2016年9月20日8:00
凸版印刷と協力しクレジットカードにおける主要シェアを目指す
仏のオベルチュール・テクノロジーズ(日本法人:オベルチュール・テクノロジーズ・ジャパン、OT 社)は、凸版印刷と提携し、ワンタイム・パスワードカードとして世界で屈指の出荷実績を誇る「OT MOTION CODE(オーティー・モーション・コード)」および「COSMO OTP(コスモ・オーティーピー)カード」の国内展開を2016年9月から開始した。OTと凸版印刷に両製品の特徴、海外での実績、国内での展開について話を聞いた(取材は金融国際情報技術展会場において)。
「OT MOTION CODE」はフランス、米国、中国で採用が進む
3桁の静的なセキュリティコードを動的に表示
OTはデジタルセキュリティソリューションを提供する世界的な企業だ。同社では、2014年にディスプレイカードをグローバルに提供するNagraID Security(ナグラIDセキュリティー)を買収。「OT MOTION CODE」は、2014年の「CARTES SECURE CONNEXIONS 2014」(現Trustec)で発表された。現在、欧州、米国、南米、中東、中国でサービスがスタートもしくは準備が進んでいる。
「OT MOTION CODE」では、カードの裏面に表示された3桁の静的なセキュリティコードを、ミニスクリーンに表示された動的な番号に置き換えることが可能だ。一定時間が経過するとセキュリティカードは別の数値に置き換わるため、カードを提示しないCNP(Card Not Present)の不正を防止することができる。
オベルチュール・テクノロジーズ・ジャパン 代表取締役 根津伸欣氏は、「同技術は他の企業もサービスを展開していますが、世界で先駆けて展開し一年以上前からパイロット運用を行っているため多くのノウハウを蓄積できており、マーケットで実際に商用サービスとして利用されているのは弊社のみです。バッテリーサイズは小型で、エンボスを施すことも可能です。また、弊社では本技術に必要なサーバーソリューションも持ちエンドトゥエンドのフルサービスでの提供が可能です」と強みを口にする。実際にアナウンスをしている限りでもフランスのBNP PARIBAS(BNPパリバ)、ソシエテ ジェネラル(Société Générale)、BPCEグループ(バンク・ポピュレールとケス・デパーニュ)、メキシコのPROSA、ポーランドのGetin Bank、中東の金融ソリューション事業者、Network Internationalなどで国際ペイメントブランドのVisaやMasterCardブランドでのサービスがローンチされている。
「たとえば、欧州のCNP不正はカード詐欺の60%以上にもなります。日本でもCNPでの不正が起こっているため親和性の高い商品であると考えます。また商用サービスからのフィードバックで、オンラインでのカード利用は複数カードを保持していてもセキュリティの観点からOT MOTION CODEのみを使用する行動ケースが見受けられているようです」(根津氏)
また、「OT MOTION CODE」では、顧客に配布するカードに加え、動的に変化するセキュリティコードと同期するアルゴリズムを持つ専用サーバを合わせて提供する。消費者にとっては、オンライン決済に利用しているブラウザに新たにプラグインをインストールする必要もないため、従来通りの操作でより安全な取引を提供できるとしている。
6桁のOTPをカードに表示する「COSMO OTP」も展開
OTは凸版印刷との協業で国内展開を加速
さらに、カード券面に6桁のワンタイムパスワードを表示できる「COSMO OTP」は主に銀行のキャッシュカード向けに営業を行う。これまで、トークン形式で配布されていたワンタイムパスワード(OTP)をカードに搭載された電子ペーパー上に表示することで、「一体型のキャッシュカードとなることで、金融機関のカード発行とトークン配布のコストを削減できます」と、凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 セキュアビジネスセンター セキュアビジネス推進本部 課長 嶋田浩氏は説明する。また、カードに搭載されたボタンを押すだけで、OTPの生成が可能だ。
今回、OTは日本での提携先に凸版印刷を選択したが、「凸版印刷様は日本のトッププレイヤーの1つであり、日本のさまざまな金融機関様に対してアプローチが可能です」と根津氏は期待を寄せる。嶋田氏は、「OT様の技術は世界でも最先端であると考え、弊社でも採用させていただきました」と話す。
凸版印刷は2020年度に約20億円の売上を目指す
OTではNFCモバイル決済などの展開も強化
凸版印刷では、「OT MOTION CODE」および「COSMO OTP カード」を全国のクレジットカード会社や銀行に向けて拡販。導入サポートや発行機、保守サービスなどの機能を拡充させ、2020年度に約20億円の売上を目指す。当面は、1顧客で10~20万枚の発行を想定。
OTでは、将来的な目標として、たとえば「OT MOTION CODE」では、出荷されるクレジットカードのクリティカルマスに同技術が搭載されれば、コストの削減が図れるとしている。
なお、OTでは、NFC決済についても市場の黎明期からグローバルで取り組んできた。TSM(Trusted Service Manager)によるモバイルペイメントに加え、Samsung PayやAndroid PayなどのOEMメーカーによる決済サービススキームにおいても金融機関をサポートしている。今後は国内でのNFCサービスの展開も検討する方針だ。