2012年11月7日6:00
Suica/PASMOを利用した来店促進サービスを「渋谷ヒカリエ」で展開
渋谷駅で降車した人が専用端末にタッチするとすごろくゲームが楽しめる
東京急行電鉄(東急電鉄)では、2012年9月13日~12月26日まで、PASMO/SuicaなどのICカードを使い電車で渋谷駅を利用して高層複合施設「渋谷ヒカリエ」に行き、地下3階と2階の2箇所の専用端末のいずれかにカードやおサイフケータイをタッチすると、お得なクーポンやプレゼントが手にできる「乗ってタッチdeラッキーすごろくキャンペーン」を開催している。同社では、ICカードやNFCタグ、スマートフォンなどを活用した鉄道の利用促進、店舗への来店促進に力を入れる方針だ。
「日本一訪れたい街・渋谷」の実現に貢献へ
渋谷ヒカリエの来店促進、東急沿線の他の施設への誘客を狙う
「鉄道の魅力を生かした連携企画により、渋谷ヒカリエに来店された方に渋谷の魅力を理解していただき、ひいては弊社の方針である『日本一訪れたい街・渋谷』の実現に貢献できればと考え、キャンペーンを実施しました」(東京急行電鉄 鉄道事業本部 事業統括部 プロジェクトチーム 長束晃一氏)
「乗ってタッチdeラッキーすごろくキャンペーン」の参加者は、東急東横線および田園都市線、JR線、地下鉄線(銀座線、半蔵門線)の渋谷駅で利用したカードやおサイフケータイがそのまま利用できる。参加者は、渋谷ヒカリエの2箇所の専用端末にタッチすると「乗ってタッチdeラッキーすごろく」が始まり、デジタルサイネージ端末のサイコロがスタート。出た目の数だけ、渋谷―自由が丘―二子玉川のトライアングルエリア(全17駅)をすごろく盤に見立てた東急線の駅を進むことが可能だ。
参加は1日1回までタッチができ、キャンペーン期間中であれば何度も利用可能だ。次回以降は同様の手順で、前回停止した駅から駒を進めることができ、自由が丘と二子玉川に停止するとラッキークーポンを手にできる。また、キャンペーン期間中に、1周まわってホームステーションの渋谷まで戻ると同様にクーポンを取得可能だ。
同サービスでは、渋谷ヒカリエに加え、二子玉川や自由が丘の施設のクーポンも提供している。長束氏は、「他社の路線を使って訪れた方にもゲームを体験してもらうことにより、より多くの方に渋谷ヒカリエや東急沿線の魅力を知っていただきたいと考えています」と話す。ターゲットとしては、渋谷ヒカリエに来店する20~40代の女性を想定している。
参加者の利便性と店舗オペレーションから紙のクーポンを選択
Webサービス登録者は現在地やランキング確認が可能に
ラッキークーポンは専用端末から発行されるが、デジタルクーポンではなく紙のクーポンを出力している。今回のシステムでは、発行するクーポンの枚数の上限を事前に決めており、クーポンを提供する店舗や施設も販促にかかる費用の上限をあらかじめ設定できる。店舗側のスタッフの紙の受け取り・保管を励行すれば、回収数やそれに伴う売り上げ情報の付け合せも可能だ。
サービス開始から約一カ月半が経過したが、クーポン掲載企業の反応も良く、人気のクーポンの傾向もわかってきたため、今後は利用データを基に内容をブラッシュアップしていきたいとしている。
現状、1日数百タッチが行われており、タッチ数は日増しに増えているそうだ。東急電鉄では認知度向上に向け、電車の中吊りや交通広告、Webサイトなどで告知している。また、渋谷ヒカリエでの館内放送やデジタルサイネージ端末による告知も行っている。
「特に中吊り広告開始以降は大きく利用が伸び、当初想定したよりは成果が出ています」(長束氏)
また、参加者は「Honey map」というWebサービスに登録すると、参加者のランキングや自分の停車駅、ラッキーランキング(サイコロの目が出た数)などを確認でき、インターネット上のキャンペーンにも参加可能だ。希望者はタッチするだけで、Twitterに自動投稿が行える。
「最終的には、キャンペーン終了後も継続的に渋谷ヒカリエをご利用いただきたいと考えています。そのため、今回のWebサービスでは、登録者がメールマガジンに移行するのを促進する仕組みを整えています」(長束氏)
O2Oをリアル側からアプローチ
NFCタグとスマートフォン活用の実験も実施
なお、今回のシステムはシナジーメディアの協力のもと開発している。シナジーメディア 代表取締役社長 佐藤正一氏は、「ICカードを利用することで、タッチするだけで個人情報に抵触することなく、電車に乗って渋谷駅に降りたことを判別可能です。また、複雑な操作もなく、老若男女が楽しめるように意識しました。スマートフォンは急速に普及していますが、おサイフケータイ非対応端末もあり、個人情報の登録などが必要になる場合も多いです。また、GPSなどの『受動的』な位置情報と違い、『能動的』に自分自身でタッチすることで、正確な位置情報を捕捉することも可能です」と自信を見せる。
また、ITやマーケティングのトレンドとなっている「Online to Offline」をリアル側からアプローチしていることも特徴だ。生活者が普段利用するPASMOやSuicaをそのまま利用でき、誰でも気軽に参加できる。
東急電鉄では、他の商業施設などでもPASMO等のICカードを活用した顧客利便性の向上に取り組んでいる。以前は、ICカードをマーケティングソリューションに利用することは顧客への認知の部分で課題があったというが、既存のICカードをタッチするだけで済む簡便さは徐々に生活者に浸透してきているそうだ。
NFCタグを活用した取り組みにも力を入れる。同社では、2012年3月26日~4月22日まで、トッパン・フォームズ、ヤフーと協力し、NFCタグとスマートフォンを活用した実証実験を東急東横線の渋谷駅、自由が丘駅の二駅で実施した。お得なクーポン情報などをICタグに埋め込んだスマートポスターを対象の二駅にそれぞれ設置し、ヤフーの「Yahoo!ロコ」から実店舗へ送客したが、「メディアへの露出も含め、最初の実験としての目的は達成できたと思います」と長束氏は成果を口にする。
今後も東急電鉄では、ICカードやNFCタグ、スマートフォンなどを活用した鉄道の利用促進、店舗への来店促進を検討し、「日本一訪れたい・住みたい沿線」づくりに貢献していきたいとしている。