2025年3月12日8:30
4,200万人の会員を擁するANAマイレージクラブを基盤に、マイルを通じたANA経済圏の活性化を図るANAグループでは、そのキーワードの1つとして“決済”を掲げる。これを担うツールがクレジットカード「ANAカード」と、スマホ決済「ANA Pay」だ。「ANAカード」ではJCBとの提携により、18~29歳限定の新カードの発行を2025年1月より開始。一方「ANA Pay」は、マイルでもチャージができ、身近な店舗で少額決済に便利に利用できる機能を備えて、会員の日常生活に寄り添う。これらの施策により、会員の裾野を広げると同時に、既存会員との関係性を強化。引き続き特典航空券をキラーコンテンツとしながらも、飛行機を頻繁に利用しない層のニーズにも応えるべく、サービスの拡充を進める。
若年層向けクレカの特典を拡充
長期的な視点から経済圏拡大を狙う
ANAグループは、ANAマイレージクラブの会員組織を基盤に、会員数の拡大と既存会員のロイヤリティ向上の両面から、マイルを通じたANA経済圏の拡大・活性化の取り組みを推進している。非日常の航空利用を強みとしながら、同時に日常での接点を強化。そのキーワードとなるのが、“決済”だ。
ANAマイレージクラブの会員数は、2023年度より200万人増加して、現在約4,200万人。利用者の72%が30~50代になる。一方20代はほかの層に比べて構成比が弱く、この層の取り込みが課題となっている。
そこでANAでは、若年層に向けたJCBとの提携クレジットカード「ANA JCBカード ZERO」をリニューアルし、2025年1月16日より「ANA JCB CARD FIRST」の発行を開始した。対象は従来カードと同じ18~29歳。年会費が無料であることも従来通り。変更点は主に特典の拡大だ。
カード利用によるマイルの付与率を、これまでの0.5%から1%に拡大。また、入会で3,000マイル、継続のたびに毎年3,000マイル、エアラインの利用で10%のマイルを付与する特典を提供している。さらにショッピングで年間100万円以上を利用した場合には、5,000マイルを付与する。2025年5月末までは、新規入会と条件達成で最大3万5,200マイル相当がもらえるキャンペーンを展開中だ。
必ずしも航空利用が多くない若い世代でも、このカードを持てばマイルを貯めやすい。特典を享受してANAにまつわる良い体験を重ねてもらい、その結果としてANAへのロイヤリティが醸成され、将来的にマイル経済圏活性化の担い手となってもらうことが、ANAの狙いだ。
ANA X ライフサービス事業推進部 事業企画チーム マネジャー 小林均氏は、「多くの若い方々にまずカードを持って、使っていただき、その先にマイルが貯まりやすい、楽しい体験ができるということを実感していただきたい」と意気込みを語る。
「ANA Pay」の会員数が100万人を突破
日常使いの定着、若年層の取り込みへ
ANAマイレージクラブ アプリに搭載されたモバイル決済サービス「ANA Pay」の会員数は、ANAが目標としていた時期よりもかなり早く、2024年11月に100万人を突破した。「ANA Pay」の新規登録やチャージキャンペーン実施により、ANAカードの申し込みにもつながっている。
「ANA Pay」は、店頭でiD・Visaのタッチ決済、Smart Codeのコード払いが利用できる。オンラインショップでは、Visaのバーチャルプリペイドカードとして利用が可能だ。以前はANA PayマイルとANA Payキャッシュに分かれていた残高は、2025年1月28日より1つの残高に統合され、より使いやすくなった。
「ANA Pay」へのチャージは、クレジットカードや銀行口座(Bank Pay)などのほか、ANAのマイルを充当できるのが特徴。使いきれなかったマイルも無駄にすることなく、日常の買い物に利用することができる。
決済金額200円ごとに1マイルを付与。また、「ANAカード」でのチャージでも、1,000円ごとに最大11マイル貯まる。
「ANA Pay」はコンビニやスーパーでの日常使いに多く利用されている。利用者は、性別では男性が多く、年代ではANAマイレージクラブ会員全体と比較すると、20~30代の割合が高い。ANAはこれを、「若年層の取り込みに貢献できている」(ANA X ペイメント事業推進部 事業企画チーム マネジャー 大森いづみ氏)と評価している。
ANAでは2024年、利用者を対象としたアンケート調査を実施した。この結果、現在のところマイルを「使う」より「貯める」に重点を置いている利用者が多いことがわかった。
また、「ANA Pay」をどこで使えるのかがわかりにくいことが課題となっていることも明らかになった。「ANA Pay」は、Visa、iD、Smart Code対応の店舗で利用可能だが、店頭に「ANA Pay」そのものの名称が掲示されていないことが、利用者、店舗の双方にとって認識されにくい要因の1つとなっている。ANAでは使い方についての動画を作成するなどして、認知の拡大に努めていく意向である。
「決済・金融・流通サービスの強化書2025」より