2016年8月9日9:35
ヤフー(Yahoo! JAPAN)は、2016年7月1日から9月9日まで、全国5会場にて、自治体が抱えるさまざまな課題の検証や先進的な取り組みを紹介しながらインターネットを活用した課題解決の事例から明るい未来を展望するイベント「地方創生フォーラム」を開催している。
同フォーラムは自治体職員限定のイベントとなり、ビザ・ワールドワイドジャパン(Visa)とさとふるが協賛。2016年8月5日には、3会場目となる石川県・金沢市での開催がANAクラウンプラザホテル金沢で行われた。
午前の基調講演では、「新幹線後の金沢のまちづくり」と題し、金沢市 市長 山野 之義氏が講演した。2015年3月14日~2016年3月13日までの北陸新幹線利用者は約926万人で、4月13日には1,000万人を突破。兼六園、金沢城公園、金沢21世紀美術館などの主要施設への入場者数も対前年比で順調に増加している。また、大手企業の支社・支店も56(2014年10月~2016年7月)が新設され、コンベンション参加者やタクシーの利用者なども高い伸びを見せている。
山野市長は、“創造都市金沢”が世界の文化芸術の交流・発信拠点となるための取り組みや、ユネスコ創造都市ネットワーク金沢会議を契機とした、景徳鎮(中国)、アンギャルレバン(フランス)などの創造都市との交流方策、また、外国人旅行者の受入体制を整備し、戦略的に誘客を促進していくための取り組みなど、新幹線開業後の個性が際立つ金沢のまちづくりについて紹介した。
続いて、「地方創生をキャッシュレスがバックアップ-地域経済を元気にする電子決済化とは-」について、ビザ・ワールドワイド・ジャパンが講演した。
Visa講演の前半は、「日本再興戦略2016」をはじめとする、地域経済の活性化に大きく貢献する政府キャッシュレス化政策が地域経済、住民にもたらす好影響、インバウンド消費を確実に取り込む方策などについて、ガバメントリレーションズ アナリスト 野田 由比子氏が紹介した。近年は、訪日外国人旅行者が急増しているが、観光庁の調査によると、日本ではクレジットカードを利用できる加盟店、海外カードに対応したATMが少なく、全体で「クレジットカード・両替」に関する不満が第4位となっている。野田氏は、キャッシュレス対応の例として、静岡県のぬまづみなと商店街協同組合、金沢県庁の取り組みを紹介。また、アクセプタンスマーク掲示の重要性、政府補助金の活用事例等について述べた。
Visa講演の後半では、マーチャント セールス&ソリューションズ マネージャー 横地 舞氏が地域住民・法人の満足度向上施策について説明した。同氏は、高齢者向けの宅配スーパー「平和堂」の取り組み、近畿大学のVisaプリペイド付学生証、千葉県や埼玉県志木市における徴収、千葉県船橋市の給食費の支払い、地方のeコマース化などの事例を紹介した。
午後の基調講演では、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事 木下 斉氏が登壇。「稼ぐまちの作り方- 縮小時代に勝つ自治体の鉄則」と題して講演した。同氏によると、地域が発展するためには、従来の分配型支援ではなく、投資・回収を意識しながら、さらに、成功事例の模倣ではなく独自事業の推進を積極的に展開しなくてはならないという。さらに、行政に必要な市場意識、民間に必要な公的意識、この2つを作り出すための鉄則について解説した。
続いて、ふるさと納税の現状と地域活用事例について、さとふる 取締役 高松俊和氏が紹介した。さとふるは、自治体のふるさと納税にかかわる業務を、プロモーションから決済まで一社一括代行を実施。2016年8月には、計 100 県市町村での取り扱いを突破している。同講演には、学校法人日本教育研究団 事業構想大学院大学 出版部 月刊事業構想 編集長 織田竜輔氏も登壇。事業構想大学院大学では、ふるさと納税の意義を再認識した上で、具体的な事例を研究しながら、ふるさと納税の活用方法を検討していく「ふるさと納税・地方創生研究会」を立ち上げている。
さとふるでは、2016 年1月22日から25日に、ふるさと納税制度の利用意向などについて、20歳から69歳の男女計600人を対象にアンケート調査を行った。同調査結果によると、一般の約9割はふるさと納税について認知しており、今後は「どうやって寄付額を集めるか」から、「どうやって制度を活用するか」のフェーズに入っているとした。
一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事 アイパブリッシング 代表取締役 福島 健一郎氏は、「市民と行政が交流・協働するプラットホーム”シビックテック”による地方創生」と題して登壇。インターネットやスマートフォン等のデジタル環境の進歩とオープンデータの推進により、新しい技術を活かして市民と行政が手を携えながら地域の課題を解決しようという考えが世界に拡がっている。日本で最初にシビックテックと言われるこの活動を始めたCode for Kanazawaは、石川県域をベースに幾つかの課題を解決している。同講演では、このシビックテックという新しい概念の紹介と具体的な実績について紹介された。
福島氏の後を受け、長野県白馬村役場 税務課 徴収係 主査 山岸 大祐氏が登壇。白馬村では、基幹産業が観光業という社会経済環境の中で、ヤフーの「Yahoo!公金支払い」を導入し、納税決済手段を拡充した。白馬村では、同決済の導入前、住民の選択は口座振替か現金納付のみだった。また、損害納税者や外国人などへの対応などへの課題もあったという。クレジット収納により、カード会社のポイント付与などによる収納機会の拡大につながった。また、用紙変更やシステム設定が不要など、導入経費やランニングコストが他の方法と比較して安価であるため、簡易かつ少額な費用で収納環境を拡大できるメリットもあるそうだ。今後の運用面での課題としては、サイトの英語版構築による外国人への対応、収納結果の消し込み事務の負担、継続払いへの対応などを挙げた。
最後は、ヤフー 公共サービス事業本部 地方創生支援室長 石田幸央氏が「ヤフーを利用した地方創生のカタチ」について紹介した。石田氏は、ショッピングの「ふるさと名品オブザイヤー」、ヤフオク!の官公庁オークションとリユース、IT人材育成事業など、地方創生事例を数多く紹介。同講演の最後には、参加者同士のワークショップを実施。自治体関係者同士の意見交換も行われた。
なお、地方創生フォーラムは、札幌、福岡、金沢がすでに終了。今後は、8月26日に大阪、9月9日に東京開催が予定されている。