2014年7月4日9:31
ユーシーカードがデジタル・ウォレット・サービス「MasterPass」を国内初導入
美容サロン向け「Salon de Wallet」で対面・非対面決済を提供
クレジットカードのアクワイアリング(加盟店開拓)事業を中心にビジネスを展開するユーシーカード(UCカード)は、国際ブランドのMasterCardのデジタル・ウォレット・サービスである「MasterPass(マスターパス)」を国内で初めて提供する。同サービスの提供に向けては、大日本印刷(DNP)も協力している。まずは、「Salon de Wallet」サービス対応の美容サロンに対し、2014末から2015年初頭を目標にサービスを提供する予定だ。
「MasterPass」は世界4万以上の加盟店で利用可能
チェックアウトに加え、2014年からは対面決済がスタートへ
MasterPassはユーザーがいつでもどこでもショッピングが可能なデジタルショッピングサービスとなる。オンラインでの「チェックアウトサービス」、「ウォレット・サービス」、「高付加価値サービス」の3つの機能を提供している。
「チェックアウトサービス」は、日本での「楽天あんしん支払いサービス」やヤフーの「Yahoo!ウォレット」、海外のAmazonの「Pay with Amazon」といったサービスのようなID連携決済となる。「世界中で使える」ことが他社との差別化のポイントとなるそうだ。また、実店舗でもチェックアウトのサービスが可能となる(2014年からスタート可能)。世界中でQRコードを活用したリアル決済が話題となっているが、そのような展開に加え、NFCやBLE(Bluetooth Low Energy)にも対応可能だ。
「ウォレット・サービス」は、具体的には、①MasterCardブランドで展開するサービス、②MasterCardがホストを行うがパートナーのブランドで展開するサービス(ホワイトラベル)、③ホスティングやブランディングも導入サイトが行い、共通で利用できるAPIを提供するサービスの3つがある。今回のユーシーカードの事例は③となる。
さらに、ロイヤリティプログラム、クーポンやポイントなどを活用したオファーサービス(高付加価値サービス)も提供可能だ。国際ブランドとしては、Visa、American Expressなど他ブランドのカードも導入できる(JCBは非対応)。
MasterPassの強みは、スピード、安全性、簡易性となる。「どこでも使えて、簡単に決済できる」強みがあり、「加盟店の数が猛烈に増えている」とMasterCard マーケット・デベロップメント 上席副社長 広瀬薫氏は話す。MasterCardが提供するサービスのため、中抜きではなく通常のカード決済と同じプロセスで決済が行われ、加盟店にとっての負担が少ないという。
加盟店としてはすでに4万店舗で利用されている。MasterPassは、米国、カナダ、オーストラリア、イギリスでスタートしたが、イタリア、シンガポールでもサービスが発表されている。現在、アジア・パシフィックエリアでは、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、中国で展開されており、今回日本が新たに加わった。主に欧米の銀行がイシュアとなっており、「銀行が自身のカードホルダーの囲い込みとして行っている例が多い」(広瀬氏)そうだ。
「Salon de Wallet」は非対面の物販、対面のQR決済に対応
オムニチャネル活用による付加価値の提供へ
ユーシーカードでは、2014年末から2015年初頭に、日本初の事例として、美容サロン情報スマートフォンアプリ「Salon de Wallet(サロン・ド・ワレット)」と連携した、MasterPass 決済機能の提供を行う予定だ。
ユーシーカードでは、1年前からMasterPassの導入を検討していた。同社は、アクワイアリングを中心にビジネスを展開しているが、近年はタブレット等を利用したPOSデバイスも増えている。また、オムニチャネル活用による新たな付加価値の提供が必要であると考えたそうだ。今後は、ただ単に決済サービスを提供するだけでは成長は見込めないためマーケットの変化を取り入れたいという思いから今回の協働を決めたという。
ユーシーカードでは、MasterPassを活用することで、ネットとリアル双方で顧客接点を持ち、さまざまな決済を提供していく。MasterPassを提供する理由としては、店頭でシームレスにQRコードを活用した決済ができる点が魅力だったそうだ。ユーシーカード 事業開発部長 中野征治氏は、「会員組織を保有している加盟店に対してプラットフォームを提供し、お客様を送客していきたい」と意気込みを見せる。
同社では、MasterPassのプラットフォームを提供することで加盟店の販売活動を総合的に支援していく方針だ。アクワイアラとしての基盤を生かし、主に送客や決済機能を必要としている加盟店へのアプローチを行い、あわせて関係性の深いイシュアにもサービスを提供してきたいとしている。また、ビジネスパートナーのDNPはクーポン、ハウスプリペイドサービス、プッシュ通知といったサービスに強みを持つため、付加価値サービスも提供していく方針だ。さらに、近年注目を集める事前オーダーなどのサービスも考えられるという。なお、サービス名は現段階では未定だが、ユーシーカードの名前を前面に出すことは考えていないそうだ。
第一弾として導入する「Salon de Wallet」サービス対応の美容サロンに対し、商品を販売する「サロンEコマースサイト」での非対面決済、店舗でQRコードを活用した対面決済を提供する。ハイパーソフトは全国2,000以上のトップサロンに「Salon de Net/Salon de Wallet」を提供している。
店舗では財布やクレジットカードを取り出すことなく決済可能
大日本印刷、C-SAMと連携してサービス導入
「サロンEコマースサイト」では、アプリ内で販売されている美容関連商品をスマートフォンからネットショッピングする際に、最低限の操作で簡単に決済を完了できる。また、サロンの利用者は、店頭の施術を受ける席において、スマートフォンでQRコードを読み取るだけで、お財布やクレジットカードを取り出すことなく決済が可能だ。
今回の連携では、購買情報を管理するPOSサーバとの連携により、決済金額に連動したQR決済が提供可能だ。店舗では専用のリーダライタは必要なく、インターネット等の既存インフラを活用することで容易に導入できる。
なお、「Salon de Wallet」は、C-SAMが開発・提供するモバイル・サービス・プラットフォームを活用し、DNPがサービスをハイパーソフトに導入した。
同サービスは、美容サロンの顧客がヘアサロン、ネイル、エステ、マッサージなどの会員証をスマートフォンで一元管理できる機能や、美容・ヘルスケア・ファッションに関する新製品情報やクーポンを提供している。今回の説明会では、C-SAMによるMasterPass決済のデモも行われた。C-SAMは、MasterCardの子会社となっており、米国の「ISIS」など、世界で多数の商用モバイル・ペイメント・サービスを支援している。日本ではDNPと協力し、他の国際ブランド提供のサービスも支援しているが、「今後もモバイル・プラットフォームとして中立的なサービスを提供していきたい」とシーサム・ジャパン ビジネスデベロップメント ディレクター 山下昌宏氏は語った。