2016年1月28日8:16
非対面の決済代行事業者に留まらずイシュア・アクワイアラなど多彩なサービスを展開
ソフトバンク・ペイメント・サービス(以下、SBPS)は、決済代行サービスに加え、国際3ブランド(Visa、MasterCard、UnionPay(銀聯))の対面・非対面のアクワイアリング、ソフトバンク株式会社と共同開発のスマートフォン決済「ソフトバンクまとめて支払い」のサービス提供、Visaプリペイドカード「ソフトバンクカード」の発行など、多彩なサービス展開を行っている。オンラインの決済代行事業者に留まらないサービスを提供する同社の取り組みについて、話を聞いた。
5万店以上が決済サービスを利用
不動産、受験料、学費決済など、新領域を開拓
SBPSは、国内の決済代行事業者としてトップクラスの売り上げと加盟店網を誇る。2014年度の実績で1兆8,000億円の取扱高となっており、今期は2兆円に達する見込みだ。ソフトバンク・ペイメントサービス 営業本部 チャネル営業部兼加盟店事業推進部 部長 長田直樹氏は、「毎年120%の成長があり、新規のお客様も増えています」と話し、笑顔を見せる。
また、5万を超える加盟店が同社のサービスを利用している。加盟店の比率はデジタルコンテンツ系が多いが、物販、旅行、チケット、新業態などが増えてきている。長田氏は、「大手宿泊サイトや不動産分野(賃料の決済)への導入に伴い、幅広い業種の加盟店様に利用していただくことができるようになりました」と成果を口にする。たとえば、大東建託の子会社である大東建物管理では、「ハウスペイメント株式会社」を設立し、2016年春より大東建託グループが一括借り上げする建物だけではなく、全国の不動産会社が扱う建物なども対象にサービスを提供する予定だ。
近年は、これまでクレジットカード決済が採用されてこなかった領域の加盟店開拓も積極的だ。不動産、受験料、学費決済などでも採用されるケースが目立つ。また、Webサイトからの申し込みも昨年比で1.5倍増加しているように、Webマーケティングでも成果が見られる。カートとの連携も強化しており、毎月定期的にカート経由からの問い合わせも入っている。
携帯キャリア決済の利用も順調に増加
銀聯やAlipayによる越境ECも強化
SBPSではマルチペイメントを志向しているが、売上についてはクレジットカードが圧倒的だ。物販については、クレジットカードに次いで、コンビニ決済と携帯キャリア決済の利用が多い。携帯キャリア決済については、他の決済代行事業者よりも利用比率は多いと同社では分析。グループでキャリア事業を展開しているSBPSは、ソフトバンクと共同開発した「ソフトバンクまとめて支払い」を提供しており、加盟店からすればイメージが涌きやすいことが関係している。また、NTTドコモやKDDIの携帯キャリア決済もソフトバンク同様に提供しており、SBPSを通じて3キャリアの決済をまとめて導入可能だ。
さらに、ID決済(チェックアウト)を通じたポイント連携にも注力している。同社では、Tポイントを利用した決済サービスを提供した実績はあるが、今後は汎用的なサービス展開も視野に入れている。また、ID決済も楽天の「楽天ID決済」、リクルートの「リクルートかんたん支払い」、ヤフーの「Yahoo!ウォレット」は伸びる兆しが見られる。
なお、オンラインの加盟店開拓では今後、不動産や大学などへの営業を強化していきたいとしている。また、フリマアプリのメルカリには携帯キャリア決済の「ソフトバンクまとめて支払い」を導入しているように、CtoCの領域も強化していくそうだ。
2016年1月21日からは、訪日中国人観光客増加に伴い利用が拡大している越境EC向けの決済手段として「銀聯ネット決済」の提供を開始しており、「UnionPay(銀聯)」のメンバーシップライセンスを取得しているため、申し込みから加盟店審査・提供まで、トータルにサービス提供している。さらに、Alipayはソフトバンクグループとして関係も深いため、「加盟店様に良い条件でご提供できます」と長田氏は自信を見せる。現状、外貨決済は提供していないが、加盟店のニーズを踏まえ、検討していきたいとしている。
国際3ブランドの対面・非対面のアクワイアリングを実施
実店舗や訪問販売などで利用できる「端末決済サービス」を開始
オンラインに加え、リアル(対面)での展開も強化する方針だ。同社では、国際3ブランド(Visa、MasterCard、UnionPay(銀聯))の対面・非対面のアクワイアリングの権利を取得。ここ数年は決済代行同士の手数料競争も厳しくなっているが、非対面の営業では自社で審査を行う柔軟性が武器になっている。なお、「UnionPay(銀聯)」のリアル展開は、2016年春以降の予定となる。
対面取引では、実店舗や訪問販売などで利用できるクレジットカード決済「端末決済サービス」の提供を、2016年1月19日から開始している。ソフトバンクグループは大手との接点も深いため、POSと連携した店舗向けの端末も提供していく方針だ。
「弊社は決済の領域の中で深堀していく意識があり、たとえば決済代行以外にアクワイアリング、イシュイングもやっているのでバランスよく伸ばしていくことが利益の最大化につながります。大手企業に響く基盤の構築やスペックの整理も含めて強化していきたいです」(長田氏)
なお、不正利用については、これまで、オンラインの決済で高額な商材が狙われるケースが多かったが、健康食品やおむつなどの日常の雑貨類にも広がっているため、対策を強化している。SBPSでは、イーディフェンダーズと連携した、オンライン決済でのチャージバック保証を提供しているが、保証対象の決済手段の拡大や他サービスとの連携も検討している。
携帯一台ですべてが完結する世界観を目指す
携帯キャリアは新たなテクノロジを生み出す最良のポジション
当面の目標としては、今年度の取扱高で2兆円を達成することとなる。また、早期に3兆円、4兆円を目指していきたいとしている。将来的な構想として、「ソフトバンクグループの決済事業者として、携帯一台ですべての決済が完結する世界観を目指していきたい」と長田氏は意気込む。SBPSでは、ソフトバンクとともにVisaプリペイドカード「ソフトバンクカード」を発行したが、将来的には同カードもモバイルで提供できる流れを作っていきたいそうだ。
ここ数年はFintechがバズワードとなっているが、国民の3人に一人が利用するソフトバンクは、新たなファイナンスサービスやテクノロジを生み出せる最も近いポジションにいると捉えているそうだ。長田氏は、「決済では、トランザクションが流れていますので、ビッグデータを活用し、加盟店への支援に役立てていければと考えています」と熱い思いを口にした。