2012年8月1日8:00
米国のモバイル決済端末ソリューション比較
☆☆☆ 専用カードリーダやPOSが不要になる! ☆☆☆
Mobile Card Reader Wars
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
2012年5月ソフトバンクとペイパルは、日本でデジタル決済を推進する合弁会社「ペイパルジャパン」を設立すると発表した。この衝撃は大きく、カード・決済業界のみならず、携帯キャリアや総合商社などは、情報の収集に右往左往した。
ペイパルジャパンの目玉は、スマートフォンにカードリーダをつければ決済端末に早変わりするというソリューション「ペイパルヒア(PayPal Here)」だ。いままでカードを受付けられなかったスモールビジネスを対象に加盟店開拓ビジネスを推進する。
スマートフォンやタブレットにカードリーダを装着して決済するというビジネスモデルは、米国ではすでに成長期にはいり、激烈な競争が繰広げられている。カードリーダの形状は四角、三角、半円、円筒などさまざま。アプリケーションのコンテンツや料金体系も多様だ。
はたして勝ち残るのはどこか。このビジネスモデルを確立したスクエアか、大手会計ソフト会社インチュイットか、はたまたアクワイアリングの経験を生かしたペイエニウェアなのか、話題のペイパルか、それともPOSメーカー大手のベリフォンなのだろうか。
カードリーダの形状や手数料の安さは、必ずしも優位性にはつながらない。スモールビジネス加盟店のニーズにきめ細かく対応したソリューションが求められている。米5社の比較を通じ、加盟店モバイル決済を成功させるためのポイントについて考えることにしよう。
●スモールビジネスの55%がカード未対応
米会計ソフト最大手のインチュイットは、米スモールビジネスの実態を調査した結果を発表した。それによると、米国のスモールビジネス2,700万件のうち、55%がカードをまだ受付けていないことがわかった。調査は2011年11月、米スモールビジネスオーナー1,000人を対象に、オンラインで調査をしたものである。
スモールビジネスの半数以上がカード加盟店になれないか、カード決済端末の導入コストが高いなどの理由でカードを受付けていない。
つまり1,500万件のスモールビジネスをカード加盟店にできる可能性がある。年間取扱高にすると約1,000億ドル(約8兆円)の市場規模だ。
調査によると、スモールビジネスはカード受付けができないために、1社につき年間約7,000ドルの機会損失が発生しているという。これに1,500万件を乗じると約1,000億ドルという規模になる。
スモールビジネスはまた、支払いの遅れで月間平均5,140ドルの待ち状態に陥っている。これを全米規模に換算すると1.7兆ドルが未回収になっていることになる。カードを受付ければ、立替払いが確実に実行され、この問題が解決される。
クレジットカードを受付けたスモールビジネスのうち、現金だけを扱っていた時期より売上げがアップしたところは、83%にもなった。カード支払いを受付ければ、ほぼ確実に売上げを伸ばすことができるのだ。
その中で、最低月間1,000ドルアップしたところは52%、最低月額2万ドルの売上げをアップしたところは18%いることがわかった。月間約200万円の売上げアップ効果は驚異的だ。
さらに、カード受付け導入によって不良債権が減った、と回答したスモールビジネスは74%もいた。スモールビジネスは、モバイル端末を利用した決済ソリューションによって、コストをかけずにカード受付けができ、回収が速まり、売上げがアップする。