2016年3月17日8:00
システム・環境の整備によってショップのスムーズな免税対応や決済をサポート
タイや香港からの個人旅行客に人気の高いパルコでは、早い時期からインバウンド需要に目を向け、免税対応や決済手段の拡充などを進めてきた。免税手続きに関しては、代行カウンターを設けるのではなく、各ショップで対応する方法を採択し、導入の促進を図る。決済手段の拡充に加え、海外の企業やインフルエンサーとの協業の成果もあって、外国人客は順調に増加を続けている。
外国人客が1割に達する店舗も
使いやすい免税手続きサービスを導入
パルコでは、数年前からインバウンド対応に力を入れてきた。基幹店舗の渋谷PARCOの場合、総売上高に占める海外発行クレジットカード決済額は、2014年度に約6%だったものが、現在は約11%にまで拡大。アンケートの結果から、この中にはリピーターも少なくないことがわかっている。
PARCOに来店する外国人観光客は、国・地域別ではタイ、香港からが最も多く、次いで中国、台湾、韓国が第2グループとなっている。ツアー客が少なく、個人旅行客が多いことも特徴だ。
「中国の春節の時期などに10日間程来店が増えることはありますが、もともと中国人のお客様の割合はあまり高くないこともあって、月単位で見ると外国人の客数はほぼ右肩上がりで伸び続けています。今後もこの傾向が続くと予測しています」(パルコ メディアコミュニケーション部 部長 久保田晋一氏)
同社ではこれらの外国人客に対し、ショップごとに免税対応を導入している。しかし2012年のサービス開始から数年間は、免税店の許認可を受けるショップは限られており、各店10~30にとどまっていたという。
そこで2015年2月に、グローバルブルージャパンが提供する免税手続きサービスを導入。現在では渋谷、札幌、池袋の各店では100近くのショップで免税対応が可能になっている。同サービス導入により、従来は利用者が書類に手書きで記入しなくてはならず、10分前後かかっていた手続きが1~2分で済むようになり、CS向上にもつながっている。
大型SCでは、代行カウンターを設けて免税手続きに一括対応しているケースもみられるが、同社ではその方法を採らなかった。その理由は、同社の場合、1つのショップでの平均客単価が約1万5,000円と高く、複数のショップでの買い物を合算しなくても免税の対象になる場合が多いことと、会計後にわざわざカウンターに足を運ぶことなく、その場で免税手続きができたほうが、顧客にとって好都合だと判断したからだ。
決済手段に関しては、2011年12月に「銀聯(ぎんれん)カード」への対応を開始。さらに現在、渋谷PARCO内の直営セレクトショップ「ミツカルストア by ワンスアマンス」において、リクルートライフスタイルが提供するアプリ「モバイル決済 for AirREGI」を導入し、中国のオンライン決済サービス「Alipay(アリペイ)」の利用を試験的に始めている。同部 山口豪氏は、「ショップの混乱を招かないよう、必要なものを見極めて導入していこうと思っています」と口にする。
海外企業やインフルエンサーと協業してプロモーションを展開
同社では海外のターゲット層にPARCOの認知を広げるため、各国の人気ブロガーなどインフルエンサーを招いて、ショップを取材してもらっている。例えば、Instagramで約200万人のフォロワーを持つタイのインフルエンサーに取材・投稿してもらうと、5万~7万件の「LIKE!」が付くのだという。
ほかにプロモーションとしては、タイのサイアム・ピアットや香港のタイムズ・スクエアなど、海外のショッピングモール運営企業と協業し、カード会員の相互送客のトライアルを実施。互いの店舗でクレジットカードを提示して買い物をすると、割引やノベルティの提供などの特典を受けられるものだ。
また、その他の送客施策としては、2015年9月から2016年2月までの期間限定で、タイの旅行会社とタイアップし、JRの「Japan Rail Pass」を申し込んだ旅行客にフライヤーとクーポンを同封。1万通を送付し、2016年1月末時点ですでに5%以上の利用があった。
さらに、2015年9月には、海外からも商品を購入できるサービスを開始。従来、海外からのアクセスが多かったWEB取り置き・購入サービス「カエルパルコ」に、海外向け購入代行支援サービス「BuySmartJapan(バイスマートジャパン)」を追加して実現したものだ。
同社ではプロモーションと同時に接客に力を入れ、リピート需要の拡大を図っていきたいとしている。