2015年9月9日7:13
ヤフーは、2015年9月4日、IT技術を活用した地方自治体の多様な課題解決法を考える「地域活性化フォーラム2015 東京」をベルサール東京日本橋で開催した。ビザ・ワールドワイドジャパン(Visa)では、日本再興戦略において政府が推進するキャッシュレス化政策をはじめ、過半数の都道府県がすでに導入済みの自動車税のカード納付、ふるさと納税導入拡大に効果を発揮するカード決済、給付の効率化・不正受給の防止に役立つ政府向けプリペイドカードなどについて事例を交えて紹介した。
キャッシュレス化推進に向けた対策
2014年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂において、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性向上を図るための対応策が取りまとめられた。具体的には、①訪日外国人向けの利便性向上、②クレジットカードなどを消費者が安全に利用できる環境整備、③公的分野の効率性向上の観点から電子決済の利用拡大――となる。
2014年の訪日外国人は1,300万人を突破し、2020年に2,000万人、2030年までに3,000万人の目標を掲げており、訪日外国人による消費額は2030年には4.7兆円になる見込みだ。ただし、「日本ではクレジットカードに頼らないことが得策であり、現金を持って歩くのが基本原則」という諸外国で紹介されたように、クレジットカードが利用できない加盟店も多い。日本における民間最終消費支出に占めるクレジットカード決済の割合は14%程度であり、Visaが実施した調査でも旅行者はクレジットカード支払いができれば消費額は増えると44%が回答している。また、現在のカード支払いのインフラを整備しないと約4,300億円の損失になるという。
クレジットカード決済導入に向けての対策として、小規模加盟店には「mPOS」と呼ばれるスマートフォンと連動した低価格の決済端末の導入が挙げられる。また、経済産業省では、地方商店街における決済システムの構築を目指し、合計22の地域において決済端末の導入が決定された。また、加盟店でクレジットカード決済等が利用できる表示を目立たせる取り組みを行っている。
さらに、セブン銀行では、高山市が積極的に誘致している外国人観光客に向けて、十六銀行高山駅前支店内にセブン銀行ATMを設置。海外で発行されたキャッシュカード・クレジットカー ドで直接、日本円の現金の引き出しが可能となった。
自治体におけるカード決済の活用が進む
Visaでは、公的分野の効率性向上として、政府・自治体向けの電子決済ソリューションも提供している。近年では、公金・税金を含む、小売以外の業種における決済が増加しているそうだ。たとえば、一部自治体では、従来の税収のほかに、ふるさと納税の寄付金により歳入が増加。また、県税や市税の納付にクレジットカード決済を導入することにより、納付率と業務効率を実現できる。
ふるさと納税寄付では、ふるさと納税寄付による歳入が自治体の税収額を上回るケースがでてきているそうだ。北海道の上志幌町では、寄付手法別の割合において、70.4%がクレジットカード決済となった。
公金・税金支払いも広がっている。自動車税は、2015年4月末現在、25都道府県がクレジットカード決済を導入。たとえば、千葉県では、納期内納付に占めるカード納付率が約3%となり、納税者の利便性向上につながったそうだ。また、市区町村税でクレジットカード決済を導入した富士吉田市は、2011年度、山梨県でワースト2の納付率だったが、現在は着実に県内納付率の順位が改善しているそうだ。東京都では、クレジットカード納付の対象税目を増やすことで、全体の納付率が上がっているという。
Visaプリペイドカードの活用
なお、Visaでは、給付の効率化・不正受給の防止に役立つ政府向けプリペイドカードを推進している。Visaプリペイドカードは、全世界のVisa加盟店とATMで利用でき、残高の範囲内で利用できる。また、与信が必要なクレジットカードとは違い、原則誰でも入手可能だ。企業/自治体向けのプリペイドカードでは、報奨、給与、日当、自治体給付、福利厚生、保険金支払いといった分野で利用可能だ。自治体への展開として、たとえば米国ではVisaプリペイドカードによる社会保障費給付事例として、48州でプログラムが展開されているそうだ。国内では、大阪市の生活保護受給(パイロット事業)、大阪府の生活支援事業で活用されている。
また、物品調達、出張、車両経費といった、自治体のカード調達の主要取引でもカードによる調達が海外では展開されている。
東京では石破茂氏による基調講演を実施
「地域活性化フォーラム2015」は、自治体職員限定の参加となり、6月26日に大阪、7月10日に札幌、7月24日に福岡、8月21日に仙台、8月28日に広島で開催されたが、東京開催が締めくくりとなった。
東京開催では、内閣府特命担当大臣 地方創生、国家戦略区域特別担当 石破茂氏が登壇。「地方から創生する我が国の未来」と題し、基調講演を行った。
また、ふるさと納税を通じた地域活性化事例について、ふるさと納税ポー タルサイト「さとふる」を運営するさとふるが講演。ヤフーでは、ITを活用した地域活性化支援について紹介した。さらに、地域活性化に向けた3つの事例講演も行われた。
※当初の記事で東京開催の日時が誤っておりました。正しくは9月4日なります。お詫びして訂正させていただきます。