2015年11月16日8:00
WeChatの約9億、Payment利用の約4億のユーザーを取り込む
大丸松坂屋百貨店は、2015年9月30日から、訪日中国人観光客の買い物支援の一環として、中国最大のSNSサービス「WeChat(微信)」が展開している決済サービス「WeChat Payment」を導入開始した。心斎橋・梅田・京都・神戸・東京・札幌の大丸6店舗、名古屋・上野の松坂屋2店舗のインバウンド重点売場に導入している。
インバウンド需要の3分の2占める中国人観光客を取り込む
「WeChat Payment」は中国テンセント社が運営するチャットアプリ「WeChat」がユーザー向けに展開している決済サービスとなる。同サービス導入により、訪日中国人観光客は、中国国内同様に、スマートフォンのバーコードを会計時に端末にかざすだけで決済できるようになる。日本では、ネットスターズが代理店となって運営し、決済資金は三井住友信託銀行の信託スキームを通じて支払われる。
「WeChat Payment」は、2015年7月にネットスターズにより日本上陸が発表され、大丸松坂屋百貨店では8月中に社内で導入を決定した。採用の決め手となったのは、まず、第一に訪日の顧客利便性の向上に大きく寄与すると判断したからだ。インバウンドの需要については、今年の中間決算(3月~8月)において、前年比4.5倍に伸長し、中でも、中国人の利用者は、3分の2を占めている。同社でもインバウンド需要に関しては、百貨店業界では明確な成長マーケットとして捉えられており、社内からも思い切った取り組みを求められていると感じているそうだ。
「導入検討時に、WeChatのアカウント数が約9億、そのうち、Payment利用のアカウント数が、導入から2年で約4億という、中国では、現地での生活に広く浸透しているシステムであることを知り、また、実際に現地では小口の買い物に広く普及しているという意見も耳にしました。純粋に顧客利便性を高めることが、結果としてさらなる需要獲得につながるものと考えました」(大丸松坂屋百貨店)
また、導入に向けては、三井住友信託銀行の信託スキームを通じて支払われるということも、決定要因の1つとなった。
店員が顧客のカードを預からなくて済むため、顧客の安心感を享受
まだサービス開始から間もないが、単価については、利用限度額もあるシステム(上限1取引3万元)となり、あまり高額品には利用されないと想定している。
「店舗スタッフのオペレーションは、Payment決済と、レジ入金との2オペレーションですので、慣れるまで時間がかかるのではと、一部では危惧しておりましたが、事前にネットスターズによる、説明会などを開催し、スタッフにも、慣れていただいていたことで、大きな混乱はなく運営できていると思います。通常のカード決済ですと、お客様のカードを一旦お預かりしてしまうことが、日本の百貨店で買い物をする際の不安な点として上げられていますが、そういったことがないのは、お客様にとっては安心なのではないかと思います」(大丸松坂屋百貨店)
<国慶節WeChatシェイクキャンペーン>を実施
大丸松坂屋では、WeChat公式アカウントフォロワー獲得を目的にしたキャンペーン<国慶節WeChatシェイクキャンペーン>を実施している。同キャンペーンでは、店内の所定の位置で「シェイク」をすると、大丸・松坂屋のWeChat公式アカウントが表示される。フォロワーになり、公式アカウント上で店内に表示されたパスワードを入力すると、「さくらパンダ」のデジタルステッカーが手にできるもの。
WeChatユーザーが所定の場所でスマートフォンをふると、Bluetoothを通じてビーコンから情報が取得できるWeChatの機能「シェイク」を活用している。「シェイク」は中国でも店頭で利用者が楽しみながら情報取得し、販売促進につなげられる機能として現在流行している手法となっている。なお、ビーコンはネットスターズが提供しているという。
大丸松坂屋では、「フォロワー数は増えておりますが、まだ、これからの取り組みと認識しています」とコメント。今後、WeChat上の大丸・松坂屋の公式アカウントを浸透させられれば、顧客に情報を発信したり、顧客からのお問い合わせを受けたりと、さらなる顧客の固定客化、インバウンド売上の安定化につなげていくことができると期待する。
インバウンド対応として台湾最大の共通ポイントカード「HAPPY GO」のキャンペーンにも参加
そのほかのインバウンドの取り組みとしては、2015年10月20日から12月19日まで、台湾でユーザーが多い共通ポイントカード「HAPPY GO」のキャンペーンに参加している。大丸松坂屋で買い物をし、顧客にキャンペーンサイトに登録してもらうと、0.5%の還元率のポイントを付与するそうだ。なお、「HAPPY GO」は、台湾では会員数が1,200万人、ほぼ2人に1人が保有するポイントカードとなっている。