2015年5月22日7:00非接触IC決済の先進国、オーストラリアの現状は?コンタクトレスによる決済が5割を超え、HCEによるNFC決済が普及の兆し
オーストラリアは世界で最も非接触IC(コンタクトレス)決済の比率が高い国であるといわれている。実際、オーストラリアの関連企業に話を伺うと、非接触IC決済の比率は50%もしくは60%という声が聞かれた。また、NFCによるモバイルペイメントにも大手イシュア(銀行)がこぞって取り組んでいる。
半数以上の加盟店で非接触決済が可能
非接触IC決済の告知は「Tap&Go」を訴求
現在、VisaやMasterCardのクレジットカードを発行する銀行(イシュア)は、コンタクトレス搭載のカードを発行している。現地の2大スーパーマーケットといわれるコールス(Coles)とウールスワース(Woolworths)を筆頭に、カフェやファストフード、タクシーなどで非接触ICカードによるスピーディーな決済が利用可能だ。イシュアにより基準は異なるが、A100ドル未満はサインレスで支払いが可能で、100ドル以上はタッチ&PINになるそうだ。
決済については、VisaのVisa payWave、MasterCardのMasterCard PayPass(グローバルではMasterCard Contactless)に加え、American Expressのコンタクトレス決済も利用できる。
また、オーストラリアでは、銀行が発行するキャッシュカードを決済に利用できる「エフトポス(EFTOPS)」が日常的に利用されているが、同カードでもコンタクトレス決済がスタートしている。
オーストラリアでコンタクトレス決済が浸透した理由については、カードへの搭載が進んだことに加え、半数以上の加盟店で実際に利用できることが挙げられる。また、現地の生活者に話を伺ったところ、Visa payWave、MasterCard PayPassといった決済ブランドとしての認知よりも「Tap&Go(タップ・アンド・ゴー)」というイメージが強いということだった。実際、テレビのコマーシャルなどでも「Tap&Go」を訴求しており、簡単にかざすだけで支払いができることをPRしている。
なお、オーストラリアでは、決済端末としてインジェニコがトップシェアとなっている。実際、街中でもインジェニコ製の端末を見かけることが多かった。また、インジェニコやベリフォンの端末は、一台の筐体で接触ICカードの取引も非接触の取引も可能となっている。日本における決済時には、非接触決済で支払う場合、店員に支払い手段を告げてから決済を行うが、オーストラリアでは特に非接触の支払いであることは言わなくても、カードをかざせばそのまま支払いが可能だ。
非接触ICカードの普及率の高さをベースにNFCでもリードか?
接触ICカードによる「Chip&PIN」取引が進む
また、オーストラリアでは、コモンウェルス銀行、ウエストパック銀行、ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)といったトップクラスのイシュアがNFCの非接触決済に取り組んでいる。まだ初期の段階だが、たとえば、コモンウェルス銀行ではNFCのホスト・カード・エミュレーション(HCE)を利用した決済サービスをトークナイゼーションと組み合わせて提供している。非接触決済が普及している環境ということもあり、「NFCにおいても世界をリードすることができる」と期待する関係者は多かった。
そのほか、オーストラリアでは、接触ICカードによる「Chip&PIN」取引が進んでおり、不正利用の減少で成果をあげている。オーストラリアのAPCA(Australian Payments Clearing Association)によると、現地で増加傾向にあったカード偽造やスキミングによる不正が、2011年度以降は減少するなど、成果をもたらした。
なお、ペイメントナビでは、現地のイベント「Cards&Payment Australia」など、オーストラリアの決済事情について、「アジア・パシフィックエリアの決済ビジネス」特集で紹介する予定だ。