2013年8月5日10:07
NFCフォーラムが最新活動内容や普及に向けてのポイントを解説
NFCの技術仕様とテスト仕様の策定、普及・啓蒙活動を行う業界団体「NFCフォーラム(NFC Forum)」は、2013年8月2日、「第2回ジャパンミーティング」をNEC本社ビル多目的ホールで開催した。同ミーティングでは、NFCに興味のある人を対象としたオープンセッション、NFCフォーラムメンバー企業限定のメンバセッションの2部構成となり、90名以上から申し込みがあったそうだ。従来、NFCフォーラムは会員企業をベースに活動を行ってきたが、NFCの普及に向け非メンバーとの交流を図るため、5月に続き今回もジャパンミーティングを開催することとなった。
NFCフォーラムには190社以上の企業が参加
コンティニュア・ヘルス・アライアンスの最新ガイドラインに採用
まずは、NFCフォーラム チェアマン(議長)田川晃一氏が、同フォーラムの近況とNFCを取り巻く動向について説明した。
NFCフォーラムには現在、190社以上が参加している。5月のジャパンタスクフォース時は180~190社だったため、会員数は伸びている。日本のメンバーは20社強で米国に次いで2番目に多い。NFCフォーラムは年に3回、アジア、北米、欧州で総会を行っているが、来年秋の総会を日本で行う予定となっている。
規格関係の最近の話題としては、ヘルスケア関係の業界団体であるコンティニュア・ヘルス・アライアンスとリエゾンを結び、「Personal Health Device Communication(PHDC)」の最新ガイドラインに採用されたそうだ。
また、NFCでタッチして接続情報をBluetoothやWi-Fiに引き継ぐ「コネクション・ハンド・オーバー」についてもバージョン1.3を出し、より高速化ができるようになった。さらに、2つのつなぎたいデバイスに対して、NFCをタッチすることで双方への接続を可能にする機能も追加した。また、タグのためのシグネチャーの規格「Signature Record Type Definition」があるが、HASHのアルゴリズムが古いため、これを最新版にアップデートしている。
NFCフォーラムでは、第一世代の規格をもとに「1st Certification Wave」による認証試験プログラムを行っているが、同社のWebサイトには29製品が登録されている。また、現在の認定はコアの通信部分のみとなっているが、相互接続テストを検証できなかったため、今後『Plug Fest』としてインターオペラビリティを検証する枠組みを用意していく方針であるそうだ。
現在、NFCフォーラムでは数多くの団体とリエゾン契約を締結。NFCは数多くの分野で応用が可能であり、参加メンバーの中には「こんなにバックログが多い標準団体はじめてだ」という声があるそうだ。
NFC普及に向けた4つの心配事とは?
ペイメント分野の苦戦もネックに
NFCを取り巻く環境も整い始めている。2012年で1億台強の端末が出荷されており、この数は2013年に倍増すると思われる。その一方で不安もある。最大の心配事は、端末は普及したが利用できるシーンが少ない点だ。
ユーザー視点で見た際の課題としては、NFCを知っている人がほとんどいないことが挙げられる。また、NFCを知らない人がNFC搭載端末を最初に利用してもらうハードルの高さもある。如何に、気軽に、身近にタッチしてもらう環境を整備できるかが普及のカギとなるだろう。
また、iOSとWindows、Androidなど、異なるOSのプロトコルの違いも課題となっている。さらに、海外においては、「NFC=ペイメント」という考えが根強いが、エコシステムを立ち上げるには複雑な要素があるため、苦戦しているのが現状だ。国内では、三井住友カードが、国内で初めてNFC対応スマートフォンに対応した非接触IC決済サービス「Visa payWave」の発行を2013年9月から開始すると発表しているが、これに続くサービス提供企業に期待している。また、ただ単にモバイルの中に決済機能を格納しても従来のカードと比較して何が違うのかが分かりづらいため、モバイルならではの付加価値を見出すことも必要であるとしている。
さらに、NFCタグは大量につくらないとコストが下がらないため、どのようなアプリケーションを用意すればNFCタグが搭載されるかを真剣に考えなければいけないという。例えば、NFCチップが家電やヘルスケア製品に投入されれば数は大量に出るが、現状ではNFCスマートポスターはそれほど数は出ないと考えているそうだ。
続いて、主要5分野の各ビジネス領域に特化した「SIG(Special Interest Group)」活動の最新状況についてNECの山木秀哉氏が説明した。NFCフォーラムでは、2012年10月から、家電(Consumer Electronics)、ヘルスケア(HealthCare)、決済(Payment)、小売流通(Retail)、交通輸送(Transport)の各ビジネス領域に特化したSIGの活動を行っている。例えば、ペイメント分野のEMV Coとはクロス認証について議論を進めている。また、航空分野ではIATAと活動しているが、ワーキングから外れてタスクフォースとして独立したそうだ。IATAとは、「ITATA NFC reference guide for travel」を作成中であり、2013年6月にドラフト、10月初版の発行を予定している。
その後、国内自動車メーカー大手が集まった業界団体、JASPARが登壇。JASPARでは、「車の鍵、カーシェア・レンタカーへの応用」「シート・オーディオなどへのカスタマイズ」「位置情報の取得と設定」「車両情報活用アプリ」「高速通信への切り替え」といった分野でのNFC活用を国内外で目指している。
そのほか、東洋製罐が「偽造防止容器の開発」、オライリージャパンとソニックムーブが「今秋出版のNFC Hacksとは?」、日経BPが「NFCアプリの紹介」、週刊アスキー編集部が8月5日発売の「NFC特集号の紹介」を行った。なお、来場者には週刊アスキーからNFCタグが配布された。