2013年2月1日10:00
NFCの技術仕様とテスト仕様の策定、普及・啓蒙活動を行う業界団体「NFCフォーラム」は、家電(Consumer Electronics)、ヘルスケア(Health Care)、決済(Payment)、小売流通(Retail)、交通輸送(Transport)の各ビジネス領域に特化したSIG(Special Interest Group)の活動を開始した。NFCフォーラムのWebサイトでは、同取り組みを明らかにするためのウェブキャストを2013年1月24日より公開している(NFC Forum Webcasts:http://www.nfc-forum.org/resources/Webcasts/)。
「NFC Goes Virtical」と銘打たれているこのウェブキャストでは、同フォーラム議長(チェアマン)でありソニー FeliCa事業部の田川晃一氏のほか、同フォーラムのSIGを率いるリーダーらが登場。田川氏は、「NFCフォーラムのそれぞれのSIGは、各ビジネス領域の多様なリーダーと親密な対話を通じてNFCの改善と普及を行っています。NFCの標準化作業が、業界横断的にシンプルさを追求するといういわば水平的な性格を持つのに対し、SIGの活動は垂直的な深堀りの活動になります」とその位置づけを紹介。さらに同フォーラム・ダイレクターのデビー・アーノルド氏は「他の標準化団体や業界団体とはもちろんですが、ウェブキャストをご覧になって、技術的な改善やサービス導入のために価値あるアドバイスは、個人を含めどのような声もぜひいただきたいと思います」と関係者のさらなる参画・協力を訴えている。
EMVCoを中心に「EMVコンタクトレス」の仕様が固められ、NFC技術が導入されているペイメントの分野はもちろんだが、報告の見どころは、むしろこれから普及のかたちが固まろうとしている分野かもしれない。
すでに「ANT+」や「N+」など他の無線通信規格が利用されておりBluetoothでのストリーミングにも期待がかかるヘルスケア分野では、データーの交換よりも各国の規制とも絡みを持つセキュリティ部分での導入に期待が寄せられている。Health Care SIGの報告は、この業界の標準化団体であるコンティヌア・ヘルス・アライアンス(Continua Health Alliance)のチャックパーカー理事が行っている。
Retail SIGのスピーチを行ったデビー・アーノルド氏は、「ペイメントはコアですが、それ以外にもたくさんの活用事例があり、多くのベネフィットをもたらしています」と説明する。リテイラーにとってはワン・トゥ・ワン・マーケティングはもちろん、店舗の各オペレーションを改善し、在庫管理と発注、レジ回りのスピードアップ、リアルとネット双方の販売手法の融合、返品の受け付け、勤怠管理などでも効果を発揮するという。また、消費者にも、クーポンやロイヤリティなどを提供できる。さらに、製造者に向けても、アイテムと陳列棚のタグ管理、ブランド管理、パッキングにおける追加情報の提供(商品情報や保証期限、返品についての情報)などが考えられる。
Retail SIGでは、「小売業者から金融機関までを集め、初動について議論を戦わせるべく今春にも”Deep dive”することになる」という。具体的には、ホワイトペーパーの制作・発行、イベントを企画している。また、全米小売業協会(NRF)やGS1、スマートカードアライアンス(Smart Card Alliance)とともに、教育的プログラムを開発するそうだ。
GS1のキャメロン・グリーン氏は、「GS1の主眼はメーカーから流通業全体を縫合するサプライチェーンですが、NFCの導入にも大きな期待を寄せており、GS1の規格とNFCの技術は共に発展するべきものであると考えています。Retail SIGとは共に助けあって世界共通の技術を発展・改善していきたい」と述べている。
Transport SIGについては、IATA(国際航空運送協会)とすでに親密な協議を進めているそうだ。昨秋には、航空会社や空港運営者と、数多くの活用事例について話し合い、導入時の課題の解決方法を議論した。航空業界は、NFCフォーラムの協力を必要としており、今後も協議を重ねていくという。
どの業界団体とNFCフォーラムがどのようなレベルで対話が行われているかを垣間見ることができることもこのウェブキャストの見どころであろう。
最後の質疑応答において、田川氏は、「出版業界との対話も盛んに行われています。昨年はニューヨークの420人のパブリッシャーの前で話す機会を得ました。NFCによる情報発信は表紙以上の力を持つと、ニュース・スタンドにタッチするソリューションに注目が集まりました」と話す。
NFCフォーラムでは、NFC技術をより良いものにするため、他の標準化団体とも関係を構築していきたいとしている。なお、今回のウェブキャストでは講演の音声だけでなくスライド画像も配信されている。