの海外向けグローバルサイトなどで採用されている。
「PayPalのイメージとして、中小企業や海外で事業を展開したい企業が多く利用していると思われがちですが、大手からの引き合いも多くいただいています」(水野氏)
「ウェブ ペイメントプラス」は一休で採用が決定
旅行関連の企業から引き合いが増える
同社では2010年に、iPhone、iPad、Androidなどスマートフォン向けの決済サービス「モバイル エクスプレス チェックアウト」、デジタルコンテンツ販売の決済ソリューション「PayPal for Digital Goods(デジタルコンテンツ決済)」、中小事業者が運営するECサイト向け決済サービス「ウェブ ペイメントプラス」の展開を発表した。
モバイル エクスプレス チェックアウトは最短2クリックで決済が済み、小額決済にも対応する。デジタルコンテンツ向けのPayPal for Digital Goodsは、ECサイトから離れずに決済が最短1クリックで完了するのが特徴で、リリース後、幅広い事業者から引き合いがある。ウェブペイメントプラスは、クレジットカード決済を導入していなかった中小企業を想定して開発されたソリューションだが、旅行サイトの一休での採用が決定するなど、大手からの引き合いも多いという。
「インターネットの世界では横のつながりが強いため、スタートトゥデイ様や一休様に採用されることにより、他の企業でも標準としてPayPalが採用される期待を持っています」(水野氏)
同社では業態を絞った提案は行っていないが、最近では旅行関連での需要が多いと感じているそうだ。
「航空券の購入、ホテル・レストランの受付、現地でのレジャー施設の受け付けなど、国内はもちろん海外からの購入も増えています」(水野氏)
今後はPayPalを導入した企業とのタイアップを強化
開発者向けに技術仕様をAPIとして公開
現時点での課題は日本国内での認知度向上だが、「利用者、加盟店にもPayPalについて説明すれば、便利なシステムと分かってもらえます。今後はPayPalを導入した企業とのタイアップを強化していく方針です」と水野氏は説明する。同社は今後、モバイル向けのソリューション提案も強化していく方針という。
なお、利用者や加盟店だけではなく、開発者向けに技術仕様をAPIとして公開することで、世界中の技術者が新しい決済を開発できることもPayPalの価値を高めている要因として最後に触れておきたい。