デビットは2012年から徐々に普及
携帯電話を活用した個人間送金に注目
ニューペイメントを支払方法で分類するとクレジット(後払い)、デビット(即時払い)、プリペイド(前払い)になります。そのなかで今後大きく注目されるのはデビット、プリペイドになると思います。後払いは法規制によってかなり制約がでてきます。消費者の意識のなかでも“使いすぎを抑制しよう”という傾向が見受けられ、後払いから即時払い、前払いに移行してきています。特にその中でホットなのが、国際ブランドがついたブランドデビット、ブランドプリペイドです。4月の資金決済に関する法律(資金決済法)の施行によって大きく整備されるのが前払い式支払い手段と為替取引(資金移動)です。この2つにIT技術がどう絡んでくるかが大きなポイントになるでしょう。
デビットは銀行口座と連動したものです。ブランドデビットの利用に関しては国内インフラの整備が進み、各銀行から発行されるようになれば2012年以降、一気に拡大すると考えています。プリペイドはSuicaやEdyなどの非接触IC決済の普及により消費者が抵抗感なく、日常の決済手段として使っています。その流れで、店舗独自のハウスカードだけでなく、今後は国際ブランドが搭載されたカードも伸びていくと思います。
為替取引に関しては、海外送金の市場だけを見ると世界で31兆円しかありません。それがIT技術によって銀行が行っていた海外送金に置き換わるとすれば大きな数字になるかもしれませんが、日本から海外にどれだけ送金するかといえばその数字は知れています。そうではなく、欧米では国内の個人から個人(PtoP)に注目が集まっています。日本でもPtoP、BtoB、BtoC、GtoGというような流れが今後出てくると予測しています。そのキーとなるのが「携帯端末」です。送金は携帯端末が大きなポイントになり、モバイルペイメントと呼ばれるジャンルがカギを握ると考えています。3G端末の普及により、伝送の処理速度が速くなり、「iPhone」やドコモのスマートフォン「Xperia」というような「アンドロイドOS(Android OS)」を積んだものが出てくると、送金の市場は様変わりすると思います。
送金のチャージと利用のポイントが
ペイメントビジネスの可能性を拡大させる
モバイルペイメントで個人から個人に送金する場合、送る資金は事前にサーバに前払いでチャージしなければなりません。また、資金の受け手はその資金を引き出せる仕組みも必要です。
ただ単に送った金額を携帯電話の通話料に使えるだけではビジネスとしても消費者にとっても面白くありません。資金を送られた側は携帯のまま非接触でショッピングができたり、ATMで現金が引き出せたり自由に使いたい。その意味でも送金と前払いは補完関係にあります。
資金決済法によって、送金と前払い式支払い手段が整備されました。事業者にとってこれはチャンスでしょう。サービス事業者にも送金方法、利用方法、プロセッシング、販売窓口、セキュリティなどの役割分担があります。送金する時に資金をどう入れるか、どう使ってもらうのか、チャージポイントと利用ポイントの整備がビジネスとして新たな可能性を見出します。
今後はカード会社がプリペイド・デビットを発行?
海外の送金事業者が続々と国内進出へ
これからはカード会社もクレジットだけではなく、プリペイド・デビットのビジネスを展開していかなければ駄目だと思います。消費者にとっては、後払いだけではなく即時払いや前払いのニーズはかならず出てきます。今後はクレジットカードの規制が強化され、カードを持ちたくても持てない人も増えてくるでしょう。そういう人に何の品揃えもありませんというのでは、キャッシュレス化が進行してきたのに再び現金返りになります。
すでにカード会社でも準備を進めているところもありますが、クレジットカードと競合する商品というイメージが上層部に強くあるのも事実です。古いカードビジネスに対する執着心から脱却できていません。インフラ面も問題で、多くのカード会社は次期システムの構築を進めている最中です。
今後は海外の決済、送金事業者が続々と国内に進出してくると思います。日本はニューペイメント分野では先進国のなかでもかなり遅れています。われわれは通信とそれを取り巻くデバイスが変わっていくところに着目しなければいけません。そのヒントとして「New Payment Report 2010」を是非活用していただきたいと考えています。
■「New Payment Report 2010」の紹介ページ
■「New Payment Seminar」~新しい決済トレンドとカードの基礎知識を学ぶ~
↓次の記事「トラベルプリペイドカード「MasterCardキャッシュパスポート」を発行 国内初、資金移動業者に登録し送金サービスも視野に」