2013年8月27日8:00
変貌するメーカー通販の“今”を探る
総 論:通販で“何をしたいのか”を明確にすることが意味のある通販参入につながる
Eコマースの普及により、通販がごく一般的な販売方法になった今、メーカーにとって通販参入は単なる販路拡大にとどまらない意味を持つようになった。高い成果を獲得するためには、自社通販の目的を明確化し、目的に沿った施策設計を行うことが不可欠である。
メーカー通販の成功を阻む高いハードル
通販への参入を目論むメーカーが後を絶たない。健康食品や化粧品などの分野で多くのメーカーが通販への参入を果たし、一定の成果を上げたことに触発され、「それならば自社も」と考えるメーカーも多いのだろう。
確かに近年、通販参入へのハードルは大きく下がった。特にインターネットのみでの展開から始めるのであれば、サイトづくりから受注・配送・代金回収などのフルフィルメントまで、さまざまなアウトソーシング・サービスが用意されており、極端に言えば、販売する商品さえあれば、1カ月程度の準備で通販事業をスタートすることも可能であろう。マス媒体やカタログなどを用い、電話で注文を受け付ける場合でも、広告代理店や印刷会社、テレマーケティング・サービス・エージェンシーの協力などを仰げば、事業を立ち上げること自体は難しくない。
しかし、通販事業を軌道に乗せ、収益ベースに到達させるのは容易なことではない。その最大の要因としては、メーカーには、生活者との直接的なコミュニケーションの経験が圧倒的に不足していることが挙げられるだろう。
確かに近年、顧客志向経営の重要性が注目される中で、インターネットやコールセンターなどを通じて、生活者とのコミュニケーションの強化に取り組んでいるメーカーは多い。しかし、これらのケースにおけるコミュニケーションの相手は、そのメーカーの製品のファンや製品に不満を持ったユーザーなど、もともとそのメーカーとなんらかの関係性を持つ生活者が中心である。
しかし、通販で実際に「モノを買ってもらう」ためのコミュニケーションにおいては、もともと関係性が薄かった生活者に、自社製品に対する興味・関心を持ってもらい、購入を検討してもらい、最終的に“購入手続き”という面倒な作業をしてもらわなければならない。従って、提供すべき情報量は膨大であり、また、その“伝え方”においてもさまざまな工夫や配慮が必要とされるのだ。そして、その実践のためのノウハウやスキルは当然のことながら一朝一夕で身に付くものではない。
それでは、メーカーにとって通販参入が意味のないものなのかと言えば、決してそのようなことはない。実際に事業として軌道に乗せ、収益を上げる以外にも、通販の展開を通じて、さまざまな成果を上げている企業は少なくないようだ。今回の特集ではさまざまなかたちで通販に取り組むメーカーのケーススタディを中心に、“今”求められるメーカー通販のあり方を探った。