2012年12月19日8:00
「MasterCard PayPass」に加え、「Visa payWave」を発行へ
スマートフォン機能を活用したCRM展開により、新たな顧客価値を創出へ
オリエントコーポレーション(オリコ)は、他社に先駆けて「MasterCard PayPass」の加盟店向けサービスや近距離無線通信の国際標準規格である「NFC」の実証実験を行ってきた。同社では、2013年4月から、従来のMasterCard PayPass に加え、Visaが提供する非接触IC型決済ソリューション「Visa payWave」の発行を開始し、スマートフォンを活用したCRMサービスに力を入れる方針だ。
2013年4月からpayWaveの発行も予定
NFCスマートフォンを活用したノウハウ蓄積で先行
オリコは、業界に先駆けて2006年より「MasterCard PayPass」の発行と加盟店向けサービスの提供を行っている。すでにコレットマーレやイクスピアリではPayPassを搭載した提携クレジットカードを発行しており、EMVベースの「M Chip」で処理を行っている。
これまではプラスチックカードのみの発行だったが、スマートフォンにペイメントカード情報が搭載されることにより、クーポンや位置情報など、新たなサービスを展開できるインフラが整いつつある。オリエントコーポレーション 執行役員 顧客営業推進グループ CRM開発推進部長 山口 朗氏は、「弊社としてもポイントや割引、クーポン、位置情報などと連携したサービスと組み合わせて、お客様に新たなCRMサービスを提供する方針です」と説明する。ただ、「すべての機能をNFCで提供するのではなく、お客さまや加盟店のニーズに応じて適切なスキームを活用し、サービスを提供していきたい」とオリエントコーポレーション 顧客営業推進グループ CRM開発推進部 部長代理 長谷川 亮氏は口にする。
例えば、これまでオリコがクレジットカード会員向けに提供するポイントサービスはリアルタイム性がなかったが、「今後はリアルタイム性をもたせ、スマートフォンと組み合わせてポイントが利用できるなどのサービスを考えています」と山口氏は話す。
現在、PayPassやpayWaveは世界的に広がりを見せている。特に米国ではそう遠くない将来、非接触決済がかなりのウェートを占めるようになると予想される。オリコはNFCについても早期に着目し、2008年よりモバイルキャリアと数々の実験を行い、商用に対応したビジネスモデルを構築してきた。NFCスマートフォンを活用した実験も行っており、その課題は整理されているため、2013年4月からNFC対応スマートフォンによるPayPassと payWaveの発行も予定している。
スマートフォンならではの機能と組み合わせて提供
将来的には全カードにPayPassやpayWaveが載ると想定
PayPassやpayWaveは特別な電子マネーではなく、国際ブランドの電文に沿った商品であり、小額決済のみではなく金額を問わず利用可能となっている。また、将来的にはすべてのカードにPayPassやpayWaveが載ると想定している。イシュイングについては、まずは顧客サービスを考え、提携先への営業が中心となるが、他のクレジットカード会社の展開により、認知度が高まれば、幅広い加盟店での利用が見込めると考える。
「マグストライプの時代からEMVとなり、EMVコンタクトレスを利用したPayPassやpayWaveになったように、決済の進化だと捉えています」(山口氏)
ただ、オリコでは、プラスチックカードを携帯電話に載せただけでは、サービスとしてそれほど広がりは見込めないと考えている。すでに「iD」や「QUICpay」のアプリをスマートフォンや携帯電話で提供しているが、決済機能単独のサービスだったため、売り上げの中心はプラスチックカード搭載サービスのほうが多かったという。それを踏まえ、スマートフォンを利用した決済サービスを普及させるためには、スマートフォンならでは機能と組み合わせて提供することが必要であるとしている。具体的なサービスについては、ワレットでの提供も含め検討している。
クレジットカードに加え、プリペイドカードの発行も検討
決済によりカスタマー・エキスペリエンス向上につなげる
また、PayPassとpayWaveは、クレジット、デビット、プリペイドのすべてに対応できるが、オリコでも「プリペイドカードの発行も検討していきたい」(山口氏)としている。
2013年7月以降は、スマートフォンで提供される「iD」と「PayPass」の決済サービスが国内外問わず利用できる可能性があるが、オリコでも「iD+PayPass」、「PayPass」、「payWave」と3つのアプリケーションを提供していく方針だ。
また、来年以降、PayPassやpayWaveの加盟店は徐々に広がると考えているため、「これまでは加盟店ビジネスはそれほど行ってきませんでしたが、今後はそこも強化していきたいです」と山口氏は話す。加盟店の立場からみると、従来は、PayPassのアクワイアリングをしても利用するシーンは限られていたが、今後はiDと連携して加盟店開拓ができる可能性がある。2013年の7月以降はPayPassの加盟店を獲得すれば、間接的にiDのアクワイアリングができる可能性があるため、各社が加盟店を増やしていけば費用対効果を確立できると期待している。
米国では、セルフ端末やスマートフォン決済の普及により、カスタマー・エキスペリエンスが着実に向上しているという。山口氏は最後に、「日本でもNFCを含めた快適な決済サービスを提供することにより、加盟店が生活者に対してのカスタマー・エキスペリエンスを向上できるようにしていきたい」と意気込みを語った。