AIGエジソン生命保険のCRM施策を公開

2011年10月5日8:00

AIGエジソン生命保険のCRM施策を公開

プロジェクト立ち上げから1年足らずで

先進技術を駆使した施策を次々に展開

同社では「プロジェクト・フェニックス」の立ち上げから1年足らずの間に、先進技術を次々に導入、顧客サービスの向上を推進してきた。2009年5月には、コールセンター(長崎県長崎市)に、保険業界では初となる自動音声認識システムを導入。2009年8月には約4,000人の営業社員にiPhone 3GSを導入する意向を発表し試験導入を開始。外出先からの社内電子メールシステムや顧客の契約情報へのアクセスを実現した。

「Myエジソン」は既契約者向けのMyページサービスで、契約内容の照会、住所・電話番号等の変更、貸付等の各種手続がWeb上で可能となる

また、同月にリニューアルしたWebサイトを通じ、10月からは契約者向けインターネットサービス「Myエジソン」の提供を開始。さらに(株)セールスフォース・ドットコムが提供するクラウド・アプリケーションの採用を発表し、2010年6月予定の営業支援システムの「クラウド化」に向け準備中。またクラウド化に合わせ、全営業社員のパソコン約4,000台を順次、シンクライアントPCに切り替える。

これら一つ一つは個別の展開のように見えるが、そのいずれもが完全な“ペーパーレス・キャッシュレス”化の推進と、顧客満足度の向上に向かっている。同社営業担当者1人当たりの新契約数は、一部の外資系他社に比べると若干見劣りするものの、国内企業では上位にランクされている。同社は、営業クオリティの向上に加えて、顧客サービス面の強化が他社との差別化につながると考える。

同社では2009年10月に「利用者満足度調査」を実施したが、この調査の結果を分析するに当たって、「ネットプロモータースコア」と呼ばれる指標を採用している。一般に同指標は10段階評価で捉えることが多いが、今回同社で行った分析では5段階評価で実施。

これは、例えば「AIGエジソン生命の商品を他人に推薦したいと思うか」といった質問に5段階評価で回答を募った場合に、「そう思う」だけを“推薦”として捉え、「どちらかといえば思う」は“中立”、「どちらともいえない」「どちらかといえば思わない」「思わない」はすべて“批判”と捉えるというもの。通常は「どちらかといえばそう思う」も推薦として捉える企業が多いが、敢えて厳しい基準を採用したことから、推薦は15%程度に止まった。今後は前述のような各種サービス施策の展開により、この数字をさらに引き上げていきたいとしている。

次に、個々のサービス施策について紹介しよう。まず、Webサイト上に開設された「Myエジソン」は、顧客が保険契約の内容を照会したり、各種手続きを行ったりすることができるMyページ。事前のユーザー登録で発行されるIDとパスワードを入力してアクセスする仕組みになっている。

現在、顧客とのコミュニケーションとして、メールマガジンも配信しているが、今後コミュニケーション・情報提供ツールのさらなる充実に向け検討・開発等を行っている。

契約者に直接、架電してもらい

コールセンターの品質向上を図る

顧客満足度を向上する上では、コールセンターにおけるサービスも重要だ。同社のコールセンターでは、以下の2つの指標を重視している。ひとつは、架電時の対応に起因した苦情や不満件数の推移、もうひとつは、利用者の声に直接、耳を傾けることだ。

その一環として、2010年2月には、同社の顧客30人に依頼して「ミステリーショッピング」を実施。実際にコールセンターに架電して、20問に及ぶ問い合わせをしてもらった。

プロの調査会社ではなく、実際の顧客に調査を依頼したのは、実際の加入契約について具体的な質問を突っ込んで行うことで、知識の正確性、応対の的確性をしっかりと評価しようと考えたため。同社としては初の試みだったが、これにより社員が気付かない本質的な不満・改善点などを聞くことができたという。

コールセンターについては、今後さらなる変革を進める。高度化・多様化する顧客のニーズに対し、より高い品質のコンサルティング、迅速な顧客サービスを提供していくため、従来は対面営業のサポートとして位置付けてきたコールセンターを、今後はセールスサポートに加え、お客様のアフターケア(保全手続き)機能を担う「コンタクトセンター」へと転換することを考えているのだ。

一方、情報セキュリティの強化とシステム効率化、クラウド化を通じた保険契約締結の迅速化等を目的に導入されるのがシンクライアントPCだ。これにより、顧客は対面での契約時にパソコンの画面を見て内容を確認することが可能になると同時に、契約書類等の電磁化に伴い、記載等の不備があった際も迅速なやりとりができる。クラウド化やシンクライアントPC導入等により完全な“ペーパーレス&キャッシュレス”化が実現すれば、顧客の利便性も高まることは間違いない。

また同社では、顧客向けのパンフレットも全面刷新した。(社)ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会の「DC9ヒューリスティック調査」結果に基づき、情報量やレイアウト、図形化の適切性や色彩設計などを改善、顧客視点で読みやすいユニバーサル・デザイン化を図ったのだ。

これに伴い、年に一度、顧客に契約内容を通知する「総合通知」や、「保険商品のパンフレット」にも、客観的な見解を取り入れていく方針だ。表現面ではコールセンターに寄せられる顧客の声などを参考にすると同時に、高齢者でも読みやすいように工夫がなされている。

※本記事はアイ・エム・プレス社発行の「CRM年鑑2010」に掲載された内容の一部をご紹介したものです。

「CRM年鑑2010―CRM&ダイレクトマーケティング成功事例集」の紹介ページ

アイ・エム・プレスの「CRM年鑑2010」では、CRM推進企業30社の(1)企業の概要、(2)CRMへの取り組みの背景、(3)顧客情報の収集・管理方法、(4)CRM施策の現況、(5)CRM施策の効果、(6)課題と展望がまとめられています。本記事ではAIGエジソン生命保険の(4)CRM施策の現況のみをご紹介しております。

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