2013年12月27日8:00
ビーコンの夜明け
☆☆☆ NFCの閉塞感を破ったビーコン ☆☆☆
The Rise of Beacon
日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則
2014年、最初のテーマはビーコンだ。スマートフォンやタブレットが個人のライフスタイルを劇的にかえているが、その流れをさらに加速すると思われるのがビーコンである。
期待されたNFC非接触決済が離陸せず、閉塞感につつまれていたモバイルウォレット市場。そこに突如あらわれた光明がビーコンなのである。
それはちょうど初日の出に似た新鮮な輝きをもっている。期待感が神々しさにみえるのかもしれない。決済に新しい価値をつけられる。そういう期待感である。
ビーコンとはなにか。ビーコンは現金やプラスチックカードにない価値を創出できるのだろうか。
●iビーコンの衝撃
Appleが2013年6月に発表したiOS7で、最も衝撃的だったのはiBeacon(iビーコン)である。iビーコンはAppleのビーコンの名称だ。省電力のブルートゥース4.0(Bluethooth Low Energy: BLE)信号を使い、精度の高い位置情報サービスを可能にした。iビーコンは、ブルートゥース4.0を内蔵した他のビーコンから信号を受け、距離に応じて特定の情報をiOS機器に提供する。その情報はクラウドやローカルサーバから呼び出す。
美術館を例に解説しよう。美術館の主要な展示品のそばにビーコンを設置しておく。利用者はiビーコンを組込んだ美術館アプリをダウンロードし入館すると、まずウェルカムメッセージがプッシュ通知される。iビーコンが美術館に設置したビーコンとの距離を読んで通知した。
さらに、話題の展示品のそばに行くと、ビーコンとの距離をアプリが確認し、その展示品の詳細情報を表示する。作者のプロファイルや描画風景を、画像と映像でわかりやすく解説してくれる。マップ情報と連携すれば、その展示品までの近道にそって誘導することも可能だ。Appleがマップと位置情報に力を入れているのは、モバイル体験をさらに高度に、そして洗練したものにするためである。
iOS機器はビーコンとして機能するため、待ち合わせ場所で、相手が近づいてくると、どこにいるかをマップで確認できる。iビーコン同士でデータをシェアすることも簡単だ。
AppleはiPhone5SでNFC搭載を見送ったが、当面NFC搭載のiPhoneをだす気配はなさそうだ。NFCにはモバイル体験を革新するまでのパワーはない。もっと有益なサービス、もっとわくわくするサービスをAppleは考えている。
スマートフォンの世界を2分するiPhoneを差しおいて、世界のNFCモバイル非接触決済は成就するはずもない。非接触プロジェクトはNFC熱からさめ、一気にビーコンへとなびいた。