2011年12月14日8:30
非接触IC決済事業者に聞く~セブン・カードサービス「nanaco」(2)
グループ外での展開には業界全体としての課題も
共用端末の普及が電子マネーのすそ野を広げる
現状、nanacoの利用は、グループ内が中心であり、なかでもセブン-イレブン、イトーヨーカドーでの利用が圧倒的に多いが、「その比率は徐々に下がっている」と磯邊氏は話す。今後は、外部加盟店での利用拡大も期待されるところだが、「まだまだ流通企業が発行する電子マネーは、各社の事業領域の中で便利に使われています。地域店舗や商店街において、便利に使われるのはこれからであり、現在は運命の分かれ道に来ていると思います。そのためには、1つの端末ですべての電子マネーが利用できることが理想です」と磯邊氏は語る。
電子マネーやポストペイのサービスがスタートした際は、各社とも加盟店獲得に必死であり、どうしても陣取り合戦になっていた。その結果、加盟店にとっては同じFeliCaの仕様でありながら、複数の端末を導入する場合もあった。電子マネーが真のサービスとして受け入れられるためには、ヤマトフィナンシャルのように1台の端末で複数の電子マネーやポストペイの決済が行える体制の整備が必要であると、磯邊氏は考える。
実際、セブン-イレブンにおいても消費者の利便性を考え、nanaco以外の電子マネーやポストペイ導入にも積極的で2008年4月7日からJCBの「QUICPay」、2009年10月からはビットワレットの「Edy」、2010年7月からはNTTドコモの「iD」を全国のセブン-イレブンでスタートしている。
最近では複数の決済が利用できる共用端末や残高をサーバで管理するシンクライアント端末などがリリースされており、加盟店がコストを抑えて、複数の決済手段を導入する環境が整いつつある。トッパンフォームズが新たに設立した電子マネーのアクワイアリング新会社であるTFペイメントサービスでもnanacoの加盟店開拓を行うとリリースしており、「弊社はカード会社としてアクワイアリング業務を行っていますが、どうしても自社で提案にうかがうと、中立的な立場で他の電子マネーを勧めることが難しくなります。今後は、こういった中立的な企業が提案を行うことにより、複数の電子マネーを導入する加盟店が増えると考えています」と磯邊氏は期待を寄せる。
クラブネッツの端末で「nanacoポイント」が貯まる
クレジットカード同様にnanacoを収益の柱に育てる
このように、共用端末が普及するインフラも徐々に整ってきたため、今後は地域の店舗などと一体となり、電子マネーが利用でき、店舗の売り上げに貢献できる仕組みを考えていきたいとしている。共用の電子マネー端末も単純な決済だけではなく、独自のポイントやクーポン、サイネージなど、いろいろな活用が考えられるとしている。
地域における新たな取り組みとしては、共通ポイントを展開するクラブネッツの「マルチポイント付与端末機」で、クラブネッツの「CNポイント」、カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」などと同様に、nanacoポイントが貯まるサービスを開始している。
nanacoの場合はセブン&アイ・ホールディングスのグループカードという見方をされている面もあるが、セブン・カードサービスは独立したカード会社であり、nanacoをクレジットカードと同様に単一の事業として捉えている。収益的に関しては、最近プラスに転じており、事業としての展開が形になりつつあるという。